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Episode 47

 火曜日の朝日が、教務課の高い窓枠を通して乳白色の光の帯を差し込ませ、長い年月を経て黄ばんだ紙の書類が山積みになったオーク材の机を照らしていた。室内には、古びた紙と沈み込んだ印刷インクの匂いが濃く漂っている。そこには、決して明るみに出されることを望まない秘密があまりにも多く蓄積された場所特有の、息苦しい空気が満ちていた。


 午前九時ちょうど。


 捜査官の高村圭司は、岡部正人と向かい合って背筋を伸ばしていた。岡部は分厚い眼鏡をかけた中年の男で、髪はきちんと整えられているものの、目尻には深い皺が刻まれていた。半生を、すでに疲弊しきった学校の事務機構に捧げてきた職員の、疲労を隠しきれない顔だった。


 高村の傍らには、バンソンが静かに立っていた。両手をコートのポケットに入れ、机の中央に置かれた二組の書類に視線を走らせている。神崎陸と白沢乃亜に関する紙媒体の原本、そして、運命を左右した点数の変更履歴を記録した電子データの出力記録。その二つだった。


 高村は指先で机を軽く叩き、室内を包み込んでいた沈黙を破った。


「岡部さん。仮に、学校の通常の業務において、教科担当の教師が試験の採点を終え、正式に点数を確定させたとします。その後、その点数が電子システム上で突然変更されていた場合、本来であれば、どのような手続きが踏まれるべきでしょうか」


 岡部は唾を呑み込み、鼻筋にずれ落ちかけていた眼鏡を押し上げた。それから、抑揚の乏しい声で答えた。


「成績が確定し、委員会に提出された後で点数を修正することは、極めて厳格に制限された例外的な措置です。校内規程に基づく正式な根拠が必要になります。具体的には、修正理由を明記した正式な成績訂正申請書を作成し、承認を受けなければなりません。理由としては、合計点の計算ミスや、答案の再確認による採点の見直しなどが考えられます。そして、教科担当の教師と校長、双方の署名による確認が必須です。その際、システムのデータベースに対する操作は、すべて管理用の操作監査ログ、いわゆるシステム監査ログに自動的に記録されるはずです」


 岡部はそこで言葉を切り、重苦しいため息をついた。そして、まるで自らの過失を告白するかのように、もう一つの事情を付け加えた。


「ただ……正直に申し上げなければならないことがあります。数年前、本校が紙媒体による手作業の管理から、校内ネットワーク上のデータベースへ移行した際、データの移管作業で数多くのトラブルが発生しました。古い記録のすべてが、当時の状態のまま完全に電子化され、保存されているわけではないのです」


 高村は神崎陸の書類を手元に引き寄せ、成績表のページを開いて岡部の前に置いた。


「今回、私たちは一つの異常を発見しました。神崎陸の紙媒体の原本には、担当教師の確認を経た九十六点という記録が残っています。ところが、旧電子システムからデータを抽出したところ、その数字は七十六点に書き換えられていました。旧システムのログには、手動で点数を修正した操作が記録されています。しかし、不自然なことに、操作を実行した人物の識別欄だけが完全に空白になっているのです」


 岡部は身をかがめ、一枚一枚、慎重に書類をめくっていった。色褪せた数字に触れる指先は、かすかに震えていた。


 やがて彼は立ち上がり、部屋の隅に置かれた大型のスチール製キャビネットを開けた。内部には、保管用の帳簿類がぎっしりと収められている。その中から岡部は、該当する年度の成績訂正申請書登録簿を取り出した。


 痩せた指が、黄ばんだページを一枚ずつ繰っていく。


 一分が過ぎた。


 二分が過ぎた。


 静まり返った室内に、紙の擦れ合う音だけが規則正しく響いていた。


 ようやく岡部の手が止まった。彼は気まずそうな表情で顔を上げ、高村を見つめた。


「念入りに確認しましたが、現在ここに保管されている帳簿の範囲では、神崎陸と白沢乃亜、この二人に該当する成績訂正申請書の登録番号は見つかりませんでした」


 つまり、警察は依然として、問題の点数変更が正規の事務手続きに従って承認されたことを証明するために必要な、正式な書類上の根拠を発見できていなかった。


 しかし、岡部はすぐさま、学校側の管理体制を擁護するように付け加えた。


「ただし、皆さんには理解していただく必要があります。現在の保管庫で訂正申請書が見つからないからといって、その書類が過去に一度も存在しなかったとは限りません。施設や設備の引き継ぎ作業の際に、紛失したり、破損したり、廃棄されたりした紙の記録は決して少なくないのです」


