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召喚された勇者様が前世の推しに激似だったので今世も推し活が捗ります  作者: 蔵崎とら
番外編

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勇者と協力者

勇者視点となっております。

Side:勇者・仁志太樹





「何が目的?」


 将来の義理の弟、ソシア君からかけられた第一声はそれだった。

 あれはまだ、セリーヌとの婚約が発表されて間もなく、俺とセリーヌもまだよそよそしかった頃のこと。

 俺はソシア君からの問いかけの意味が分からなくてただただ首を傾げていた。


「王族の何が欲しいの?」

「え、何が? え?」


 問いかけの意味は分からないけれど、ソシア君がガチギレしてることは分かる。

 そして彼の魔力がとても高いことも分かる。持っている魔力量もかなり多いようだった。


「姉様との婚約! 真意は? 王族の何を狙ってるの?」

「えーっと、真意かぁ」


 俺はただセリーヌに一目惚れして可愛いなぁと口走ったらあっという間に婚約まで話が進んでいただけなのだけど。


「何が目的であろうと姉様を傷つける奴は絶対に許さないから」


 ソシア君はそう言って走り去った。

 なるほど、彼は姉様が、セリーヌが大切なのだろう。俺もセリーヌが大切だから、きっと気が合うはずだ。そう確信した。

 それからは学園帰りだと思われるソシア君が定期的に釘を刺しに来ていた。

 それだけじゃなく「婚約者はお互いの髪や瞳の色を使ったドレスとか髪飾りとかを用意するんだ」と教えてくれたり、セリーヌが普段好んでいるドレスやアクセサリーの系統を教えてくれたり、いつの間にやらよきアドバイザーとなってくれた。

 そうして徐々に打ち解けていくうちに、ソシア君はどうしてもやりたいことを教えてくれるのだ。他の人、家族にだって言えないけれど、俺には言える、と。


「本当は、姉様の元婚約者を殺してやりたい」


 強い瞳でそう言った。おそらくソシア君の魔力であれば、いつでも実行出来る。でもそれをしないのは、そうしたってセリーヌが喜ぶことはないと分かっているから。

 我慢しているソシア君の力になれるのならば、と俺は助言をする。


「社会的に殺すことなら出来ると思うよ。セリーヌさんに二度と近付かせないように」

「出来る?」

「セリーヌさんはそれを望んでいるのかな?」


 当時の俺はセリーヌがアイツにどれだけ傷つけられていたかもまだちゃんと知らなくて、本当にそれが正しいことなのかも分かっていなかった。


「……分からない、けど、アイツは姉様を平気で傷つけてる」


 分かっていなかったけれど、そう言ったソシア君の目がマジだったので、俺は彼を信用したのだ。

 それから二人で計画を立てて、おにーさまの誕生日の夜会でセリーヌを一人にしてアイツを釣った。

 ものの見事に釣れたアイツを蹴り飛ばし、セリーヌを救出している間、ソシア君はひいひい言いながら這いずり回っているアイツをこっそりライトアップして笑い者にしていたらしい。

 ちなみにその間俺は酷く傷ついた様子のセリーヌを見てこの計画はやめておいたほうが良かったと思いつつ壊された髪飾りを見て「だいじょうぶじゃない」と零したセリーヌがめちゃくちゃ可愛くて心臓がキュッとなったり感情がジェットコースター状態だった。傷ついたセリーヌは可哀想だったけどあの「だいじょうぶじゃない」はめちゃくちゃ可愛かった。動画撮りたかった。

 ……それで、見事アイツを社会的に抹殺することに成功したその時から、俺とソシア君は本格的に仲良くなった。

 度々王宮内で会っては魔法を教えてみたり、魔王との戦いの話を教えてみたり、それからセリーヌの話で盛り上がったり。

 セリーヌの話をしているときのソシア君はとても楽しそうで、俺はふと察してしまったのだ。

 あぁ、ソシア君もセリーヌが好きなんだなって。それが恋なのかどうかは他人である俺が分かるはずもない。本人だって気が付いているかどうかも分からない。

 でも、なんとなく、姉に対する想いを超えている。そんな気がしたのだ。

 まぁ、だからと言ってセリーヌを譲るつもりなんかこれっぽっちもないのだけれど。

 だからこそ俺にとってセリーヌが本当に本当に大切なんだということ、セリーヌをこの先一生大切にしていくということを、彼には伝えなければいけないと思った。


「俺がいた世界にさ、プロポーズってのがあるんだ」

「何それ」

「大切な人に、結婚してくださいってお願いする……儀式的なやつ」

「へぇ、こっちの世界にはないな」

「そうらしいね。でも俺、しようと思うんだ。プロポーズ」

「結婚決まってるのに?」

「決まっちゃったからこそ、かな。俺はセリーヌが好きだから結婚してほしい。結婚して、ずっと一緒にいてほしい。だから結婚してくださいってお願いしたい……みたいな」

「……アンタ、本当に姉様が好きなんだな」

「うん」


 照れ臭くなって、ちょっと笑って見せれば、ソシア君もなんとなく照れ臭そうに笑っていた。


「実はずっと前から好きでさ。だからソシア君が最初に会った頃『何が目的?』って聞いてきた言葉の意味が全く分かんなくて」

「あ、あれは、まぁ……」

「今はなんとなく分かってるよ。セリーヌのあの境遇じゃあ他人を疑いたくもなる」

「うん。……で? そのぷろぽおず? ってのはどういうことをするの?」

「あ、えっとね、一応跪いて指輪をプレゼントしながら結婚してくださいってお願いするんだけど」

「うんうん」

「今錬金魔法教えてもらいながら指輪も作ってるんだよね。お揃いで。で、これが錬金魔法下手過ぎて出来た火傷」

「え、勇者でも失敗するんだ」

「そう。びっくりした。それでさ、そのプロポーズの時にソシア君の魔法でちょっと演出してくれないかな?」


 ……と、言うわけで、ソシア君協力の元あのプロポーズとなったわけだ。

 それからもソシア君はずっと俺の協力者でいてくれている。

 ただ照れ臭いらしくてセリーヌには言わないでと口止めされている。まぁその頃あたりからなんとなくバレてはいたようだけど。

 ちなみに本格的にバレるのは、俺たちの結婚から約1年半後。

 俺とセリーヌの待望の第一子……のはずがまさかの双子で第一子どころか第二子まで産まれた! っていうお祭り騒ぎの際に盛大に祝砲のクリスタル魔法をぶっ放して普通にバレていた。

 バレたどころかちょっと叱られてた。騒ぎすぎだって。

 そんな可愛い義理の弟は、さらにこれから約一年半後、三人目と思ったらまた双子で四人目になった! っていうお祭り騒ぎの際に全く同じことをやらかしてまたちょっと叱られるのだった。





 

ブクマ、評価、いいね等ありがとうございます。とても励みになっております。

そしていつも読んでくださって本当にありがとうございます。


まだいくつか番外編を用意するつもりではありますが、ここで一旦一区切りとさせていただきます。

読者の皆様、長らくのお付き合い本当にありがとうございました!

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