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9話 挑戦 と 決着

すんません。予定を大幅に遅れてしまいました。

言い訳します。リアルがめちゃくちゃ忙しいのです。

これから不定期の更新が続くと思いますがそれでもよろしければ、どうぞ。

 カウントが0になると同時に『決闘スタート』の文字が俺とサクマの目の前でエフェクトと共に弾け飛ぶ。


 「さあ! どこからでも掛かってくるがいい」


 決闘開始と同時、笑みを浮かべたサクマが悠々とした態度で言葉を発した。


 おいおい。いくら俺が弱そうに見えるからって油断し過ぎじゃあないか? これは案外簡単に終わりそうだ。


 「油断してると足元をすくわれるぜ」

 「ふん、この僕が初心者ごときに負けるはずないだろう?」

 「さいですかっ!」


 その言葉とともに俺は全力で地面を蹴り、サクマの目の前まで距離を縮めた。もちろん【ステップ】を使ってだ。

 その間合いは彼の長剣を振り回すには近すぎて上手く扱えない間合いであり、俺の片手剣が一撃を入れるのに最適な間合いである。


 「なっ!?」


 サクマが目を見開き、驚く。無理もないだろう。

 見た目初心者のプレイヤーにいきなり間合いを詰められたのだから。しかも、かなりのレベル差のありそうな彼が認知できない速さで。


 「【垂直斬りバーティカル・スラッシュ】!」


 俺は地面すれすれに脱力して構えていた片手剣に力を込める。すると、その剣の刀身が淡い青色の光を纏った。

 右足を踏み出すと同時に縦にまっすぐ、垂直に、青い斬撃が放たれる。


 ――勝った!!

 俺が今できる最高の一撃。

 サクマの顔は驚愕の表情のままだ。

 体勢が完全に硬直してしまったそのタイミングを逃さない。

 俺の片手剣が完璧な軌跡を描いてサクマの体に吸い込まれていく。この攻撃が決まれば、一本勝負ルールに則ったこの決闘は俺の勝利で決着する――。


 だが、そのとき、正にサクマの体に刀身が触れる瞬間、長剣を持った彼の右腕が何の脈絡もなく加速した。

 まるで彼の右腕が彼の思考とは別の意思を持っているかのように。

 その右腕は俺の斬撃のスピードを遥かに越えて彼の体と俺の片手剣の間に持っている長剣を滑り込ませ、斬撃をはじき返した。


 「・・・え?」


 サクマのSTRはクロノのSTRの数値を圧倒的に上回っているのか、右手に握っていた片手剣は、いつの間にか無くなっていた。目線を下に落とすと、俺が装備していたはずの<始まりの片手剣>が地面に転がっている。強制的な武器装備の解除、【ファンブル】だ。


 一瞬の間にいろんなことが起こりすぎて頭が追い付かない。俺のそのまま地面にへたりこんでしまった。


 どういうことだ? どこで間違った? 攻撃に行き着くまでのプロセス、サクマの隙をついた完璧なタイミングでのアーツの発動。それを完全に防がれた。

 色んな考えが頭の中を駆け巡る。


 辺りは静寂。ギャラリーも今起きた一瞬の出来事を見て、静まり返ったようだ。


 サクマは険しい表情で俺見て、言った。


 「・・・ほう。どうやら僕は君の実力を見誤っていたようだ」


 サクマはこちらにゆっくりと歩み寄り、長所の剣先を俺の喉元に突き付けた。


 「間合い攻めからの一撃、正直言って見えなかったよ。ステータスポイントを全てAGIに振っているのか? いや、違うな。速すぎて見えなかったのではない。間合いを詰める動作が自然過ぎて、攻撃に移るまでの動きが滑らかな過ぎて、僕は見えているのに(・・・・・・・)反応出来なかったんだ(・・・・・・・・・・)


 俺はその言葉に肯定も否定もせず、ただ目の前の男を睨み付ける。

 喉元に突き付けられた長剣は、少しでも妙な動きをすればそのまま俺を突き刺すだろう。そんなプレッシャーを彼から感じた。

 

 そんな俺の内心を知る由もないサクマはそのまま続ける。


 「先程の加速は何かのスキルか? しかも言葉を発しずに発動させていたことから【無詠唱】を習得してことが分かる。そしてその後の【垂直斬り】に繋げるまでの流麗な動作。あそこまで洗練された動きは、VRギアが脳から受け取る命令をアバターを動かすデジタル信号に変換するまでの時間とその信号によりアバターが動き出すまでのタイムラグを完全に熟知していないと出来ない芸当。なるほど、君は初心者などでは無く、僕と同じ『廃人(ゲーマー)』だった。ということだな」