 高村は核心を突いた。


「では、管理責任者として、今回の二件の点数変更が、いずれも完全に正規の手続きを経たものだと確認できますか」


「できません」


 岡部は即座に答えた。


「では、どちらも不正な改竄行為だったと断言できますか」


 岡部は数秒間、沈黙した。顎の筋肉がわずかに動く。慎重に言葉を選んだ末、ようやく口を開いた。


「それも……現時点で確認できている不完全な記録だけを根拠に、断定することはできません」


 バンソンは一連のやり取りを、ひと言も発することなく聞いていた。


 彼は手帳を開き、慎重に、互いに独立した二つの項目を書き留めた。


 訂正を承認した事務上の根拠は、未確認。


 システム操作を実行した人物の身元は、未特定。


 彼は、「点数が不正に改竄された」という一文だけは、断固として書かなかった。


 その言葉選びの違いは、科学的な捜査において、決定的な意味を持つ。


 書類が見つからないという事実を、直ちに不正行為の確証へとすり替えてしまえば、警察は誤った人物を犯人と決めつける危険を冒すことになる。あるいは、学校側の管理能力の欠如や保管業務の杜撰さによって記録が失われただけという可能性を、知らぬ間に見落としてしまうかもしれない。


 高村は、バンソンの慎重な姿勢に同意するように頷いた。そして岡部に対し、該当時期に点数の変更を申請する権限を与えられていた人物、変更を承認する権限を持っていた人物、さらにはシステム上で直接操作を行う技術的能力を有していた職員の、全員分のリストを速やかに捜査本部へ提出するよう求めた。


 そのリストがあれば、捜査対象を大幅に絞り込める可能性はある。


 しかし高村は、誰よりもよく理解していた。


 リストそのものが、自動的に真犯人の名前を語ってくれることなど、決してないのだ。


 教務課での聞き取りと並行して、捜査班は神崎陸の点数が引き下げられた時期に実施された試験について、教科別の成績順位表の収集にも着手していた。


 西川が実施したデータの相互照合によって、注目すべき事実が浮かび上がった。


 紙媒体の原本に記録された九十六点を維持した場合、神崎陸は、その教科の順位表で何人かの生徒より上位に位置していた。


 ところが、電子データ上で陸の点数が七十六点に書き換えられると、彼の順位は下がり、その分、別の生徒が一つ上の順位に繰り上がっていた。


 その生徒こそ、橘海斗だった。


 橘海斗――かつて学校内で暴力行為に関与し、神崎陸を孤立させていた男子生徒。そして、藤沢蓮が命を落とす直前の朝、蓮と激しく対立していた人物でもある。


 照合結果によれば、陸の点数が引き下げられた後、海斗の教科別順位は、ちょうど一つ上昇していた。


 新たに判明した二つの事実は、バンソンの注意を強く引きつけた。


 憎悪を抱く動機があり、暴力的な過去を持ち、しかも、対立相手の成績が下がったことで、間接的とはいえ利益を得た人物。


 しかし、その思考が結論へと飛躍するより早く、高村が制止した。


 彼は、表面的な偶然の一致だけを根拠に、橘海斗を「点数改竄に関与した者」のリストへ安易に加えることを許さなかった。


 高村はさらに調査範囲を広げ、学期全体の総合成績順位表まで確認するよう指示した。


 そして、その結果は、捜査班に生じかけていた性急な見方をいくらか和らげた。


 水野玲香の全校一位という順位は、総合成績表において依然として揺るぎなく維持されていたのである。


 その表は、すべての教科の得点を合算して算出した総合順位を示すものであり、陸の順位が下がった特定の一教科の順位表とは、そもそも性質が異なっていた。


 実際のところ、陸の点数が引き下げられたことで変化したのは、その教科内における彼の順位にすぎなかった。


 そして現時点のデータからは、その変動によって橘海斗が、物質的な報酬や称号、あるいは実際的な価値を持つ何らかの特権を獲得したとまでは、証明されていなかった。

 バンソンは高村に目を向け、考え込むような低い声で尋ねた。


「捜査官。今回の件で、橘海斗が利益を得たと断言できるのでしょうか」


「その教科内での順位が上がった、とは言えるだろう」


 高村は明瞭な口調で分析した。


「だが、核心となるのは別の問題だ。海斗は、あの点数変更を知っていたのか。誰かに変更を依頼したのか。そして何より、本人にシステムを操作する技術的な能力があったのか。この三つの問いについては、現時点では何一つ答えが出ていない」


 バンソンは机上の順位表に視線を落とした。


 確かに、海斗は象徴的な意味での利益を得ていた。ほんのわずかなものではあるが、陸の点数が二十点引き下げられたことで、自分の順位が一つ上がったのだ。しかし、刑事捜査の論理において、ある出来事によって利益を得た人物が、その出来事を引き起こした人物と同一であるとは限らない。


