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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


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092 婚約者たちの魔導車と逃げるソウガ

 ナツメとハンナ――二人を先に送り出すと、俺は残りの食器を洗って家を出た。


 扉を開けると、目の前の通りには王太子のヤクモの魔導車ほどではないが、豪奢な車が二台並んでいた。


 通りを行き交う人々が、立ち止まり凝視している。その様子を見て、俺はこめかみを押さえながら首を横に振る。


 ここは割と裕福な人たちが住まう場所だが、貴族は住んでいない。あんな魔導車が二台も並んでいたら、目立ち過ぎる。


 ため息を堪え、足早にこの場を去ろうとすると声が届く。


「ねえ、私の車で送っていくよ。さあ、乗りなよ」


 振り向くとナツメが笑顔で手招きをしていた。その後ろには黒く輝く魔導車があった。随所に銀で装飾されており、重厚で威厳に満ちていた。


 こんな車で競技場に向かったら、目立って仕方ない。ため息をつき、丁重に断ろうとしたとき、ハンナが袖を掴んだ。


「ナツメさん。ソウガは私が責任を持って送りますので、心配は無用です」


 ハンナに視線を向けると、その先には純白の魔導車が圧倒的な存在感を放っていた。車輪や窓枠の細部に至るまで黄金の細工が施され、財力と権力を象徴していた。


 白と黒――相反する二台の魔導車を見比べる。ひとつだけ共通することは、どちらにも乗りたくないということだ。


 こんな車に乗って競技場に行く勇気はない。ただでさえ悪目立ちしているのに、これ以上無用な敵を作るような真似はしたくない。


 それにどっちに乗っても、もう片方が傷つく。そんなことはしたくなかった。正直に言えば、傷つくのは俺のような気がして怖くて選べない。


 袖を掴んだまま上目遣いで見つめるハンナと、いまだに笑顔を崩さず、手招きを続けるナツメ――やはり、二人とも怖い。


 もう一度、交互に眺め、俺は覚悟を決めて言い放った。


「そぎゃんこと言われても、どっちも選べんたい!」


 二人は目を見開き、口をぽかんと開けて固まった。魔力を込めていないが、時間停止の魔法が発動した――わけではなく、理解不能な言葉に困惑しているだけだ。


 だが、俺はその一瞬の隙を突き、ハンナの手を優しく解き、ナツメを一瞥すると、猛然と走り去った。


 二台の豪奢な魔導車と二人の美女を残して全力で逃げる俺を、道行く人たちがきょとんとした表情で見送っていた。





 競技場のゲートで待っていると、ソウガがナツメとハンナに挟まれ、歩いてきた。その様子は仲睦まじいというより、どこか殺伐としていた。


 ハンナは指を絡めてぎゅっとソウガの手を握り、ナツメはしっかりと腕を組んで肩に頭を預けていた。


 梅雨も明けて日差しが強い中、暑苦しく歩く三人は周囲から注目を集めていた。多くの女性は好奇の視線を向け、男性たちは怨嗟のこもった眼差しで睨んでいた。


 ――バックアタック・マッチで一躍有名人となったソウガ。


 あまり目立ちたくないと言っていたはずだが、美少女二人を引き連れる姿は大勢の人目を引いていた。


 俺は肩をすくめ、ソウガたちのもとへ歩き、助け舟を出す。


「遅かったな、ソウガ。急いで控室に行くぞ。本来なら競技場横の格納庫で整備しないといかんが、試合前に少し話しておきたくて、無理を言って控室の使用許可をもらった。いちゃつくのは、それまでだ」


 俺が注意すると、ソウガは眉を下げて不本意そうに頷き、ハンナとナツメを交互に見て、目配せを送る。


 だが、彼女たちはどちらが先にソウガから離れるのか――牽制して睨み合っている。


 俺はため息をつき、言い放った。


「いい加減にしろ、お前たち! これから試合なんだ。あの新機能(・・・)についても話さないといけないんだぞ。すぐに離れて、控室に行くぞ!」


 そこでようやく二人が離れ、解放されたソウガは思い切り背筋を伸ばして、俺に向かって頭を下げた。


「すいません、待たせてしまって。家を出るときに手間取ってしまい、遅れてしまいました。すべて俺のせいです」


 さきほどは注意され、不満げな表情を浮かべたソウガだったが、俺に一喝されて俯くハンナとナツメを気遣い、庇った。


 少しは婚約者としての自覚が出てきたようだ。俺に謝罪するソウガを二人は頬を染めて見つめていた。


 頭を下げたままのソウガの頭を軽く叩く。


「わかったなら、もういい。さっさと控室行くぞ。今のでさらに目立ったようだ」


 その言葉にソウガはすぐさま顔を上げて周囲を見渡す。そこには足を止め、こちらに視線を向ける多くの人たちがいた。


 その瞬間、ソウガは顔をこわばらせると、俺たちを置き去りにし、ひとり急いで控室に向かった。



――――――――――――



 俺はハンナとナツメを連れて競技場に入ると、関係者専用の入口から控室に向かった。


「あっ、リュウゾウ先生。待ってました」


 ソウガが控室の並ぶ廊下でぽつんと立っていた。急いで向かったのはいいが、どの部屋に入ればいいのか、俺は教えていなかった。


 苦笑いを浮かべて先頭に立ち、歩き出すと、一番奥にある昨日と同じ部屋へと入った。


「全員揃ったな。試合開始まで、時間がない。急いで話すぞ」


 そう告げると、ハンナは部屋の鍵をかけ、ナツメが防音の魔導具を起動した。そして、ソウガは空間魔法を発動し、武蔵零式を呼び出した。


 全員が原初の機人・武蔵零式を見つめて頷き合い、<五大>機能『火』――魔法剣『あつかけん』の扱いについて話し合いを始めた。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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