6.顔合わせ
最初に面接した雑居ビルへスーツ姿で入って行く。
今日からここで僕の仕事が始まる。
セキュリティを事前に渡されていたカードで突破し、エレベーターへと乗り込む。
六階のフロア入り口にカードをかざして入って行くと、もう皆来ているようだった。
「おはようございます」
「おう。おはよう。スーツ似合ってるな。昨日は休めた?」
「はい。しかし、習慣とは恐ろしいもので……トレーニングをしてしまいました」
白石さんは眉間に皺を寄せていた。
しかし、口は笑っている。
「ホントに亮はいい方向に変わっちゃったんだな」
「いやいや。そんなことないですよ」
「くっくっくっ。こっちだ。皆に紹介する」
面接した部屋とは別の部屋に通される。
そこにはスーツを着た九人が並んでいた。
「おはよう」
「「「おはようございます!」」」
一糸乱れぬ揃った挨拶だった。
流石だなと感心してしまう。
「新人を紹介する! 舘 亮だ。コイツは入社して一年だけの鍛錬で玄龍先生お墨付きの漆黒レベルまでになった。期待のエースだ。皆よろしく」
こちらをチラリと見て顎で挨拶しろと合図される。
「初めまして。ご紹介頂いた通り、新人の舘 亮です。初めての身辺警護なので、わからないことが多いと思います。若輩者ですが、ご指導の程、よろしくお願いします」
深々と頭を下げると、騒がしく返事を返してくれた。
「よろしくー!」
「凄いな君は」
「良いねぇ」
一人目はふんわり系の女性。
二人目は貫禄のあるおじさん。
三人目は小柄なマッシュの男性。
なんか、意外と雰囲気が良い感じなんだね。
もっと殺伐とした雰囲気かと思ったけど。
「それでは、右からそれぞれ自己紹介!」
並んでいる人達の右から自己紹介を始めた。
「後藤 義之だよ。一応、副社長なんだ。信じられないかもしれないけどね。よろしく」
オールバックのマッチョな男性。
歳はとってると思うが、いい身体をしている。
雰囲気が優しそう。
「神代 咲月でーす。後藤チームで動いてまーす。三年目でーす」
さっき俺の自己紹介に返事をしてくれたふんわり系の女性だ。
茶髪で肩まであるボブ。
その下には目を見張るものが実っている。
「俺は斉藤 蓮だ。二年目だから、先輩だからな。分かってんな!?」
ツーブロックの逆立てた髪。
先輩風を吹かせているヤンキーのような男。
無視する。
「おい! 無視────」
「丹波 流だ。新人。足引っ張るなよ?」
「あっ、はい」
なんか絡まれた。
適当に返事をする。
「護さん、コイツ大丈夫なんですか?」
「あぁ。玄龍先生のお墨付きの漆黒レベルだ」
「はぁ? 本当ですか? おい! おまえ、この後手合わせしろ」
「えっ?」
僕が怪訝な顔をすると護さんがニコッとしてこちらを向いた。
「相手してやれ」
「は、はい」
なんで、この会社の人って戦闘狂ばっかりなの?
なんか、戦って会話する的な感じ?
恐いんだけど……。
「次いい? 風神 雅人という。流チームが主だ。どっちかと言うと頭使う方だからそんなに逮捕術は得意じゃない。こちらの武道さんに誘われて入った身だ。よろしく」
細身のセンター分けの男性。
隣が武道さんというらしい。
「武道 仁。同じく流のチームだ。俺も手合わせしたい。よろしく」
坊主の細マッチョの男性。
無口そうな感じ。
ここにもいた。戦闘狂。
「初音 ララよ。チームリーダーをしてるわ。漆黒なんて凄いわ。期待してる」
金髪のモデルのような女性。
目が青い。
何やらウインクされた。
僕は別に女を探しに来た訳じゃないんだよね。
けど、スタイルがいいのは認める。
「俺は伴 可主真だ! ララと組むことが多い! 筋トレ大好きだ! 一緒にトレーニングしようぜ!」
スキンヘッドのゴリマッチョ。
この人はなんか重量感がありそう。
筋トレの話しなら、話が合いそうだ。
「最後は僕だね! 御子柴 翔って言うんだ。基本はララ班。みんな癖が強いから頑張ってねぇ」
ニコニコしながら自己紹介してくれたのは。
俺の自己紹介に反応してくれた最後の人。
マッシュな髪型にタレ目で丸顔な人。
凄くいい人そうな雰囲気を醸し出している。
「皆さん、よろしくお願いします」
自己紹介が終わり再度皆さんに挨拶をする。
約二名の目が鋭く戦闘態勢になっている。
参ったなぁ。
ホントにやるの?
着替えなきゃないじゃん。
ネクタイ締めるの結構苦労したんだけど……。
「「「よろしく!」」」
「じゃ、早速実力を見せてもらおう」
流さんがさっそく手合わせを申し出て来た。
やるんだ。
ホントにこれ、逃げられないやつだね。
「えーっ? ホントにするんですか?」
護さんを見るとサムズアップされた。
やってみろって事ですか?
はぁ。やりますよぉ。
お互い着替えて訓練部屋にやってきた。
ギャラリーが周りで見ている。
みんな気になっているんだね。
「漆黒と言われながらやられるのが怖いか?」
「正直どうでもいいです」
「なに?」
流さんに負けることが恐いのかみたいなこと言われたけど、別に僕そういうのじゃないからね。
「僕は大切な人を守れるくらい強くなるために来たんです。敵は容赦なく殲滅しようと思っています。だけど、仲間と争うために来たんじゃない」
「ほう。言うことはいっちょ前だな。じゃあ、俺達の足でまといにならないか確かめてやるよ。かかってこい」
「わかりました。では」
頭の前で両手を構えて身体は自然体に。
流さんも同じように構えて。
目がマジだ。
流さん結構マジでやる気なんだ。
僕も真剣に相手しないと。
身体に気合いを入れる。
空気が変わった。
ピンッと張り詰めた空気が漂う。
先手をくれるらしいから、最初から攻めていこう。
「フッ! シッ!」
左のジャブはフェイント。
右の肘で打つ。
咄嗟にガードされた。
すぐに肘を引く。
今度は流さんが俺が引いたと同時に右肘で追撃してきた。
流れに任せるように回転し。
横から左サイドパンチ。
「がっ!」
腕を入れたようだが、ダメージはある。
サイドパンチの勢いのまま、身体を捻る。
そのまま回転し回し蹴り。
しゃがんで避けられる。
軸足を狙われた。
蹴られた方向に側宙。
流さんの伸びている足を取る。
そのまま足の関節をキメる。
「がぁぁ! クソッ!」
床をタップした。
すぐ足を離す。
「はぁ……はぁ……おい! 普通、軸足で側宙なんてできるかよ!」
ダンッと床を殴る流さん。
そんな事言われましても。
出来るように指導されましたけど。
「分かったか? 今の亮の実力?」
「悔しいですけどね。新入りとして認めますよ。まだ本気じゃないですしね!」
護さんの問いに子供のような返し。
そんなに悔しいかな?
「あの流君が……」
「へぇ。やっぱり凄いのねぇ」
他のチームリーダーが感心している。
顔合わせは結果的に良い方にいったようだ。
あっ。もう一人戦闘狂いたの忘れてた……。




