第3章 昭和時代のカレック
「どういう格好が好まれるか、相手が親しみやすい、地味で皆んなから好感持たれるおすすめの変装スタイルが載っていたからそれを真似したんだ。ワシがその時選んだのは、この本のこれ。」
「日本語勉強中の度数の高い黒ぶちメガネに気合いのハチマキ、六法全書を読みながら、大きな薪を背負った感心な勉強中の痩せ細った学ラン姿のオタッキー成人異国大学生」
に少しのインパクトを取り入れた。
「白塗り化粧と十手を腰に差してちょんまげ姿の江戸を守るお上」
をプラスしたんだ。顔にメイクしてちょんまげのカツラを付けてもっと日本を強調した。
日本は未成年には取り締まりが厳しいので、勤勉な成人若者の変装をして、薪まで担いで好感度アップを狙った。
更に注目度上げる為に、ローラースケートを靴の上から巻いて金具やベルトで固定する当時の4輪のスケートを履いていた。
人通りはあるのに、何気ない顔で大阪ミナミの宗右衛門町近くを滑っていたら、タバコを吹かしながらリーゼントにサングラス、赤いアロハシャツ着た短パン、ハラマキ、サンダルに全身入れ墨の30代男が自分に話しかけてくれたんだ。この人が私の先生だよ。
「ややや、おうおう、痩せ細ったもやし兄ちゃんちょっと待ったれぃ、イッヒッヒ。そこの細かいの、この人通り多い所で気にせず無神経によく滑れるな。それに何だお前のヘンテコな格好は? 俺より目立つんじゃねえよ、パフォーマーか? 変なチンドン屋? 変な大道芸か? 変過ぎて見た事ねエ。宇宙人か?」
「はいそうです。」
「だっはっは。面白いガキよのう、顔を白く塗り、分厚い黒ぶちのぐるぐるメガネ、学ランに7部ズボン、なぜか安産のハチマキ、ちょんまげが盆栽の木のおもちゃででかい。 頭にチューリップまで差してローラースケートを履いて十手を持つ。怖い。
持ち物は分厚い六法全書とチョコレート持って着せ替え人形か? ボウリングの玉と大きな薪まで背負って? 訳分らんが、苦労は分かるが、気味悪くてとりあえず皆んなが引く。目を合わせたくない存在じゃわ。」
「一様ガイドブックには皆んなが好む物を持つと好感度が上がると書いてあった。ボウリングとローラースケートは今流行だから乗り遅れるなと本に書いてあった。」
「天下のミナミでそんな格好する奴初めてだ。いい根性しとるわ。要は苦労の勤勉君を見せたいのか? でも顔の化粧と十手と盆栽ちょんまげははいらんやろ?
時代背景も全てがめちゃくちゃだ。どっちかでええやろ? ここで勤勉君だけにしたら通る人から同情でお金貰えるかもよ。なあ、ここで俺より目立つ格好するなよ、俺がびびるじゃねえか、大体お前何歳だ?」
「20歳です。」
「一応成人したのか? 何星人だ? 学ランて事はこの辺の大学生か?」
カレックが言い返した。
「ねぇ、ひょっとしてあなたはこの街のボウリングのピンですか?」
「何? アホぬかせ、ピンが喋るか! 俺は」
するとカレックは背負っていたボウリングの玉をローラースケートを滑らせながらこのリーゼントへめがけて一投転がした。
「待て待て、道端でアホか、人にぶつかる、止めろっ!」
「ゴンッ。」
見事! リーゼントの足に命中して倒れた。
直ぐ様、十手を取り出してリーゼントに向けた。
「御用だ、神妙にしろっ。」
「イテテ、お前、もやしみたいなガリガリのガキのくせしやがって凄いパワーだな、いきなり時代劇かよ。あのなあ、だから、俺はボウリングのピンじゃねえわっ。止めねえか、ボケ。ボウリングを知らんのか? ピンは人じゃ無い、ボウリング場行け。危ないだろっ。」