 他人の試験結果が改変されたことなど、まったく知らない生徒もいるだろう。点数が変更された事実を知っていても、システムを操作する権限を持たず、何もできない者もいる。そして、システムへのアクセス権限を持つ者が実際に操作を行っていたとしても、それは単に命令に従っただけなのかもしれない。あるいは、暗がりに身を潜める、まったく別の誰かから依頼されていた可能性もある。


 バンソンはペンを手に取り、自らの手で手帳に簡潔な結論を書き記した。


『橘海斗:教科別順位の上昇を確認。ただし、点数変更を認識していたこと、変更を依頼したこと、あるいは本人が直接操作を実行したことを示す証拠は、現時点で一切確認されていない』


 それは、想像が導き出した結論よりもはるかに限定的なものだった。


 だが、感情に流された推測のどれよりも、確かな結論だった。


 白沢乃亜の件についても、捜査班は同様の手法で学業成績のデータを突き合わせた。


 紙媒体の原本に記録されていた乃亜の得点は六十二点。しかし、電子データベース上では四十二点に置き換えられていた。その結果、該当する教科の順位表において、乃亜の順位は大幅に下がっていた。


 ところが、残されたデータからは、乃亜の順位が下がったことによって直接的な利益を得た生徒、順位が繰り上がった生徒、あるいは乃亜の位置を奪う形で浮上した生徒のいずれも、具体的には特定できなかった。


 さらに、乃亜の成績表とその評価が行われた時期は、陸の件とはまったく異なる評価サイクルに属していた。


 したがって、陸の点数変更によって利益を得た生徒たちを、そのまま乃亜の件における利益享受者のリストに加えることは、調査手法そのものの誤りにほかならなかった。


 バンソンは陸と乃亜、それぞれの順位表を机の上に並べて置いた。


「どちらも、ちょうど二十点ずつ下げられている……」


 細めた目で数字を見つめながら、彼はつぶやいた。


「どちらにも、アクセス権限SR-01に関連する、曖昧な手動変更の記録が残っている。だが、結果として生じた順位の変動は、まったく異なっている」


 隣に立つエナミ・アサも身をかがめ、無機質な数字をじっと見つめていた。やがて、ためらいがちに口を開いた。


「もしかして……裏で糸を引いている人物は、学校の中で何らかの水面下の競争から、二人を排除しようとしているのかな、バンソン?」


「動機としては十分に考えられる」


 バンソンは答えた。


「だが、現時点では、乃亜と陸が同じ具体的な目標をめぐって競い合っていたという事実も、二人を排除しようとする共通の敵がいたという事実も、証明できていない」


「じゃあ、この二つの点数が不気味なくらい似た下がり方をしていることに、意味はないの?」


「いや、意味はある」


 バンソンは頷いた。


「この類似性が示しているのは、二度の点数変更が同一の手順に従って行われたのか、共通のアクセス権限の付与経路を利用していたのか、あるいは同じ種類のシステム上の不備や規程違反に起因していたのかを、必ず調べなければならないということだ。だが、それだけで二つの事件に共通する犯罪動機があったと結論づけることは、絶対にできない」


