第536話 願いの女神達
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これは、女神のデウスエクス達の物語
それは…人々の願いから生まれた神格だった。
ホーリートライアングルの時空。
それは復讐者達が集まって出来た時空だった。
排斥され、滅ぼされそうになった時空の民達が合衆して生まれた時空の群体。
その群体の時空を創造したのは、アルダ・メルキオールだ。
アルダ・メルキオールは、アヌンナキの力を使って幾つもの時空を作り、そこへ、排斥された者達を受け入れていった。
そうして、逃れた者達は、自分達を排斥した時空の者達へ宣戦布告もしたが…結局は融合して終わる。
人は、憎しみを継続できない。
排斥され、逃れ、そして、絶対なる安住の地を得ると、憎しみよりも、そこで生きていこうとする前向きな力が強くなる。
特に、超絶域の存在であるアルダ・メルキオールは、高次元にある繋がる意識の集合体、無意識を正確に観測する事が出来る。
その観測に応じて、アルダ・メルキオールは最適な方法で、ホーリートライアングルを管理運営する。
アヌンナキの力から生み出される力、権能、システム。
それがホーリートライアングルを発展、維持、成長、再生をしてホーリートライアングルの民達に安寧をもたらす。
絶対なる完璧な君主、王、皇帝であるアルダ・メルキオールによってホーリートライアングルは、黄金期のような輝きを放ち続ける。
ホーリートライアングルに生きる民達は、その安寧と平安をもたらすアルダ・メルキオールを信望していた。
その民達の願いが、とある神格を生み出す。
それが、後にリュシュオル、ユティス、イエツァ、マレーナと融合する神格だった。
アルダ・メルキオールは、民達の深層意識から生まれた神格達の活用をする為に、その神格を生み出した民達から、四人の神子を選出する。
そして、その民の願いから生まれた女神で、四人の神子を、デウスエクスで合一させた。
リュシュオル、ユティス、イエツァ、マレーナは誇らしかった。
自分達は、アルダ・メルキオールの感謝から生まれた神格を宿せた事に。
そして、その女神の神格の存在意義を真っ当する為に、アルダ・メルキオールへ願い出た。
「わたくし達と共に、愛を紡ぎましょう」
女神の神格達の存在意義、願いとは、アルダ・メルキオールとの融和だった。
アルダ・メルキオールと交わり、命を紡いで行く事。
だが、アルダ・メルキオールは淡々と告げる。
「その必要はない。無意味だ」
そう、アルダ・メルキオールはアヌンナキ、完璧なるモノ、命ではない。神でもない。
それらとは、全く違う存在。
その元となったのは、命だが、命達が積層して全く違う存在になっている。
それは、システムに近い存在なのだ。
システムであるアルダ・メルキオールは、冷静に…彼女達、女神のデウスエクス達にその力を存分に生かせる使命を与える。
「このホーリートライアングルの生命維持を行え」
そう、アルダ・メルキオールにとって愛や交わりは無意味だ。
それが、アヌンナキなのだ。
絶大にして正しい君主が命じた使命は、まさに女神のデウスエクス達にとって最良の使命だった。
命より生まれた女神達は、その命達と維持管理するのに打って付けだった。
しかし、それは女神達が生まれた意義を満たせなかった。
それでも四人の女神のデウスエクス達は、使命を全うする。
ロゴスリアを筆頭に四人の女神のデウスエクス達は、ホーリートライアングルの生命達を維持管理する。
より生命に近い女神は、過不足なく命達を守り、育てる。
だが、しかし、その生まれた意義を満たす事は無い。
命、生命とは欠けている。
故にお互いの補おうとする。
お互いに結び付き、そして、命を紡ぎ合い、愛の歌を響かせる。
だが、それもアルダ・メルキオール、アヌンナキにとっては、己を完璧にさせる為のデータでしかない。
彼女達は、アルダ・メルキオールに語りかける。
命のすばらしさ、愛の尊さ、そして愛の意義を。
それを冷静にアルダ・メルキオールは聞いて
「確かにそれは理解できる。だが、我には必要ない」
理解し合えるのに、交わる事は無い。
彼女達、女神のデウスエクス達は齟齬があった。
理解できるからと言って、共感とは別物なのだ。
アルダ・メルキオールは、超絶な程の理解が可能なのだ。
生命の原理原則を理解している。
だからこそ、それがアヌンナキである自身に当てはまらない。
理解が優れているから、人の心情を冷静に分析して、最適な答えを導ける。
だが、そこに共感は存在しない。
アルダ・メルキオール、アヌンナキにとって共感は必要ない。
なぜなら、完璧なるモノだから。
欠損がない、補う事もない。
補う事が生じても、自身でその欠損を埋める。
それは命ではない。存在ではない。
事象、法則、現象、システム。
ただ、自身に足りないモノを修正する。
まさに、機構的な存在、それが…アルダ・メルキオールというアヌンナキだ。
故に、女神のデウスエクス達は、一度…反乱を起こした。
それは、アシュリードが入る前だ。
絶対なる主を裏切る事によって、共感を呼び起こす為に。
愛こそが、全ての命の真理である事を証明する為に。
この時、アルダ・メルキオールの元にいたのは、レオニドスとメファノタス、レーヴァティン、ロゴスリア、そして…女神のデウスエクスの四人だけだった。
女神のデウスエクス達四人は、別時空へ渡り…アルダ・メルキオールに匹敵する存在を作り出す事を模索した。
だが、それは…多くの失敗と、復讐者を作り出す事になった。
バランスを保っていた世界に、バランスを崩壊させる力や権能を与える事によって、崩壊が始まり、そして…その時空にいた多くの種族の民達が、共食いを初めて崩壊する。
それを見た、リュシュオル、ユティス、イエツァ、マレーナは愕然とする。
自分達がやった事の愚かさを痛感する。
四人の女神のデウスエクス達が、権能と力を無作為にばらまいた事による悲劇によって、四人の戦神のデウスエクス達、ラプター、パンテーラ、ルプス、ウルスが誕生した。
その四人の世界、時空は過度な種族や民族の粛正が横行して、その後始末にレーヴァティンが出陣した。
彼女達、女神のデウスエクス達四人が、アルダ・メルキオールの為に行った事が悲劇を生み出し加速させたのだ。
彼女達、四人はアルダ・メルキオールの前で、自らの断罪を申し出た。
その結論をアルダ・メルキオールは
「それで? お前達は人神だ。人で無い存在に、人の罪を当てはめるなぞ、不可能。お前達がやった事は、神として当然のことだった。それによって悲劇が生まれた原因は、その力におぼれた愚か者達が根源だ。
料理の道具で、人を殺して、道具が罰せられるかね? 否だ」
アルダ・メルキオールは正しい。
その通りだ。
力を与えて愚かになるのは、その愚かになった者達の責任。
女神のデウスエクス達四人は、ただ、力を与えた。それだけ。
親が子に、親戚の小父が甥っ子に、玩具を与えて、それをどう使うかは、その与えられた子が決める事。
だが、人の感情は、違う。
与えた側が悪い、与える前に考えなかったのか?