「まあでもイメージは分かった。勉強中の働き物が本読みながら一人薪背負って熱心な姿を見て貰いたかったのか? 顔白塗りで十手持ってローラースケートは理解出来んが。一生懸命な姿を皆んなに見てほしかったのか? 両方やると皆んながビビる。ちょっと参考にさせてもらうけど。俺の上を行くなよ。」
「改めてこんにちは。イッヒッヒ。良い子だね、怖がらなくていい。お兄ちゃんは正義の味方だよ。だから安心していい。
坊や、良い子だ。金出しな。私は悪い奴じゃない。好青年でお前の味方だ。弱い者を守る。坊やの大事なお金でお兄ちゃんが楽しい所に連れて行ってあげる。お金は楽しく使うんだぞ。」
「でも、学ランは止めだ、遊べねえ。白い化粧とか殺風景なちょんまげも、ボウリングの玉とかその他も捨てていけ。薪なんかここは山奥じゃ無いだ、必要ねえ。そこの質屋で金に換えよう。俺がコーディネートしてやる。その大事な六法全書だけ持っときな。て、おい、六法全書の中身は漢字ドリルじゃねえかっ、金運上昇? 字がデカ。1ページ4文字しか書いてない。ど近眼か? まあいいや。いいか、私の事をお兄ちゃんと呼んでいいよ。」
「私はちょっと恐い格好してるけど、怖がらなくていいよ。この街の悪い奴をいてもうってしばき倒す為なんだ。本当は心の優しい正義の悪者、泣く子も黙る 焼き入れじじい! かつあげスケベ! 只のチンピラ! 金返せクソ野郎! ゲジゲジ悪魔! とかこの辺で呼ばれている人気者だ。」
と親切に教えてくれて、古着屋で衣装チェンジした。私は分厚いぐるぐるメガネをしたまま頭はリーゼントにして六法全書と書いた漢字ドリルを持って、首に銭湯の手ぬぐいと革ジャン、革パンにブーツを履いてロックンローラーの格好になった。とても親切で良い人だったので、そのリーゼント頭のお兄ちゃんの後ろを付いて行った。意味は良くわからなかったが、丁寧な言葉連発でとても優しい人だというのはわかった。
「若いの、国はどこだ? 日本語勉強中か、とびきりの場所で熱い日本語教えてやるから付いてきな。男にもなれるぞ、アハハハ。」
「めっちゃいい人じゃん。」
そう感じた。誘われたのでとびきりの場所に付いて行った。そしたら「喫茶」という名前の所で、コーヒーを飲む所らしい。中はとても混んでいて客は不思議とおっさんばかりだった。
席に座ると、間もなくウエイトレスが注文を聞きに来てくれた。その途端、周りの男達が急に下を向いていた。リーゼント頭のお兄ちゃんまで、顔色変えてグラサン揺らして夢中で下しか見ていなかった。下って反射する床しかないが何があるのか、私の印象は?だ。
「変な店。ここが飛びきりの場所なのか?」
すると、間もなくしてリーゼント頭のお兄ちゃんがウエイトレスの耳元に暗号らしき言葉を継げると、VIP ルームみたいな奥の部屋に通され、指名料とチップを払う約束で日本語の授業という名目で特別に通された。女という生き物にリーゼント頭のお兄ちゃんはペタペタしていた。そのリーゼント頭が言った。
「純情青年、お前もやってみろ」
と言ったんだけど、人間の女は腕が長く胴とか脚も長くて気色悪かった。自分が好きな女は、目は真ん中に1つだけで良い。鼻と口もいらない。腕、脚が顔についていると興奮する。ここは地球だから我慢した。相手の女は自分の若者変装姿に満更でも無いご様子だった。
「あなた凄いガリガリね。ちゃんと食べてるの? こんな所に勉強中来ちゃダメでしょ」
と怒りながら自分を頬ずりしながら日本語の授業を始めた。
怒りながら言葉を教えてくれたが、色々触ってきた。その女が私に触れた瞬間、私の「恐竜」を見て目を見開き、そのままピクピク失神してしまった。ガリガリと言われて少し驚かそうと変装をやり過ぎてしまい反省したのだった。男のワシには人間のような気色悪い生き物の良さがさっぱり分からなかった。その時ケンはカレックが昭和時代に行ったんだと思った。




