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警護組織イージス~人を護れなかった僕は、誰かを護る盾になる~  作者: ゆる弥


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4.一年後

「今日で最後か……よくここまで成長したもんだな。一年でここまでになるとは」


「はい。先生のおかげです」


 あれから一回り身体は大きくなり。

 カウンセラーの美麗先生へと闇の部分を見せない様に躱す日々が続いた。

 あの攻防も大変だった。

 

 そんな一年も今日が最後の日。


 カウンセリングの方は実はもう来なくていいと美麗先生に言われていた。闇の部分を引き出すのは諦めたらしい。でも、これまでの辛い事とかいろいろ話を聞いて貰ったからよかった。


 一ヶ月前からは玄龍先生の所にしか来ていない。

 入口がノックされた。


「入れ」


 玄龍先生がノックへ返事をすると、入って来たのは白石さんだった。


「失礼しますねぇ。あっ、久しぶり。よく一年間頑張ったねぇ」


「いえ。食料や飲み物等、ご用意頂いて有難う御座います。お陰様で、身体も大きくなりました」


 護さんが目を見開く。

 僕の姿を見て、なんだか驚いている。

 そりゃ、あんだけ細かったのにここまでゴリマッチョになったら驚きもするよね。


「お、おう。なんか……大丈夫? やりすぎた気もするけど」


「いえ。玄龍先生のご指導のお陰でここまでになりました。感謝しています」


「そう。玄龍先生的にはどうですか?」


 護さんが玄龍先生に問いかける。

 目をつぶってしばし沈黙。

 咳払いをして語り出した。


「最初は酷いもんだった。体力はないし喧嘩のセンスもない。格闘技のセンスもなかったから、どうなることかと思ったものだ」


「はぁ。じゃあ……」


 白石さんはため息を吐いて、目を瞑る。

 諦めたのかもしれない。

 モノにならなかったかと。


「いや、しかしな、こやつ根性だけはあってな。ワシの鍛錬に耐えに耐えてな。もう漆黒レベルだと思うぞ?」


「……いやいやいや。それって俺を超えちゃってるじゃないですか!?」


 護さんが取り乱している。

 そう言われても僕は玄龍先生が思っているほど強くなった気がしていないんだよね。

 玄龍先生にはいまだに勝てないし。


 白石さんが取り乱しているには理由があるんだ。

 

「ほっほっほっ。まぁなぁ。白、茶、灰色、黒、漆黒と段がある中で、漆黒になるものは一握りだからな」


「ウチの社員達でも、黒が限界でしたよね?」


「そうだなぁ。コイツは、そいつら以上の根性があった」

 

 イージスの人達は黒らしい。

 だから同じレベルにしてくれとお願いしたそうだ。

 先生は俺が漆黒だというが。


 何かの間違いじゃないだろうか。

 先生を相手にしていたから自分の強さがどれほどなのか、イマイチ分からない。


「ふむ。手合わせしてみてはどうだ?」


「あっ、それがいいですね。お互い」


 玄龍先生の提案に護さんは頷き、こちらに顔を向け笑って見せた。余裕の表情だ。


「よろしくお願いします!」


 僕はビッと礼をする。

 護さんの笑みが引き攣っていた。

 どうしたんだろうか?

 何か間違えたかな?


 中央に二人で立つ。

 真ん中に玄龍先生。

 もう身体に染み付いた構えをする。


 護さんが少し下がった。

 前傾姿勢になっている。

 その構えはあまり良くないと思うんだけど。


「それでは……始め!」


「シッシッ!」


 右の突きはフェイント。

 左で避けた時の喉を潰す気だ。

 定石は左に避ける事だから。


 たしかにな。

 でも、僕は違うよ?


「ぐっ!」


 護さんが呻き声をあげる。

 僕に後ろから首に腕を掛けられたからだ。

 そのまま胴体に足をかけてそのまま、後ろに倒しながら絞める。


 直ぐにタップされた。

 ハッとして手を離す。


 夢中になっていた。

 この一年で集中力も増したと思う。


「ゴホッ! ゴホッ!」


 護さんが首を抑えながら咳き込んでいる。

 ちょっと強く締めすぎたかもしれない。


「……亮。強くなりすぎ。死ぬとこだった。三途の川が見えたわ!」


「そ、そうですか? 僕にはもったいない言葉です。すみませんでした」


 ペコリと頭を下げる。


「いや、謝らなくていい。よくぞここまで強くなった。さっきは俺の予想の上を行くスピードで動いたんだな」


「はい。まだ速くはできますが、最小限で後ろを取りました」


「ハッハッハッハッ! すげぇ。すげぇよ亮! 皆に合わせるのが楽しみだな」


「皆……ですか?」


「あぁ。イージスは俺一人でやっている会社じゃない。仲間が九人いる。臨機応変にチームを組んでいるんだ」


「なるほど」


 その後、仕事の説明を軽く受けた。

 まず、依頼人の身辺調査を行う。

 調査結果に伴って危険度を設定しているそうだ。


 危険度により警護するレベルを変える。

 十年前までは装備は一定の装備をしていて、民間の会社の場合は拳銃は持てなかったらしい。


 無法地帯となった今では、警護するためなら魔法・拳銃どちらを使っても構わない法律となっている。その代わり、行使する時はしっかりと警護会社の腕章をしてないといけないらしい。


 不意打ちをくらったりとかなり不利な状況で警護しなければいけないのが、常なんだとか。

 敵はヤバい奴だと大砲を持っていたり、合成魔法を放ったりしてくるらしい。


 そんな時どうするんですか?

 そう問いかけると。

 んー。死を覚悟して突っ込むしかないかなぁという回答を受けた。


 僕はヤバい世界に飛び込んでしまったようだ。

 しかし、ここまで来たんだ。

 人を守ることに命をかける。


 そして、灯を殺した犯人を絶対に始末する。


「っとまぁ、そんなとこかな? 後は、明日は休んで、明後日は顔合わせね。皆に集まるように言ってるから」


「はい。わかりました」


「耐え抜いたお祝いに飯でも行く?」


 有難いお誘いを受けてしまった。

 護さんとご飯。

 とても魅力的だが。


「すみません。食料が今日の夜で丁度無くなるように調整していたので……」


「あぁ。じゃあ、明日からの部屋も用意してるから引越ししたらこれで好きなの食べなよ」


 そう言うと護さんが一万円を差し出してくれた。

 礼を言って受け取る。

 そういえば、明日からの生活費って……。


「亮のお金は明日振り込むから。一応一年間は働いてるのと同じように給料を発生させてる。そこから食費と家賃引いて残りは貯金してあったから」


「なんか……有難う御座います」


「いいのいいの。明日はゆっくり休んでぇ。あっ、あとさ、明日スーツ買っておいてね。基本的にスーツで仕事だから」


 思い出したと言わんばかりに手を叩く白石さん。

 大丈夫かな?


「わかりました。アカキで買ってきます」


「うん。あと、ネクタイもね。目立たない色の方がいいよ。紺とかグレーとかね」


「わかりました」


 こうして、イージスへの所属が正式に決まった。


 まずは、大切な人を守れるくらいの力はつけられたと思う。

 あとはアイツを探すだけだ。

 頬に火傷の後があるアイツを。

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