10話 決闘後 と 魔法(カスタムα)
「やりすぎちゃったかな?」
言葉と裏腹に内心はこうだ。
(やべぇ、魔法つえぇぇぇ!!)
魔法を初めて使ったみたのだが、なんとか成功したぜ。しかも、結構楽しかった。剣で戦うのとは、また違った爽快感がある。
もしも過去に戻れるのであれば、今までのファンタジー系VRゲームで魔法を使って来なかった昔の俺に一言苦言を呈したいまでもある。
まあ、そのきっかけもこの【複製魔法】あってのことだったのかもしれないが。
目の前に倒れているサクマを見て思ったのだが、この【複製魔法】はランダムで得られるユニークスキルの中でかなり上位の部類に入るのではなかろうか。
だって、スキルレベル1なのにいきなり高レベルっぽい魔法を詠唱無しで発動できるし。
今回勝てたのは、このユニークスキルのおかげだな。
未だにぶっ倒れてるサクマの方へ歩み寄る。というか、ゲームの中で意識が無くなるとかどういうこっちゃと思うが、このゲームには状態異常で【気絶】があり、強いショックやハンマー系の攻撃を受けると一定の確率でなるらしい。
「おーい、サクマ。大丈夫かー?」
へんじがない。ただの(ry
とりあえず、いつまでもほっとく訳にはいかないので、サクマを無理やりたたき起こす。
すると気が付いたのか・・・いや、状態異常の気絶が治ったのか、サクマは目を開けて上体を起こした。
「・・・あれ? 僕は、負けたのか?」
「ああ、俺の勝ちでお前の負けだ。敗因は・・・そうだな、俺を舐めてたことかな」
「・・・そうか」
サクマがうつむき、黙る。
これ以上は話が進まなそうなので、俺はここで本来の目的である、ユーナの件を主張した。
「ということで、俺はこれからユーナとレベル上げに行く。もちろん今日だけだ。何か文句は?」
すると、彼はこちらを見て、
「文句は無い。さっきの爆発は何だったのか聞きたいところだが、今回は僕が決闘で負けたんだ。ここは潔く引くとするよ」
そう言って、サクマはすっと立ち上がり、ナイスな笑顔と共に天職の神殿を華麗に立ち去っていった。
何故か彼の後ろ姿には、後光が差して見えた。
ん? ちょっと待て。今の決闘は俺が勝ったんだよな? なんでアイツは負けたはずなのに、あんなに格好つけてるんだ?
まあ、そこは気にしないでおくか。彼は格好つけていないと生きていけない体になってしまったのだ。うん、きっとそうだ。
それにしても決闘のあとは、大抵泥沼展開になったりするのがお約束だが、サクマはなかなか気持ちの良い性格をしているようだ。
俺なら、負けたあとそいつを睨みつけながら決して本人には聞こえない程度の声の大きさで悪口を言いまくるけどな!(小並感)
こうしてユーナ争奪戦(仮)は終了し、神殿には俺とユーナの二人だけとなった。
外にいたギャラリーたちも決闘が終わって事件が収束したことにより、いつの間にか解散している。
この世界の日本人も、争い事やトラブル事が起きれば、それを収めようとせず、ただ周りに群がり、見物するだけだ。そして、それが終われば何事もなかったかのように散らばっていく。だからと言って、俺も中学生の時、クラスメイトがマジ喧嘩していたのを止めようとしない周りで見ていた人の一人であったから人のことなど言えもしないが。
何はともあれゲーム開始早々に色々とあったが、やっと冒険に出発できるわけだ。もうスタートダッシュすら遅い気がするが、気にしてはいけない。
「さて、決闘も終わったことだし、レベル上げに行こうか。ユーナ」
俺は片手剣を背中の鞘に納めて、ユーナがいる方に声をかける。
ユーナへ体の向きをかえようと思い俺はふりかえると、彼女は何故か下を向き、固まっていた。
どうしたのだろうか? お腹痛いとか? いやいや、ゲームだしそんなこと無いだろ。
そんな馬鹿なことを考えていると、ユーナから質問の声があがる。
「・・・クロノさん。さ、さっきの爆発は、な、何ですか?」
「ああ、あれは魔法だ。確か、【エクスプロージョン】ってやつだ」
「へぇ、まだレベル1のクロノさんが火属性上級魔法のエクスプロージョンを・・・・・・って、ええええぇぇ!!」
ユーナさん、声デカいですよ。NPCの神官さんも、ビクッ! って、なっているよ。
俺はとりあえず、自分の持つユニークスキルについて簡単に話した。
すると、ユーナは驚きの顔から徐々に呆れ顔へと表情をシフトさせていった。
「・・・なるほど。わ、私みたいに魔法系のスキルをとって、ちまちまレベル上げをしなくても他のプレイヤーが使った魔法を見ただけで真似出来てしまうスキルですか・・・・・・なかなか良いスキルを引きましたね」
