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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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独占販売と呼び出し

魔草樹と鉱物の収穫には、英雄達の出番である。


レオンとデュランを連れ出して魔草樹を根こそぎ掘り出し、更に鉱物も採掘する。


英雄とケヴィンの超人的な働きでアトランティスの全国地図からデスマウンテンが消え去る事となったが、その後未だ残る微量な魔力の影響で再び魔草樹が成長した事で、この土地がいつの日かデスフォレストと呼ばれる日が来るのはまだまだ先の話である。


掘り出した鉱物の中から好きな物を持っていくと言う事をレオンとデュランへの報酬へ充てたのだが、ケヴィンは二度と忘れないだろう……あの時の純度100%のガレオ灰鉄の原石を発見したデュランの不気味な笑顔を……。


何故彼はあの様な重さ重視の金属を好んで使うのか、未だにケヴィンも謎を感じていた。


後は販売経路の確保だが、いつも世話になっている材木屋や装飾屋の商人ルートで紹介を受け、オールガイア各国へ小型転移魔法陣の販売経路を確立した。


この件で材木屋と装飾屋の両店主には自分が蒼氷の朱雀であると言う事がバレてしまったのだが、別段彼等がその事に驚きを見せる事はなかった。


曰く、槍聖の自宅を自分の自宅にする様な人物が只者である筈が無いとの事。


そう言えばそうかとケヴィンもとりあえずは納得した。


主に材木屋は原材料の加工を、装飾屋は鉱物の加工と魔法陣を刻む工程をどちらも独占する事となり美味しいとこどりをする事となる。


その日以降から偶に成金ぶった態度を取る材木屋にイラつき、禿げた頭をケヴィンがペチペチと叩いたりもしていた。


これらの工程によって蒼氷印の小型転移魔法陣は、メイドインアトランティスと刻まれ、世界へ配布される事となったのだった。


「しかしこれは凄まじい発見じゃのぉ……よもや異世界語である日本語に使われておる漢字がマナの力を宿しているとは目から鱗じゃったわい。この技術があれば、何れ上級魔法を魔法陣に刻む事で戦闘に使用出来る日も近いかもしれんのぉ」