 すると、彼は長剣を俺の喉元から外した。それと同時に僅かに緊張がほどける。


 死なないとは分かっているけど、鋭利な刃物を喉元に突き付けられたまんまじゃ流石に気は休まらないな。

 ていうか、こいつ良くしゃべるなぁ。それにかなりの実力者だ。たった一度剣を合わせただけでここまで手の内を知られることになるとは、思いもよらなかったな。


 俺は<始まりの片手剣>を拾ってすぐに立ち上がり、間合いを取る。サクマの顔は、いつの間にか余裕のイケメンスマイルに戻っている。


 「先程の初心者扱いや、不遜な態度など数々の非礼を詫びよう。すまなかった。どうやらその黒ローブに片手剣といったちぐはぐな装備にも、何やら事情があると見た」


 こいつ、俺がゲーマーだって分かったら急に態度を変えてきたな。過去になんかあったのか?

 結果的には、一つ誤解が解けたということで良しとするか。


 「僕は他人に自分のスキルをばらす趣味は持ち合わせていないのだが、今回は特別だ。教えてやろう」

 「さっきの種明かしということだな」

 「そういうことになる。君はとっくに分かっていると思うが、片手剣を弾いたのは僕の意思では無い」


 やはりな。俺の攻撃にサクマは明らかに反応できてなかったし、片手剣の基本アーツ【垂直斬りバーティカル・スラッシュ】の攻撃速度を上回る彼の右腕。決闘開始直後からカウンター系のスキルかアーツを発動させていたのだろうか?


 「この世界(ゲーム)には、『ユニークスキルシステム』があるのは知っているだろう?」

 「ああ、もちろん」


 やっべー、完全に忘れてました。でも今、思い・・・出した!!


 「僕はそのシステムに選ばれた。そう、僕は最強のユニークスキルを手に入れてしまったのだ」

 「ナ、ナンダッテー(棒)」

 「そのユニークスキルが【自刃犠牲の精神(オールパリイング)】だ。このスキルは、回避しようとした攻撃以外の僕に対するあらゆる攻撃を装備している武器で自動迎撃するというものだ。更にこのスキルが発動すると迎撃する敵のファンブル&スタン率を上昇させる。欠点といえば威力や範囲が大きい攻撃ほど武器耐久値の消費が大きくなるといったところか」


 なるほど、つまり俺の攻撃が【自刃犠牲の精神】を発動させるトリガーになったわけだ。

 運営もなかなかのぶっ壊れスキルを作ったもんだ。まぁ、俺のほどではないけど、弱点もちゃんと用意してあるようでなによりだ。


 だがいまはそれよりも、一つ気になった事があったので聞いてみる。


 「さっき、あんたは俺に止めを刺せたはずだ。なんで刺さなかったんだ?」


 そう、俺が完全に無防備だった状態。あの時サクマは長剣を俺の喉元に突き付けただけだった。

 すると、彼は少し考える素振りをしてから答えた。


 「それは、先程の非礼に対する僕なりのけじめと時間制限内にいつでも君を倒せるという自信の表れさ」


 ほほう、どうやら俺はサクマにそうとう舐められているらしい。

 言いたいことは分かる。俺ももし相手側であったなら舐めプに走っていただろう。だって魔術師なのに近接武器持ちでレベル1だし。

 唯一の希望だった名探偵クロノ作戦もこの一度の攻防で完全に崩壊してしまった。


 全く、教育ついでにとか言っていたあの頃の俺を殴りたいぜ。

 もっと良く考えておくべきだったな。ユニークスキルは、言わば逆転の一手となりゆるにふさわしい性能を誇る効果が多いはずだ。サクマは上手くユニークスキルを使いこなしている。俺も見習わなきゃな。どうせダメもとでもやってみよう。

 あの時、俺に止めを刺さなかったことを後悔させることぐらいはしてやる。


 俺は片手剣を右手から左手に持ち替えた。新たな試み、新たな挑戦だ。

 サクマは俺がまだ諦めていないのが伝わったのか、再び長剣を構え直した。


 「まだ君は決闘を続けるというのか? 君に勝ち目はないよ。ここはおとなしく降伏してくれないかい? そうすれば君が恥をかくことはないだろう」

 「嫌だね。俺はまだ自分の全てを出し尽くしていない」

 「まだ何かあるというのか?」

 「ああ、そういうことだ」


 俺は右腕を前に伸ばし手のひらをサクマに向ける。


 さて、VRゲームで初めてちゃんとした魔法を使うが成功するだろうか?


