さすが王家御用達
「ジャックリーズ!何故君がこんな事をするんだ!」
理由は分かりきっているが時間稼ぎだ。
「ブレント王子様すいません!でも王妃様に約束して頂いたんです。
あなたを亡き者にすれば、王太子様の従者に取り立てて下さるって!
大出世なんです!」
僕に近づきつつ、熱に浮かされたように語るジャックリーズ。
それ、僕が殺されるのが前提条件なんだよね?
謝りつつも殺す気満々だな!
悪かったな、どうせ僕の従者は閑職さ!なんていじけてる暇なんてない。
どうにかしてジャックリーズの気を逸らさないと。
「頭を冷やせジャックリーズ!私を殺してバレないはずないだろう?
それに一介の従者でしかない君に、王妃が何か約束するはずがない」
「いいえ!約束して頂きました!そりゃぁ会ったのは王妃様の代理人だっだけど、これ!王家の紋章と王妃様のサインが入った、俺を優遇して下さるという約束の書状を頂きました!これです!紋章とサインが見えるでしょう?」
と言いながら、懐から取り出した紙を僕に広げて見せたが、離れてるし文字は小さいしで、何か書かれてるな、くらいしか分からなかった。
しかし、本人がそう言うんだったら、王家の紋章が入った書状なんだろう。それで十分だ。
「ジャックリーズ、悲しい知らせがある」
僕は口調をガラッと変え、静かに話し出す。
「えっ?」
思っていたのと違う僕のリアクションだったのか、ジャックリーズの口はポカンと開いた。
「王妃は王家の紋章付き書状を書かない。厳密に言えば、書く事を禁止されている。王家の紋章付き書状というものは、この国では国王にしか許されていないんだ」
「なっ!でもここにちゃんと・・・」
ジャックリーズは、王妃の書状と言い張る紙をバシバシ叩く。
「だからそれは何の効力もない偽物だ。それどころか、もし王妃の書状だと公に言えば、王家の紋章偽造という大罪で良くて君だけ極刑、悪くすれば一族郎党道連れだ。王妃だって道連れにはなりたくないだろうから、知らぬ存ぜぬだろうな」
愕然とするジャックリーズ。ここでダメ押しだ。
「もう分かっただろう?王妃にとって君は、私を殺した犯人としての役割しかない。その証拠に、誰も逃げられないよう、扉は外から閉められているはずだ」
言いつつ彼の後方にある、外へと繋がる扉を指差す。
「そんな!ウソだ!」と叫び、ジャックリーズは僕の思惑通り扉に走っていった。
ガチャガチャとドアノブを回すが開かない。やっぱりな。
ジャックリーズは「開けてくれー‼」と言いながら必死に扉を叩いている。
「ブレント!今のうちに逃げるわよ!」人形の焦った声。
そうだな、ジャックリーズが失敗した事はすぐ知られるだろうから、次の手を打たれる前に逃げなければ。
ここは4階の角部屋、やはり逃げ道は扉しかない。ここは風魔法か、
「どけ!ジャックリーズ!風よ吹け!」
「へっ?」
ドーン!
振り返ったジャックリーズは、僕の詠唱を聞いて慌ててよけたが、余波でひっくり返った。 しかし扉に変化はない。
再度風魔法を叩き付けるが、やはりビクともしなかった。
「さすが王家御用達だ、いい仕事をしている」
「なーんて感心してる場合?」
すかさず人形に突っ込まれた。