「どうだかなぁ、結局俺からしたらどれもこれも魔法陣で使う魔法は効率が悪いと思ってしまうんだが……まぁ一般人にとってはそう言う事を期待する奴も出てくるか」


「他の者が技術を奪わん様に郁恵にも隠蔽を加えておるから、おいそれとこの技術が出回るとは思わんが……」


「いつか気づく奴は出てくるかもしれねぇが、まぁ暫くは問題ねぇだろうよ」


小型化に成功した転移魔法陣だが、実は加工段階でひと手間も二手間も技術を加えている。


机の上に二枚並んでいる板の内、片方に描かれている魔法陣は『ダミー』なのである。


もっともそれらしく書いた適当な文字なのだ。


もはや文字ですらない落書きだ。


魔法陣としても効果は一ミリも存在していない。


これをもう一枚の本命の魔法陣を刻んだ板へと重ねるのだ。


つまり表からは見えない部分に漢字が使われている魔法陣が存在する事となる。


材木屋が新しく取り入れた加工技術で重ねても切り口が分からなくなっている物だ。


一枚の板に目的の魔法陣を刻み、それをサンドして隠す様にもう一枚の板をはめ込んで、でたらめな魔法陣を書き込んだ板を表向きの魔法陣とする。


この技術を知らない者が見れば、決してこんなからくりがあるとは思えないだろう。


こう言った技術も、全てメーゼが提供してくれた物だった。


信用出来る者達のみ関わったこのプロジェクトだからこそ、この技術が世間に漏れる事は無い。


この技術に気付く者は、ケヴィンの予想ではまだしばらく現れないと予想をしている。


表向きの魔法陣を幾ら解析しようと、この小型魔法陣の技術は解析出来る筈がない。


そこまでしてこの魔法陣の秘密を隠す事にアルベルトは疑問に思って居るらしいが、ケヴィンは一つの懸念があるのだ。


「それにこの魔法陣の技術が出回り過ぎる事を、俺は正直メリットだけだとは考えちゃいねぇ。この技術は諸刃の剣とも言える」


「諸刃の剣……とな?」


今回のこの小型魔法陣、当たり前にケヴィンにとっては必要の無い物。


そもそも自由に転移魔法を扱える存在には、効率の悪い転移魔法陣等基本的に用いらない。


これからこういった類の小型魔法陣が主流となれば、誰もが上級魔法を簡単に放てる時代が来るかもしれない。


しかし、そうなれば人々は己の鍛錬をやめてしまうだろう。


魔法陣で放てるのだから、わざわざ上級魔法を覚える必要が無い。


魔力を込めるだけで使えるのだから、前に出て戦う必要等ない。


こう言った繰り返しにより、やがて魔法陣無しではろくに戦えない人々が出来上がってしまう可能性があるだろう。


確かに上級魔法は今の時代、殆どのエルフが扱うのは難しい。


だが所詮魔法陣で構築される魔法は、あくまで一般的なそれらの魔法だ。


威力の向上や範囲の拡大、発動の速さや細かい魔力操作等、一切する事が出来ないごく普通の魔法なのだ。


下級、中級モンスターならともかく、上級、ましてや先日のキングドラゴンクラスの敵には殆ど通用する事のない威力の魔法しか放てないのだ。


しかしその事実を知らない人々は、魔法陣に頼り切りになり成長するのをやめる事だろう。


ただでさえ英雄に頼り切りと成り、強さを求めすぎない人々が多くなっている現代の状況をもっと深刻なものとすることに成りかねなかった。


それがケヴィンの懸念材料だ。


「魔法陣が無ければ戦えぬ者達か……なんとも言えんのぉ……現代の一般的なエルフ達の魔法レベルよりも、平均的な実力が上がるのは間違いないのじゃからのぉ……」


「そうなったらそうなったで、元から自然魔法しか使えないエルフより、例え鍛錬してなくても身体能力強化魔法が使える人間が出しゃばり、共存どころじゃ無くなるぞ? 何せこの技術は人間側にも自然魔法が扱える様にするものだからな」


「むぅ……難しい話じゃ」


だからしばらくはこの技術は封印しておいた方が良いとケヴィンは判断している。


そもそもこの小型魔法陣が一般層でも比較的簡単に手に入れられる要因は、ケヴィンが原材料を販売価格に含めなかった事だ。


これが原材料含む値段と成れば、一気に10倍に金額が跳ね上がった事だろう。


価格的にも難しい物があるのも事実だ。


「しかしこの技術によって魔法陣に革命が起こったのは事実じゃろう、後の事は追々と言った所じゃの。ところでケヴィンよ、ギルド支部DOLLSからお主に呼び出しが掛かって居るぞ?」


「あ? 初耳だぞ?」


「お主が連絡用魔道具を持っておらんから、ワシの所にそう言った連絡がくるんじゃ。何やら待ち人がいるようじゃから、急ぎ来れるか、日を改めるかが知りたい様じゃ。正確にはお主と言うよりも『蒼氷』に用が有る様じゃがの」


待ち人と聞いてケヴィンは色んな人物を頭に思い描くが、わざわざギルド支部を通して呼び出す様な人物に心当たりはなかった。


「どっち道今日行くつもりだったからな、今すぐ行くと伝えてくれ」


言うと立ち上がり、ケヴィンは行動する。


このタイミングでの蒼氷の呼び出しとなると、もしや商売に乗っかろうとする悪徳商人では無いだろうかと脳裏に過る。


技術が真似できないと成れば、それを作成した本人に聞くのが手っ取り早いのだから。


しかし相手がそんな人物だったら張り倒すまでだ等と物騒な考えをしながら、ケヴィンは転移魔法を発動させるのであった。



――――……。

張り倒したれ

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