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『まもの使い』、ゴッドハンドを志す~限界女医、異世界に召喚されたら何をする?~  作者: wag
第一部 「まもの使い」編

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「で、私は何を差し出せばいいの」


窮地を救われたはずの湿原の瘴気溜まりの主、姿見の付喪神ロットンは、まるで敗走兵のような顔つきでその女性を出迎えた。


戻ってきた黒髪の女性、『まもの使い』キラーヤは間髪入れず言う。


「まずは仲間になってくれる?話はそれからよ」


「ハヒ」


言われるがままに仲間になり、キラーヤはロットンの能力を何やら確認している。自分の中身を隅まで見られている気分になり、いたたまれない。


『私、こういうのはやる専門なのよ!

 やられる側になるなんて思わなかった』


「うん、いけるかも」


ややあって頷いたキラーヤはロットンに迫る。


「ロットンあなた、鏡の中を通った人の身体を覗けるのよね?」


「覗ける覗ける!

 過去のトラウマから秘めたコンプレックスまでなんでも!」


「メンタル系は追々でいいかな。

 身体の中身は?」


「見れるけど、気持ち悪いから普段はしない」


「たとえばだけど、

 人の身体を細かくスライスして、

 その断面を覗くように見ることってできる?」


「えっえっえっ」


「ちょっと難しいかな」


「わ、わかんない、どういうこと?」


「今私が鏡を通ることってできる?」


「うん、どうぞ」


そういうとキラーヤは、ロットンの鏡に向かって右腕を突き出した。

右腕は肘の先から鏡に吸い込まれる。


「今、丁度肘くらいの部分が鏡に触れてるでしょ。

 ここを断面で見たいの」


「できるけど・・・うぇー、グロい」


「ちょっと見せて」


キラーヤはロットンを視覚を共有する。すると、


「うわ、確かに生々しい。私は平気だけど。

 白黒フィルターでも付けてみる?」


『千里眼』で習得した色彩フィルターを試してみると、


「お!かなり近い!

 うーん、どちらかというとCTに近い感じかな」


「これならグロくなくて私も平気」


ロットンもほっとした顔をしている。


キラーヤの世界で使われる断層画像はおおよそCTとMRIの2種類である。そこから派生して色々な画像検査が最近は増えているが、一般的なものはこの2つ。


そして実は、同じ白黒画像であっても、CTとMRIでは見え方が違うのである。

さらにMRIと一口に言っても、撮像の仕方によって見え方のパターンが異なり、このパターンの組み合わせで「どんな成分のものか」が推定できたりする。


ロットンの透視+キラーヤの白黒フィルターだと、

正確に一致はしないものの、どちらかというとCTに近い感じに見えた。


「よし、クリア!

 ごめんロットン、一緒に来て貰うよ!

 あとここ、スライムいる?

 とびきり賢いスライム!」


「あ、あ、あ、わかった、いる、いる」


矢継ぎ早に繰り出される要求と質問に、ロットンは目を白黒させる。

そもそもロットンは普段そんなに周りと話す機会もない付喪神のため、単純に処理が追いついていない。


「よしまずスライム!ニフラートとニードルバードは~・・・ああっ!

 そもそも輸液ルートが取れても点滴する輸液がないじゃん!

 古のドクター達は輸液を手作りしたらしいけど・・・やり方わかんない!

 どうしよ、ルカリア口で飲めるかな。経口補水液なら作れそうだけど」


「なななに」


さらにぺらぺらとしゃべり出すキラーヤにロットンが目を回す中、ディアドラを口を出す。


「キラーヤ様、一度ルカリア殿を覗いてみては?

 食事している様子があるか部屋の中の形跡で分かるかと」


「確かに!ちょっと時間ちょうだい」


と言い、キラーヤはロインの方角に向かって千里眼を調整し出した。



ディアドラはくるりとロットンのほうに向き直り、


「さて」


と低い声で迫る。


「ヒィィ・・・!」


「出して貰いましょうか、キラーヤ様ご所望の品を」


「は、はいぃ・・・!」




・・・キラーヤがルカリアの部屋を覗き、顔色は悪いがしっかり呼吸はしていること、また枕元に水差しと濡れたコップがあるのを見つけ、


「大丈夫!まだ飲めそう! 

 輸液は課題だなぁ、どうしたもんか。

 そもそもこの世界の容量の単位ってどうなってんの?」


と半分独り言を言いながら戻ってきたとき、


「ん?」


そこにはカモノハシそっくりの魔物と掌にも満たない小さな小さな鳥、そして、


「もしかして・・・スライム?」


そこには、燕尾服を纏った執事のような格好を模した、人間と等身大の青い半透明ののっぺらぼうゼリーがぷるぷるお辞儀していた。


「そうです。

 こちらでご所望の品、おそろいでしょうか」


ディアドラはしれっと言うが、違和感が凄い。


「分かった。

 こっちのカモノハシがニフラートで、

 ちっこいのがニードルバードね。わ、ほんとに針だ。

 で、このでっかいぷるぷるが・・・?」


「スライムでございます、キラーヤ様」


「喋ったああ!!」


のっぺらぼうのぷるぷるは、何だか合成音声のように若干毛羽だった声で話し出した。これ、魔物だけじゃなくて人間にも普通に聞こえる声だ!


「ええ、喋りますとも。スライムですから」


「そういうもんなの?」


「いえ、こやつが特別です」


バッサリとディアドラが言い捨てる。


「そ、そうなの、まぁ詳細は追々でいいや。

 ねえ、あなた筒状になれる?

 私の親指くらいの太さで、中に空気が通る用の!」


「仰せのままに」


スライムはすぐさま細く筒状になってみせる。ただし人間の等身くらいの長さがあるが。


「もっと短くは・・・」


「仰せのままに!」


瞬時に30センチくらいの長さに縮んでくれた。


「もっと細くは?竹串一本通るくらいの」


「もちろん!」


ひゅんっと細さも自由自在のようであった。


「・・・よし。とりあえずやってみよう!

 ごめんみんな、手伝って欲しいの!」


「えっと、分かったけど、私たち何するの?」


ロットンがおずおずと問う。


「人間ひとり助けるのよ。

 魔物が人を助けるなんて、美談じゃない?」

 


女王からの通達に、魔物達に否やはなかった。

 


ーーーーーーーーーーーー



「ルカリアさん、大丈夫ですか」


大図書館下層のルカリアの個室を、『知の賢者』トライツが訪れた。


「・・・ああ、ありがとう」


「水を替えますね」


トライツは甲斐甲斐しく、水や寝具の取り替え、温かい湯で身体を拭く用意までしてきてくれた。


部屋を動き回るトライツを寝台から見上げ、ルカリアは言う。


「ありがとう、トライツ。

 ・・・もう、地上に上がってくれ」


「・・・いえ、それは」


「このままじゃ、

 俺の骸を運ぶ羽目になるぞ」


「ルカリアさん」


「いいから。俺がもう長くないのは分かるだろう?」


「そんなことは!」


「さっき、そこの鏡のところから、

 キラーヤの声が聞こえた気がしたんだ。

 こりゃきっと、魔界からのお迎えだよ」


「キーラ様の?まさかそんな」


「ああ、幻聴ってやつだ。

 案外、俺は楽しいところに行くのかもしれないな」


「まさか・・・いや、でも、可能性は捨てきれない。

 どうする?まだ早いかもしれないけど・・・」


「おい、どうした?」


「・・・仕方ありません。計画を進めます。

 すみません、ルカリアさん」



ルカリアの目を見据えたトライツの掌には、魔力が錬られていた。



 



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