常況
時は、後になってからAIバブルと呼ばれるようになった時代
日本の昭和バブル頃みたいな状況な、とある国。
高校を卒業してから、なんとなしに先輩に右に倣えして
就職したものの、八つ当たりのように怒鳴り散らされるだけな日々
入社して2年目に自分の後輩は誰も入ってこずに
まだ、しばらく、この零細ブラック企業の一番下っ端
同業者団体内で上位にいる会社の無理難題や不都合を
押し付けられている底辺企業の、その中でも底辺労働者として
死ぬまで働かせられる自分の未来を映すような先輩が
結婚したから少しでいいから給料を上げてくれと言って
「おまえみたいな、どこの会社でも採用しないような馬鹿を
雇って使ってやっているのに、もっと金を寄越せだぁ?
じゃあ、いらねぇよ。どこか使ってくれる会社があるなら
そこへ行っていいぞ。クビだ」
たった一言で、あっさりと会社から放り出された。
このまま、いくと、あーいう年齢になってから
自分も叩きだされるだろう未来が見えて会社を辞めた。
親は終身雇用、年功序列という右肩上がり好景気な
戦後の高度成長期に大企業の正社員になって
定年まで同じ会社で働いたサラリーマン人生を送った人なので
戦前の漁師、百姓、個人商店な
零細個人事業主の寄せ集めな
地域密着型の同業者団体に所属する特定作業職人のように
根無し草な流浪の人生を送る事にならないように
もう少し我慢して、仕事が出来るようになるまで頑張れ
そう説得されたが
同じ我慢するなら、自分のやりたい事をやりたい
こんな特定の職人・親方仕事しかない地方都市じゃなくて
首都へと行って働きたい
と言い返して、売り言葉に買い言葉
じゃあ、親離れして自分で一人暮らししろ
そう言われ、親元を離れ一人暮らしを始めた。
・・・
首都へと出てきて田舎で会社と自宅を往復するだけな生活で
少しだけできた貯金で安アパートを借りて
バイトをしながら、ブラブラとしている中で
同じバイト先で知り合いになったのは小劇場の舞台役者
すごーく大きな会場、満員の客席、鳴りやまない万来の拍手
何故か、そんなイメージに執りつかれたのは
田舎の何もない地方都市の高校へ通っていた頃
いつか、そんな客を呼べる千両役者に俺はなるんだ
暑っ苦しく語るバイト先の同僚、鴨宮
自分とかは文化祭の演劇部とか軽音とかの
裏方をやっていただけなので、そんな熱量は無かったのだが
小劇場の劇団というのは人手が無いらしく
少しでもいいから手伝って欲しいと言われ
知り合いとかも、いなかったので、なし崩し的に
いつのまにか小劇場の劇団で、一円にも、ならない
ボランティア・スタッフをする事になってしまった。
・・・
劇団にいる人間は、ほぼ全員がバイトで生活費を稼いで
バイトの合間に時間を作って稽古をしてセリフを覚えて
舞台の宣伝と公演チケットを手売りして月例公演を続けていた。
小劇場が立ち並び、そこで公演をする小劇場が
集まってきている首都圏にある小劇場街
たまたま、田舎から引っ越してきた街が
そんな売れない役者や、売れない脚本家、売れない舞台監督
職業の前に売れないがついてしまう人々が
夢を食べて生きるバクのような生活をする街だったからとはいえ
月例公演が終わっていく打ち上げの飲み屋で知り合う人々も
そういった人々ばかり。
そんな中、モテるというか女が寄っていくのは
親が金持ちなボンボン
自分が千両役者になるのも個性派脇役として生き残るのも
無理だから若くて女なのを楽しめる内に
一族が会社を経営していて
いずれは、その会社の経営とかをするようになるだろうけど
「若い内は遊んで色んな事をやって失敗するのも勉強だ」
そんな事を一族の長老に言われて役者をやっているボンボン
いずれは経営者の奥様になって
会社の跡継ぎな子供を育てる生活
という人生設計コースにのろう
そんな発想で生きている御嬢様がボンボンに寄っていた。
その逆もしかり、大地主の一人娘とかで婿養子探し
自分の父親の弟子というか、自分の父親の回りにいる
権力と金を持っているジジイの相手が出来そうな
男探しをしている御嬢様。
後は、自分みたいに普通すぎるくらい普通のサラリーマン家庭で
地元が田舎で、市立小中学校、県立高校までしか無いから
なんとなく大学とか専門学校へ進学して首都へ出てきた後
いつのまにか舞台演劇の世界に入り込んでしまった人々。
2月の終わりに田舎の会社をやめてから
3月に安アパートへと転がり込んで、バイトを見つけ
4月に小劇場劇団の世界に触れて
いつのまにか、世間ではゴールデンウイーク
早いものだ。