それが人が、生命が思う事、感情なのだ。
その論理が理論が破綻しようとも、生命は感情を優先させる。
だが、アルダ・メルキオールは違う、アヌンナキ、感情が先行する事はない。
後から感情は生じる。
だが、行いをする事には論理や理論、知性と知能が先行する。
感情を一切廃した、冷徹で冷静な知性が本質なのだ。
故に、完全に人の感情を理解できる。
それが、ホーリートライアングルの御方アルダ・メルキオール。
アルダ・メルキオールも人の姿をしているのも、民達が分かり易いように取っているだけ。
人の性質を、命の根幹を最も理解しているが故に。
だが、そこに共感は存在しない。
理解はする。共感はない。
分析する。共鳴がない。
どんな事でも必要な程、構築する。
だが、それによって間違いが生じても、その間違いがどこから来たのか…冷静に見れる。
だから、だから、彼女達四人の女神のデウスエクス達は、絶望と恐怖をした。
完璧するぎるからだ。
圧倒的な上位の存在。
その見ている視点は、宇宙を遙か下にする超次元からの睥睨だ。
アルダ・メルキオールという人の器の点と同時に、遙か超次元からも見ている。
完璧なる君主。
傲慢で高慢の絶対に正しい王。
真理の本質を見抜く権化。
神以上に完璧な存在。
人が求めた永劫の安寧をもたらす存在。
故に命とは交わる事は無い。
彼女達、女神のデウスエクス達は…絶望する。
そして、神より正しいアルダ・メルキオールの与えた使命を全うするだけになった。
愛を与えようとしても響かない、共鳴しない。
理解はされる。だが、自身の事のように感じる事は無い。
この絶対に正しい判断を下す御方に従うだけになった。
そして、今のホーリートライアングルが誕生した。
アルダ・メルキオールを筆頭に、左右にレオニドスとメファノタス。
外時空からの要請や、復讐者の呼び声によって派遣されるファングリオンのレーヴァティン達、ラプター、パンテーラ、ルプス、ウルスの戦神のデウスエクス達。
ホーリートライアングルの生命の維持管理、再編、再構築、循環、創造、進歩と安寧を司る大母のロゴスリア達、リュシュオル・ユティス・イエツァ・マレーナの女神のデウスエクス達 。
12の神世界、オーラムによってホーリートライアングルは絶大な黄金期の只中にいる。
そんな時に、新たな者達が加わる。
カログリアという四人の黒き花嫁衣装のような修道女達だ。
彼女達は、自らが愛した超越存在を己が内に取り込んでしまった疑似超越存在だ。
連れて来たのは、ワールストリアの大いなる父と、シグマとされる超加速進化因子だ。
アルダ・メルキオールは、超越存在の力を取り込む事を考えての受け入れだった。
そして、彼が来た。アシュリードだ。
連れて来たのは、王水の多頭龍という彷徨う人型の全能だ。
アシュリードは、御方アルダ・メルキオールを人に戻そうと必死になっていた。
だが、同じ間違いを犯した女神のデウスエクス達は冷ややかである。
どうせ、同じように絶望すると。
だが…。
それは現在の戦場。
ギアドス宇宙の、特別防衛隊、本部カディンギルの内部の通路で、アルシュ達と女神のデウスエクス達。
そして、アルシュの右に映る立体画面には、対抗する力を提供する装置内にいるアシュリードが映り、そのアシュリードが
「聞いてくれ。僕は、僕の中には…兄さんがアヌンナキとなる為に捨て続けている人間性が存在している」
その言葉に、リュシュオル・ユティス・イエツァ・マレーナは困惑して、ロゴスリアは静かな視線だ。
アルシュが
「ディオスが言うには、アシュリードを使えば、アヌンナキであるアルダ・メルキオールを、生命に近い超域的な存在に変換する事が可能…らしい」
リュシュオル・ユティス・イエツァ・マレーナは、息を呑んだ。
それは、自分達の願いに通じているからだ。
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