 その瞬間、バンソンの脳裏に、藤沢蓮が下書きの資料に残した最後のメモがよみがえった。


『どちらも二十点減。原本を確認すること』


 蓮は確かに、そこに不審なパターンを見いだしていた。まるで異常な数式が繰り返し現れるかのように、同じ数字が二度も現れていたのだ。


 しかし、蓮自身もまた、死ぬ前に一度として、これが大規模な共通の陰謀を裏づける証拠だとは断言していなかった。


 バンソンは自分に言い聞かせた。


 蓮が最後に残した問いを、蓮自身が答えを導き出す機会さえ得られなかった問いを、自分の手で勝手に既成の結論へと変えてはならない。


 その日の午後、橘海斗は新たに判明したデータについて説明を求められ、再び警察の取調室へ呼び出された。


 今回は、高村は冒頭から海斗を責め立てることも、初回の聴取で彼がついた嘘を蒸し返すこともしなかった。


 代わりに、教科別順位の照合表を、海斗の目の前に直接差し出した。


「橘海斗」


 高村は落ち着いた低い声で呼びかけた。


「神崎陸のこの教科の点数が、電子システム上でひそかに七十六点へ変更される前は、九十六点だったことを知っていたか?」


 海斗は顔を上げた。


 その表情には、演技とは思えない困惑が浮かんでいた。彼は書類を凝視し、首を横に振った。


「お、俺……そんなこと、まったく知りませんでした」


「陸の点数が下げられた後、この教科の順位表で自分の順位が一つ上がっていたことには気づいていたか?」


 海斗は机に顔を近づけ、指先で順位表の行を一つずつ追い始めた。記載された内容を確認するのに、ほぼ一分を要した。


「俺……覚えていません。当時はクラスに何十人もいましたし、一人ひとりの正確な順位まで気にしていませんでした」


 高村は海斗の顔に現れる微細な変化を一つも見逃すまいと観察していた。しかし、その返答が虚偽だと露見したかのように、性急な判断を下すことはなかった。


「陸の点数が操作され、引き下げられる予定だと、誰かから事前に知らされていたことはあるか?」


「ありません。絶対に」


「学校の共用カード二十七番、あるいは学校の識別アカウントSR-01を使用したことは?」


「そんなカード、誰かから渡されたこともありません。それに、SR-01なんていうコードが何なのか、俺にはさっぱりわかりません」


 高村は男子生徒の目をまっすぐに見据え、語調を鋭くした。


「なぜ我々が、こんな古い記録の細部まで時間をかけて調べているのか、わかるか?」


 海斗は両手を固く握りしめ、拳を太腿の上に置いた。うつむいたまま、声を詰まらせるように答えた。


「そ、それは……俺が昔、陸をいじめていたからですよね? みんな、俺にはあいつを憎む理由があると思っているんでしょう」


「それも、君の供述を一つずつ確認しなければならない理由の一つだ」


 高村は淡々と答えた。


「だが、我々が捜査しているのは、成績管理システムへの不正な介入と、藤沢蓮の無念な死だ。この二つを、同一の犯罪行為だと最初から決めつけることはできない」


 海斗は弾かれたように顔を上げた。


 充血した目には涙が滲んでいた。そこには、抑えきれない悔しさと、紛れもない恐怖が入り混じっていた。


「蓮が昔のことを調べ回っていたのは知っていました。正直、怖かったんです。中学時代、俺が陸を苦しめるために送っていた、あんなひどいメッセージを掘り返されたくなかった。だから、警告してやめさせようとしたんです。でも、警察の方たちに誓って言います……俺は一度だって、陸の点数を変えたりしていません! 誰があんなことをしたのかも、本当に知らないんです!」


「点数変更を裏で仕組んだ人物についても、本当に何も知らないんだな?」


「知りません!」


「それから、昨夜、旧校舎の一帯で蓮と再び会ったことはあるか?」


「ありません! 放課後は、そのまま家に帰りました」


 高村は、それ以上海斗に特定の人物の名前を白状させようとはしなかった。今のところ、彼の供述を覆すだけの具体的な証拠を、一片たりとも手にしていなかったからだ。


 代わりに、高村は現場捜査班に指示を出し、海斗の供述をただちに裏づけるよう命じた。学校の正門付近に設置された交通監視カメラの映像、バスの運行記録、そして捜査対象者から独立した第三者による証言など、複数の情報源を照合して帰宅経路を確認するよう求めたのである。


 海斗が取調室から連れ出されると、部屋の隅に控えていたバンソンが歩み出た。そして、平静な声で口を開いた。


「彼には、過去の暴力行為を隠したいという個人的な動機がある。今回の点数変更によって、順位の面でごくわずかな利益を得たことも事実だ。この二つの要素を考えれば、海斗を重点的に調査すべき容疑対象の一人として扱う理由は十分にある」


 バンソンは、先ほどまで海斗が座っていた椅子に目を向けた。


「だが、それでもなお、彼とシステムの点数変更操作を結びつける証拠にはならない」

 高村は息を吐き、静かに頷いた。


「それに、藤沢蓮の死と彼を結びつけるものは、今のところ何一つない」


 バンソンの胸の奥に、言いようのない苛立ちがじわじわと広がっていった。


 海斗には、あまりにも奇妙な偶然が幾重にも絡みついている。バンソン自身も、その事実は認めざるを得なかった。しかし、疑わしいほどに「完璧」な容疑者こそ、捜査において最も危険な存在になり得る。その人物に目を奪われた捜査官は、ほかの可能性を探ることをやめ、さらに暗い真実が潜んでいる可能性を見落としてしまうからだ。


 警察が生徒たちの成績順位表を相互に照合しているという情報が校内に広まると、水野玲香は自ら捜査本部を訪れた。彼女は協力する意思を示すため、前学期から慎重に保管していた個人の成績通知表の写しを持参していた。