 「なあ、そう言えばあんたの剣の耐久値ってまだ余裕あるか?」

 「もちろん大丈夫だ。昨日、新調したばっかりだからね。それに初期武器の君の攻撃を一回受けた程度ではそこまで減らないよ」

 「ならもう一つ」

 「なんだい?」

 「魔法による範囲攻撃も弾き返せちゃったりする?」

 「単発魔法は弾き返せるが範囲攻撃系の魔法はちょt「弱点発見! オーケー。なら思いっきりいかせてもらうぜ!」・・・!? 一体何をする気だ!!」


 俺の周りに光の奔流が現れ、辺りを渦巻く。それが消えると、俺は黄金のライトエフェクト身に纏っていた。


 【神力解放】、かなり派手な演出だな。よし、これでMPは1.5倍になって97だ。これなら訓練場で見た迫力満点の魔法だって使うことができるだろう。(7話参照)


 「【複製(コピー)魔法(マジック)】!・・・【エクスプロージョン】」


 そう唱えると、サクマを中心に巨大な真紅の魔方陣が出現した。


 「レベル1の魔術師がこんなに強力な魔法を使えるわけが(ry」

 

 サクマが台詞を最後まで言いきる前に光の球体に包まれる。

 その球体は膨張していき、


 俺の目の前で爆ぜた。


 視界が真っ白に染まるほどの圧倒的な火力、爆風と轟音が神殿内を支配する。爆発後のエネルギーは行き場見失ったかのように神殿内を荒れ狂う。なにやら周りから悲鳴やら奇声が聞こえるような気がするが、気にしない。


 少し立つと風も音も止み、視界が開けてきた。

 神殿は壊れていないどころか焦げ跡一つついていない。

 破壊不能オブジェクトみたいな感じなのかな? こういうところはゲームって感じだな。


 あ、でもよく見るとドット絵のようにカクついてるところがある。ここら一帯はあの爆発の処理に手間取っているらしい。恐るべし【エクスプロージョン】。


 そして目の前には、『You Win』の文字が表示されている。どうやらなんとか勝つことができたみたいだ。

 周りにいたギャラリーは、神殿の外へ避難でもしたのか誰一人いなかった。




 現在、天職の神殿には神官NPCを除いて3人のプレイヤーいる。

 一人は俺ことクロノ。二人目は焦点が合っていないであろう、虚ろな目をしたユーナ。三人目は爆発の直撃を受けて黒焦げになった挙句、『You Lose』の文字を高々と掲げてぶっ倒れているサクマ。


 再び、辺り一面に静寂が訪れる。


 この惨事とも言える光景を見て、俺は。


 「・・・やりすぎたかな」


 と、一言つぶやくのであった。

 

【自刃犠牲の精神】

種類 PS

消費MP 1~100 威力や範囲により変動

リキャストタイム 0秒

解放条件 ユニークスキル

詳細 このスキルを持ったあなたは、あらゆる攻撃をあなたのもつ剣で防ぎきることができる。まれに敵の武器を落とす、もしくは敵を気絶させることもある。この強大な力の代償はあなたの剣だ。あなたの剣は、攻撃を受けるたび徐々に刃こぼれし、ひび割れゆくだろう。


【エクスプロージョン・カスタムα】

種類 火属性上級魔法オリジナル

消費MP 95

リキャストタイム 120分

解放条件 解放不可

詳細 ユニークスキル【魔法改造】により、プレイヤー名<かのん>の手によって作り出された魔法。ベースの【エクスプロージョン】のMP消費量を増大させ、リキャストタイムを延長させ、発動から爆発までの時間を長くするという3つのデメリットを大きくすることでその分、威力と攻撃範囲を最大限まで強化した極上の一品。狭いところでは使わないようにねっ。


クロノ

【複製魔法】Lv1 AS


 複製リスト:ウインドLv3、ファイヤーウォールLv2、スプラッシュLv2、エクスプロージョン・カスタムLv5、ファイヤーボールLv6


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