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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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依頼の難易度は有って無い様なもの

はじめてのおつかい

メイファは続ける。


「登録したてのギルドメンバーさんに与えられるのはやはり最低ランクであるEです。なのでKさんは今Eランクの依頼しか受ける事が出来ません。チームを組めばまた変わってきますが、これはルールなのでいくら無理強いしようとしても変える事は出来ません」


たまに、自分の実力を過信した初心者が、ギルドランクの枠を超えて依頼を受けようとする事がある様だ。


かつてはそれ程言うのならと、希望の依頼を受けさせていた事もあったらしいが、その度事故が起きたり、死者が出たりと問題が後を絶たなかったのだ。


その後ギルドルールが改変され、ランクを超えての依頼は決して受ける事が出来なくなっていた。


「てっとり早く……そうだな、上級モンスターを討伐の対象と出来るBランクへ上がるにはどうしたら良い」


「なかなか難しいですね、やはり受ける依頼の難易度を最高の物を選んでいくしか無いです。それに普通ならBランクへ辿り着くのに5年は掛かります」


15の年齢からギルド登録出来るとして、一般人がBランクに辿り着く為には5年の歳月が掛かる。


つまり、エドワードの17でBランクと言うのは、やはり驚異的な記録と言う事だ。


あくまで『一般論』の範囲ではあるが。


「取りあえず早急にDランクへ上がる事は出来るか?」


ケヴィンが欲しているDランクは、下級ではあるが魔物の討伐許可が下りるランクだ。


そうなるとギルドへ魔物から回収した素材を卸す事が出来る様になる。


今まで専門的な店でしか売る事が出来なかった為、『大袋』の中に眠っている素材達を放出したいが為のとりあえずの目的がDランクであった。


ケヴィンの言葉にそれなら、とメイファは依頼書の束へ手を伸ばす。


ペラペラと捲りながら、二つの依頼書をケヴィンの前へ差し出してくる。


「この二つが、今Eランクで最難関とされている依頼です」


見ると片方は採取依頼、もう片方は配達依頼であった。


「何故この二つが最難関なんだ?」


「距離が問題なんです」


依頼を受ける際に問題となるのが、依頼を受ける場所と依頼が発生している現地の距離である。


一昔前は、フォレスガイア大陸で発生していた依頼を、アースガイア大陸のギルドメンバーが受ける事は非常に難しかった。


しかし現在では『転移魔法陣』を利用する事で、全てのギルド支部を行き来する事が可能となっている。


転移魔法自体は上級魔法に分類される為に、扱えるエルフはとても少ない。


だが『魔法陣』は、刻まれた魔法陣に魔力を流し込む事によって誰でも自然魔法を扱う事が出来ると言う物。


魔法陣を用いれば、人間でも自然魔法を扱えると言う事だ。


しかし魔法陣構築と言うのは簡単ではなく、例えるならただの紙に書き込んだとしたのなら、それを折りたたむ事は出来なくなる。


ただ数ミリの歪みによって魔法陣は意味の無い物と成る為、例えば上級魔法を魔法陣として描けてもそれを戦闘に活用する事は非常に難しい。


更に元と成る魔法が強力であればある程、求められる魔法陣の大きさ、複雑さは増す。


光の上級魔法、ヘブンズソードを魔法陣として描いた場合、一般人が扱えるギリギリのレベルまでに抑えたとしたら、直径2メートル程の円が必要になると言われている。


そんな物、どうやって持ち運ぶと言うのだろうか。


例え大袋等を用いて持ち運んだとしても、それほどのサイズを戦闘中に使用する事は難しいだろう。


それだけ苦労して使用したとしても、一度使えば魔力は空なんて状況が起こり得る。


大きさ、複雑さを省いて、持ち運べるサイズの魔法陣を描いたとしても、今度は消費魔力が跳ね上がる。