 玲香は事情を説明するため、取調室へ通された。


 最初の聴取で、なぜ白沢乃亜の成績記録に異常があったことを知りながら、その事実を隠そうとしたのか。それが今回、彼女に説明を求められた理由だった。


「陸が以前、とても優秀な成績を収めていたことは知っていました」


 玲香はうつむき、か細く震える声で語り始めた。


「乃亜が、自分の成績が理不尽に狂わされていることに、ひどく不満を抱いていたことも知っていました。彼女が悔しさのあまり、泣きじゃくっていたことも……。でも、私……二人の最終的な得点が、学校の電子システム内部で直接操作され、書き換えられていたなんて、本当に知りませんでした」


 高村は眼鏡越しに若い少女を見つめた。


「陸や乃亜の点数が修正されたことについて、学校から正式な通知を受け取ったことはあるか?」


「ありません」


「二人の点数を変更するよう、学校側に申し出たり、異議を唱えたりしたことは?」


「一度もありません」


「陸の点数が下がれば、学期全体の総合順位で自分が唯一の一位の座を維持できると、誰かから示唆されたり、事前に知らされたりしたことはあるか?」


 玲香は即座に顔を上げた。その目には、侮辱されたことへの憤りが浮かんでいた。


「そんなこと、絶対にありません! 私が一位になるために、あんな卑劣な手段を使う必要なんて、一度もありませんでした!」


 バンソンは部屋の隅に立ったまま、沈黙を守っていた。玲香の表情に現れる微細な変化を、一つひとつ注意深く観察している。


 やがて、高村が話題を白沢乃亜の名前へと戻すと、玲香の声は突然、さらに低くなった。そこには、深い自責の念が滲んでいた。


「乃亜は、どの試験でも私の直接の競争相手ではありませんでした。彼女が追い詰められていたことも、絶望の中に沈んでいったことも、私は知っていました。それでも……私は、関わらないことを選んだんです」


 玲香は指先を強く握りしめた。


「この息苦しい世界で、彼女が何を背負わされていたのか、私にはすべてを理解することなんてできませんでした。そして、彼女が自ら命を絶った後……私は、どうしていいのかわからなくなりました。もし勇気を出して、私が知っていたことをすべて話したら、今度はみんなが私を責めるんじゃないかって。乃亜が助けを求めていたとき、どうして手を差し伸べず、見て見ぬふりをしていたのかって……そう問い詰められると思ったんです」


 彼女は言葉に詰まり、しばらく沈黙した。膝の上では、両手が固く絡み合っていた。


「本当なら、私がするべきだったことが、いくつもあったんです。でも、私は何もしなかった……。乃亜の死に対する、心の責任を背負うことが、ただ怖かったんです」


 バンソンが一歩前に出た。


 声は平坦なままだったが、その言葉には、まるでメスの刃のような鋭さがあった。


「水野玲香。藤沢蓮が死ぬ前に、この二つの改変された成績記録を発見していたことは知っているか?」


 玲香は涙の滲んだ目でバンソンを見上げ、まっすぐに視線を返した。


「蓮があちこちを探し回って、陸と乃亜のことをみんなに問いただしていたのは知っています。でも……彼が具体的にどんな資料を見つけたのかまでは、本当に知りませんでした。誓って、嘘ではありません」


 それもまた、現時点では一方的な供述にすぎず、独立した証拠との照合によって裏づける必要があった。


 だが、彼女の話は、十分に現実的な心理の流れと符合していた。


 玲香は過去の秘密を知る証人であり、その臆病さと罪悪感に苛まれながら、自分自身を守るために、かつて目撃した事実を隠す道を選んだのかもしれない。


 だからといって、彼女自身がシステムに侵入して点数を書き換えた人物であるとは限らない。ましてや、藤沢蓮の命を奪った犯人であるとも、まだ言い切れなかった。


 玲香が退室を許されると、アサはバンソンの方を向き、そっと囁いた。


「彼女、本当に怯えているね……」


「そうだな」


 バンソンは答えた。


「だが、純粋な恐怖を目の前にしたところで、彼女が何を暴かれることを恐れているのかまではわからない。それが藤沢蓮の死に直接つながっているのかどうかもな」


 アサは彼の目をじっと見つめた。


「あなたは……彼女が苦しんでいて、後悔しているように見えるからって、簡単に無実だと決めつけるつもりはないんだね」


「それに、過去に嘘をついたというだけで、彼女を有罪だと決めつけるつもりもない」


 バンソンは冷徹なまでに正確な口調で言い切った。


 その頃、緊迫した聴取が続く一方で、法医学者の黒田俊平は、藤沢蓮の遺体に残された損傷と、遺体の発見現場となった階段の物理的構造との整合性を詳しく検証するため、一連の詳細な再現実験を進めていた。