「まとめるとそうなんだが、その言い方されるとなんだか俺が悪いみたいに聞こえるのだが気のせいかな?」
ゲーマーの嫉妬ほど怖いものは無い。
「そんなことないですよ。それよりも、クロノさんが使った【エクスプロージョン】って、威力と攻撃範囲がおかしなことになってませんでしたか?」
確かに、言われてみればそうだな。俺がこの魔法を複製するときに見た【エクスプロージョン】は、こんなものじゃなかった気がする。
訓練所がぶっ壊れそうなくらいド派手さがMAXだったからな。
やはり俺の【複製魔法】は、まだスキルレベルが低いから真に迫ることは出来ないらしい。
「まあな。俺の【複製魔法】のスキルレベルは1だから、まだ完全に【エクスプロージョン】を再現出来ないみたいだ」
俺の返答にユーナは、考える仕草をしながら答える。
「いえ、弱すぎる意味でのおかしいでは無く、強すぎる意味でのおかしいです。あれは未完成の【エクスプロージョン】どころか、威力も範囲も進化させちゃってますよ。クロノさんのユニークスキルはクオリティを下げるどころか大幅に上げて発動しているかもしれません」
「え? どういうことだってばよ」
スキルの説明には、魔法を強化できるなんて記されていなかった気がする。
「えっと、私が所属しているギルドにも上級魔法を覚えた魔術師がいるのですが、その子が見せてくれた【エクスプロージョン】は、あそこまでの爆発は起こりませんでした。かなり熟練度レベルも上げていたはずなのに・・・。つまり、あなたの魔法は、何かが異常なのです!」
「・・・マジで?」
「マジです」
俺はメニューを呼び出し、ステータスを展開、ユニークスキルを確認した。
【複製魔法】Lv2 AS
詳細 この世界に一つしか無いユニークスキル。見た魔法を使えるようになる。使う魔法の威力や効力は、自身のステータスではなく、その時見たプレイヤーもしくはモンスターのステータスに依存する。どんな魔法でも消費するMPが足りており、使用条件さえ揃っていれば、発動可能。ただし、スキルレベルが低いと複製した魔法のクオリティが下がり、威力効力共に減少する。強力な魔法ほど完全に再現することは困難で、スキルレベルを最大まで上げても完全に再現出来ない魔法もある。複製した魔法は、複製リストで確認できる。複製された魔法の熟練度は魔法を見たその時点で固定され、どれだけ使用しても上昇しない。
レベル2による追加効果 アーツ、【複製準備】を使用可能にする。
お、スキルレベルが2に上がってる。新しいアーツが追加されたみたいだ。よっしゃ・・・って、今はそれどころではないので詳しい確認は後だ。
「とりあえず見たけど、スキルレベルが2になっていた以外、特に変わったことは書かれていなかったぞ」
「うーん、おかしいですね。それなら・・・複製した魔法自体が既に強かった。とかですかね?」
なるほど、複製魔法の複製リストをタップする。
【複製魔法】Lv2 AS
複製リスト:ウインドLv3、ファイヤーウォールLv2、スプラッシュLv2、エクスプロージョン・カスタムαLv5、ファイヤーボールLv6、
ん? エクスプロージョン・カスタムαだと!?
【エクスプロージョン・カスタムα】
種類 火属性上級魔法オリジナル
消費MP 95
リキャストタイム 120分
解放条件 解放不可
詳細 ユニークスキル【魔法改造】により、プレイヤー名<かのん>の手によって作り出された魔法。ベースの【エクスプロージョン】のMP消費量を増大させ、リキャストタイムを延長させ、発動から爆発までの時間を長くするという3つのデメリットを増やすことで、その分威力と攻撃範囲を最大限まで強化した極上の一品。狭いところでは使わないようにねっ。
お、おう。なるほどな。どうやらこいつがあの大爆発になった原因のようだ。かのんさん。誰か知らないけど、あなたの魔法で勝てました。ありがとう!
「どうやらユーナの推測が正しかったみたいだ」
「ふえ?」
俺はメニューを可視化&反転させ、ユーナに見せた。
彼女はそれをまじまじと見て、
「カスタムαってなんですかっ!!」
NPC神官「ビクッ‼」
そんなユーナの声は、神殿内に良く響いたとさ。でめたし、でめたし。
ピコン。
『サクマからフレンド申請&メールが届いています。承認しますか? Yes/No』
は?
【複製準備】
種類 アーツ
消費MP 10
リキャストタイム 10秒
解放条件 【複製魔法】のスキルレベルを2に上げる
詳細 複製する魔法の精度を【複製魔法】のスキルレベルに関係無く、少し上昇させる。重ね掛け可能。