ただでさえ消費魔力の大きさの為に放つ事が出来ない上級魔法を、魔法陣化したからと言って本来使用される魔力以上の消費量を使われてしまえば元も子も無いだろう。


しかしその点、転移魔法陣は対象が『固定』である為に、直径1メートル程度の円でごく少量の魔力消費で発動させる事が出来た。


転移魔法陣を対象先の転移魔法陣へ繋げる事でその効果の簡略化に成功し、今ではギルドメンバーなら誰もが転移魔法陣で世界中を旅する事が出来た。


勿論一般人も有料ではあるが利用する事が可能だ。


各国に数多く存在するギルド支部は、全てこの転移魔法陣で繋がっている為、結果として依頼の効率は跳ね上がり、達成速度も大幅に上昇した。


こう言った兼ね合いでオールガイア中を行き来する事が出来る様になったのだが、それでも道が整備されていない、つまり転移魔法陣が設置されていない僻地に生息する薬草や、そう言う場所を好んで生活する人物に関する依頼も多々、ギルドには存在する。


例えるならケヴィンの住むデスマウンテンにも、近辺に転移魔法陣は存在しない。


その為、そう言った界隈での依頼は内容自体は簡単であってもどうしても時間が掛かる事が懸念されて残る為、仕方なく依頼難度や達成の功績を繰り上げ、積極的にギルドメンバーへ受けさせようと言う対策を取った。


しかしそれでも予想される任務遂行期間が足を引っ張り、売れ残る。


ケヴィンが渡された依頼はどちらも最低三日は掛かる内容である。


二つを終わらせるだけで一週間は掛かるだろう。


ただ、このたった二つを熟す事で確実にDランクへ上げる事は出来るらしく、普通の依頼を熟してランクを上げようとしたらその倍掛かる事もあり、比較的こう言った遠出依頼を選んでランクを上げていく冒険者も少しはいる様だ。


「なんだ、『そんな事』か」


「え? そんな事って?」


「よし、この依頼二つクリアすればDランク昇格試験に望めるんだな?」


「はい……ですがこう言った依頼は大抵の方が週末に受ける物、この様な平日には……」


「良いから今すぐこいつを受ける手続きを取ってくれ」


「そこまで仰るなら」


ケヴィンの私生活を心配しての発言だったのだろうが、彼はそれを押し切ってメイファに依頼の受諾を申請する。


メイファは一度ギルドの魔法陣から恐らくギルド本部へ転移すると、数分後小さな木箱と大きな布袋を持って戻ってくる。


「こちらが配達依頼の魔石が入った木箱です。そしてこちらの袋が、採取依頼であるマジックハーブを入れる為の布袋です。マジックハーブはこの袋一杯に成るまでが依頼された量ですね」


ケヴィンはその二つを受け取ると、大袋へとゆっくり入れ込む。


そしてすぐに席を立ち、依頼場所を地図で確認すると移動を開始しようとする。


「あの、まだギルドの詳細な説明が済んでないのですが……」


「やってれば覚えてくるだろ、それに都度都度質問させてもらうつもりだからな。一度に纏められても無駄に時間食うだけだ。俺に必要なのは魔物討伐資格と、討伐によって発生する素材の売り込みが出来る資格だけだ。後はどうせ非人道的な事さえしなければ厳しい縛りなんてねぇんだろ?」


「た……確かにそうですが」


堅苦しい説明等受ける気の無かったケヴィンは強引の話を纏めあげ、任務へと飛び立つ。


「30分だ。Dランク昇格試験の依頼書を用意しておいてくれ」


「え? 何を言って――」


メイファの言葉を全て聞くまでも無く、ケヴィンは転移魔法を発動する。


そう、どれだけ『遠く』ても、ケヴィンにとって距離等全く意味が無い。


転移魔法が出来ると出来ないでは、この依頼の難易度は全く違うだろう。


しかし出来る者が極端に少ない為に、こう言った難易度が設定されるのは可笑しくもなんとも無い。


ケヴィンにとってはこの様な依頼は『儲け物』と言う認識に近い内容であった。


転移魔法の発動時間すら発生させなかったケヴィン。


後日談としてケヴィンが消えた後、10分程メイファが静止していたと言う話を耳にするのであった。



――――……。

某RPGの転移魔法みたいに頭はぶつけなかったです。

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