第28話 期待
「なんとか解けたー。」
椅子から立ち上がり、背伸びをしながら近くにいた莉子に感謝を込めて言う。
「それはよかったです。でも結衣奈さん教えたらちゃんとわかるのになんで数学ダメなんでしょうか。」
「計算間違いかな、やっぱり。香菜にも言われてたし」
「でも一緒に解いてたときはちゃんと解けてたじゃないですか。」
「テストのときだと少し急いじゃって。」
「やっぱりそうですよね、制限時間ありますもんね。」
話しながら問題用紙をカバンにしまい、次の教科である英語の教科書を取り出す。
テストまでに覚えなければならない文章を覚えているか結衣奈は小さくつぶやいて確認していった。
英語もなんとかクリアし、一番不安だった日を乗り越えた結衣奈は、安堵の結果その日早々に寝落ちし次の朝に慌てて猛勉強をする羽目になったのだった。
「テスト終わったーーー!」
テスト監督が回収した解答用紙の数をカウントし、すべて揃っていることを確認して教室の外に出ていった直後、教室は賑やかになった。気が早いものはすでに帰った後の寄り道の相談をしていた。
「ねー、莉子ちゃん、もちろんクラブ行くよね?」
「もちろんですよ、しばらく走ってなかったのでそろそろ走りたくなってきました!」
「元気だねぇ。」
「何言ってるんですか。結衣奈さんも走るんですよ?」
「まぁ、そうなんだけどねー。頑張るかー。」
テスト容姿をカバンに無造作にいれると、再びのびをする。
「結衣奈さん、おへそ、見えてます・・・。」
「え?うそ!?」
莉子に言われ慌ててシャツをスカートの中に入れる。それを見た莉子が追加でそっと耳打ちする。
「シャツ捲り上がっちゃってますよ。」
「ちゃんと入れてたんだけどなぁ。」
「テストの間に出ちゃったんじゃないですか?」
「まぁ、いっか。」
頭を振ってそのことは頭から追い出し、終礼後のクラブに意識を持っていく。
彼女は約2週間ほど動かしていなかった体をほぐすように軽くその場で飛んだ。




