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第一王子は出番がほしい!  作者: いとなつきみ
12/21

ムリ!

 自分では、無邪気全開の笑顔を作ったつもりだったんだが、人形によると、腹黒そうな、戦慄を憶える冷たい微笑だったそうだ。


 ・・それは怖いな。


 「大体なんで、味方にしようって相手に毒入りお茶を勧めるわけ?」


 人形は理解できないとばかりに呆れ声だ。


 僕は自己弁護をする。


 「初めにお茶を勧めるのは当然のマナーだ。サラッと受け流すかと思ったんだが、彼があまりにも必死に拒否するんで、命を狙われた僕としては、ちょっとくらい、からかってもいいかなーって、つい調子に乗って何度も勧めたが」


 「ブレント、からかうってそんな軽いもんじゃなかったわよ!皮肉の効いた言葉と冷笑、ベストマッチし過ぎて恐怖でトラウマになるレベルだったわよ!」


 そんなに酷かったのか?僕の認識との差が有り過ぎる・・。考え込んでいる内に、


 「うーん、皮肉言葉は、とりあえず極力しゃべらなければいいか。それより問題は冷笑の方よね・・・練習しかないかーブレント!鏡の前で笑顔の練習ね!」


 人形にいきなり命令されてしまった。

 

 「か、鏡の前でか⁉」


 さっきのジャックリーズみたいに、サーっと血の気が引いていくのが自分で分かった。


 「自分で自覚しないと上手にならないでしょ?鏡は正直にトラウマレベルの冷笑を、本人に見せつけてくれるわよ」


 しみじみと人形は言っているが、僕はそれどころではない。


 鏡の前でにっこり笑う自分を想像しようとすると、思考がプツン!とキレた。


 それじゃあナルシストだ! 恥ずかしすぎる!王妃に殺される前に、恥ずかしさで死んでしまうかも!


 そんな僕に、人形の無情な声が追い打ちをかける。


 「練習は毎日よ!」


 「・・・・・・」


 ムリだ。ムリ・ムリ・絶対ムリ。


 「毎日練習しなきゃ自然な笑顔にならないでしょ?」


 正論だ。でもムリだ。無言で拒否する。


 「ちょっとブレント!他に何か方法がある?」


 今のところ思い付かない。が、やっぱりムリ。人形は業を煮やしたのか、


 「命を守るためなのに・・・あーあブレント残念だわー、このままだとゴキラに転移かしらねぇ」


 「それは嫌だ‼」


 「はい練習決定!」


 あー僕のバカ!ゴキラ転移の恐怖に負けて、答えてしまった。無言で断固拒否するつもりだったのに・・


 「よーし!明日から練習よ!笑顔で味方を増やすぞ作戦始動!王妃なんかに負けないぞ!おー!」


 楽しそうだな!


 ・・もうどうにでもしてくれ。何だか急にどっと疲れが出て来た。


 「はー疲れた・・すまないがもう寝ようと思う」


 「そうよね、命を狙われたらショックよね、疲れるはずよ」


 人形は、うんうんわかるよーと言って同情的だが、疲れの大部分は人形のせいだと思う。しかしそんな事言えない。


 明日になれば、物事を客観的に冷静に見ることが出来るはずだ。きっと・・だといいな。


 そう言えば、と思い付いた。


 「明日から、街を観光する計画も一緒に立てないか?」


 王子の僕が街に出ようとすれば、問題が山ほど出て来るだろうけど、父上と粘り強く交渉すれば出来ない事はないはずだ。


 人形には助けてもらった恩がある。かわいい野望くらい、出来る事なら叶えてあげたい。

 (笑顔の練習を少しでも減らそうという小細工ではない。断じて)


 「えっ!いいの⁉ありがとう!うわー!楽しみ~」


 慣れてくると人形が笑っているように見えるから不思議だ。


 人形と一緒にアレコレ計画を立てるのも楽しそうだな。




 でも、そんな明日は来なかった。



 


 

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