 黒田が捜査本部に提出した技術報告書は、捜査を一変させるような決定的発見こそ含んでいなかったものの、科学的な検証という点では、極めて厳密なものだった。


 彼が照合したのは、次の項目である。


 後頭部に生じた頭蓋骨骨折の形状と正確な位置。


 肘や膝に残された擦過傷、および右腕に確認された皮下出血の部位。


 衝撃を生じさせ得る、木製階段の角張った鋭い縁。


 階段の現場における血痕の分布状況。


 そして、旧保管室から採取された微細な物質と生体由来の試料の成分。


 これらを検証したうえで、黒田は一つの可能性を排除できないという結論を示した。


「被害者の身体に残された個々の損傷のうち、いずれか一つだけをもって、蓮が何者かに故意に突き落とされ、階段を転落したと確実に断定することはできません」


 黒田は一度言葉を切り、慎重に続けた。


「しかし、反対に、損傷の形状だけを根拠として、何の外力も加わらない状態での転落が致命傷を引き起こした可能性を排除することも、私にはできません」

 衣服や皮膚の表面に残された浅い擦過傷のいくつかは、転落時に生じる摩擦によって十分に説明できるものだった。しかし、それらの損傷はあまりにも不規則に散在しており、衝撃の方向や力の伝わり方を明確に再構成できるほどの痕跡を形成していなかった。したがって、蓮が実際にどのような姿勢で落下したのか、何度衝突したのか、そして転落の際に身体が最初にどの方向へ動いたのかを、正確に復元することは困難だった。


 バンソンは瞬きを一つし、核心を突く仮定の質問を投げかけた。


「黒田先生。仮に、藤沢蓮が階段から転落する前に、硬い物体で致命的な一撃を受けていたとしたら、現在の司法解剖の結果だけで、それを見分けることは可能でしょうか」


 黒田は正直に首を横に振った。


「確実に見分けることはできない、バンソン。平坦な場所に立っている状態で強い外力を受けた場合でも、高所から転落した際の強い衝突によって生じる損傷と、形態的に類似した傷ができることは十分にあり得る。二つの受傷機序を明確に区別するためには、微細な付着物、血痕の飛散方向、そして現場に残された異常を示す追加の証拠を待たなければならない」


「では、保管室のキャビネットの足元で見つかった、ごくわずかな血痕についてはどうですか」


 高村が畳みかけるように尋ねた。


「その血痕から確認できるのは、あくまで生物学的な事実に限られる。藤沢蓮が、その場所で出血していたか、あるいは傷口が何かに接触したことがある、ということだ」


 黒田は慎重に答えた。


「しかし、その事実だけで、保管室こそが被害者に致命的な頭部外傷を負わせた場所だったと断定することはできない」


 バンソンは最後の質問を投げかけた。それは、法医学チームとの協議を締めくくる問いだった。


「では、現時点で、藤沢蓮が実際に息を引き取った場所を正確に特定するだけの科学的根拠は、揃っているのでしょうか」


 黒田の返答は短かった。


「まだだ」


 バンソンは、その曖昧な回答に落胆することも、肩を落とすこともなかった。彼は身をかがめ、客観性を保ったその結論を、手帳に慎重に書き留めた。


 刑事捜査は、物的証拠が十分に揃っていない段階で、法医学に無理やり断定的な答えを出させることによって進められてはならない。


 その日の業務を終える直前、事務管理責任者の岡部正人は、旧システムが稼働していた時期のアクセス権限の運用手順について、さらに詳細な説明資料を捜査本部に提出した。


 その資料によれば、識別コードSR-01は、特定の監査業務や特殊な教務記録の管理を目的として、あらかじめシステムに組み込まれていた上位権限の認証情報だった。


 当時、その権限は、必要な認証情報を付与された人物であれば、誰でも使用できる仕組みになっていたという。


 しかし、旧バージョンの管理ソフトウェアには、個々の操作命令を実行した人物の身元を記録する機能が存在しなかった。システムが保存していたのは、使用された権限コード、操作時刻、そして実行された処理の内容だけだった。


 岡部は、何年にもわたってSR-01の使用を任されていた人物や、その認証情報にアクセスできた人物の正確な身元を確認することはできないと認めた。権限の割り当てを記録した紙の名簿は、とうの昔に紛失していたからだ。


 高村は直ちに、残存する運用手順書と機器の引き継ぎ記録をすべて押収し、相互照合を行うよう命じた。


 バンソンは、ここにシステム全体に関わる重大な欠陥があることに気づいた。


 学校側は、サーバー上で何らかの成績変更操作が実行されたという事実なら証明できる。しかし、その操作を裏づける正式な訂正申請書も、変更理由も、実際に操作を行った人物の氏名も提示できないのだ。


 これは、学校の事務管理体制における極めて深刻な欠陥だった。


 もっとも、その根本的な原因が意図的な不正だったのか、記録管理能力の欠如だったのか、あるいは単に年月の経過によってデータが失われたにすぎないのかは、まだ明らかになっていなかった。


「西川」


 バンソンはデータ技術担当者の方を向いた。


「仮に、誰かが共通の認証情報であるSR-01を使ってシステムに侵入し、成績を書き換えたとする。その場合、命令を送信したコンピューターのIPアドレスや、ハードウェアの機器識別情報は、データベースに記録されている可能性があるのか?」


 西川は記録の構造を再確認すると、即座に首を横に振った。


「現在、我々が入手しているログには残っていません。一部のワークステーションIDは、旧ソフトウェアの段階ですでに記録対象から外されていたか、過去の保守作業の際に上書きされてしまったものと思われます」


「つまり……」


 高村は眉間に深い皺を寄せた。


「SR-01というコードだけを手がかりにして、特定の人物を絞り込み、そいつを表舞台に引きずり出すことは、完全には不可能だということか?」


「そのとおりです」


 西川は断言した。


 高村はしばらく考え込んだ後、捜査方針を二つに分けることを決めた。


 一方では、システムの使用権限を正式に付与されていた人物を引き続き追跡する。


 もう一方では、ネットワークから独立したオフラインの紙媒体に、点数変更を指示した人物の筆跡や署名が残されていないか、徹底的に洗い直す。


 もし、暗闇に潜む人物が別の誰かにコンピューターの操作を命じていたのだとすれば、その二つの役割――事件を企てた首謀者と、実際に操作を実行した人物――は、刑事捜査において明確に区別されなければならない。


 夜はすでに更けていた。


 交代勤務の時間帯を迎えた警察署は、重苦しい静寂に包まれていた。


 臨時の捜査室では、バンソンとエナミ・アサが大きなホワイトボードの前に並んで座っていた。事件に関するすべての情報は、客観的な証拠に基づいて四つの独立したグループに分類されていた。


 ### 1.橘海斗


 * 過去に校内暴力に関与し、神崎陸を孤立させていた。


 * 藤沢蓮の調査によって、過去に陸を孤立させるために送っていたメッセージが明るみに出ることを恐れ、それを隠そうとしていたと認めている。


 * 陸の点数が引き下げられた後、教科別順位が一つ上昇している。


 証拠上の空白: 海斗が点数の改変を知っていたこと、本人が直接操作を実行したこと、あるいは蓮が死亡した夜に旧校舎の一帯にいたことを証明する物的証拠は、現時点で一切確認されていない。


 ### 2.水野玲香


 * 白沢乃亜が深刻な精神的危機に陥っていた事情を、ある程度把握していた。


 * 臆病さと、自分にも精神的な責任が及ぶことへの恐れから、沈黙を選び、知っていた情報を隠していたと認めている。


 * 学期全体の総合順位で首位を維持していたが、陸と乃亜の点数が改変されたことを彼女が知っていたと示すデータは存在しない。


 証拠上の空白: 玲香をSR-01の認証情報、あるいは蓮の死亡現場に結びつける物的証拠は、一切確認されていない。


 ### 3.岡部正人


 * 学校の教務記録管理全般について責任を負っていた。


 * 正規の事務手続きでは、点数を変更するたびに書面による承認根拠が必要であると確認している。


 * 過去の記録紛失により、現在の保管庫から該当する訂正申請書を発見できなかったと認めている。


 証拠上の空白: 岡部自身が点数変更を直接実行したこと、あるいは変更を命じた人物として名を連ねていたことを示す証拠は存在しない。


 ### 4.認証コードSR-01の使用者


 * 実際の使用者の身元は、依然として特定されていない。


 * 過去の生徒記録に対し、手動による成績変更操作を行っていた形跡がある。


 * 事件が発生した当日の午後七時十二分、白沢乃亜の記録にアクセスし、そのファイルを開いて閲覧した操作履歴が残されている。


 証拠上の空白: これらすべての技術的操作が、同一人物によって実行されたことは、まだ証明されていない。ましてや、そのアクセス権限を有していた人物が、藤沢蓮の死に直接関与していたことなど、現時点では何一つ立証されていなかった。

 アサはホワイトボードに並ぶ四つの分類欄をじっと見つめていた。やがて、こぼすように小さく呟いた。


「こうして見ると……誰もが、それぞれ何か暗い秘密を抱えているように思えてくるね」


 バンソンは顔を上げた。その眼差しは深く、揺るぎないものだった。


「そうだな、アサ。だが、俺たちは常に、命に関わるほど重要な原則を忘れてはならない。恥ずべき行為、杜撰な事務管理による規程違反、そして冷酷な殺人事件。この三つは、法的な性質において、まったく異なるものなんだ」


「時間に追われるあまり、誰かを犯人だと誤って決めつけてしまうことを、恐れているんでしょう?」


 アサは優しく尋ね、そっと彼の肩に手を置いた。


「出口が見つからず、行き詰まることよりも、ずっと恐れている」


 バンソンの声は、重みを帯びて低くなった。


「一番怖いのは、絶望に駆られた俺たちが、欠点だらけの人物を適当に選び、あらゆる罪をそいつに押しつけてしまうことだ。そして、それで捜査に決着がついたと思い込み、本当に手を下した人物を追うことをやめてしまう。それだけは、絶対に避けなければならない」


 アサはバンソンの目を深く見つめた。


 彼女にはわかっていた。彼は決して、橘海斗や水野玲香、あるいはほかの誰かを庇おうとしているのではない。


 彼が守ろうとしているのは、捜査そのものの公正さだった。早く答えを見つけて重圧から解放されたいという、人間の弱い心理に抗いながら、持てる限りの理性と洞察力を注ぎ込んで、捜査の純粋性を守ろうとしているのだ。


 警察署を後にするために荷物を片づける直前、バンソンはもう一度、机の上に置かれた神崎陸の成績表へと目を向けた。


 そこには、ちょうど二十点もの開きがある二つの数字が並んでいた。


 教科別順位表では、その変更によって橘海斗の順位が一つ上がっていた。しかし、海斗自身が点数変更を依頼した首謀者であることを示す証拠も、彼にその操作を自ら実行できる技術的能力があったことを示す証拠も、システムからは見つかっていなかった。


 同様に、白沢乃亜の記録では、六十二点だった得点が四十二点に改変され、彼女の順位が下がっていた。だが、捜査本部は、その順位低下によって直接的な利益を得た生徒を、いまだ一人も特定できていなかった。


 二つの記録には、いずれもSR-01というコードに関連する、不可解で執拗な手動変更の痕跡が残されていた。


 どちらの件でも、変更を正当化するはずの正式な承認書類が、謎めいた形で姿を消していた。


 しかし、記録が失われた根本的な原因も、実際にコンピューターを操作した人物の正体も、そして一連の行為の背後にある究極の動機も、依然として深い霧の向こうに沈んだままだった。


 バンソンはホワイトボード用のマーカーを手に取り、右上の隅に、力強く三つの文章を書きつけた。


『利益があることは、動機の証明にはならない。』


『動機があることは、機会があったことの証明にはならない。』


『そして、機会があったことは、実際に犯行を行ったことの証明には決してならない。』


 アサは、刑事捜査の本質を突いたその三つの言葉を、黙って読み返した。


「それじゃあ、私たちが次に進むためには、結局、何が必要なの? バンソン」


「三つの要素を、確かな形で結びつける物的証拠が必要なんだ」


 バンソンの声は、石を打ちつけるかのように確固としていた。


「誰かに動機があったとか、犯行の機会があったとか、あるいは利益を得たとか、そういう話じゃない。具体的な一人の人間が、実際に行動を起こしたことを示す、客観的な痕跡だ」


 彼は振り返り、ホワイトボードに留められた藤沢蓮の写真に目を向けた。


 蓮は息を引き取る直前まで、自らの手でシステムの異常を追い、その不審な点を突き止めようとしていた。しかし、彼が真相にどこまで迫っていたのかを知る者は、誰もいなかった。


 過去に成績変更を行った人物と、秘密を封じるために蓮を殺害した悪魔のような人物が、同一人物である可能性は確かにある。


 だが、まったく別の人間が蓮の調査に気づき、過去の秘密を悪意をもって利用して、彼を死の罠へと追い込んだ可能性も否定できない。


 あるいは、これらの出来事には何の直接的なつながりもなく、ただ、この学校に渦巻く暗い背景の一部で、偶然交差したにすぎないのかもしれない。


 現時点で、彼らはどの仮説を真実として選び取ることも、決して許されていなかった。


 そのときだった。


 二人が捜査室を出ようとした、まさにその直前。高村の机に置かれていた業務用電話が、突然、けたたましく鳴り響いた。


 高村は受話器を取り上げ、短いやり取りに注意深く耳を傾けた。


 やがて、その年季の入った目に、鋭い光が閃いた。


 通話を終えた高村は受話器を置き、振り返ってバンソンとアサを見つめた。


「技術班から報告が入った」


 その声には、珍しく高揚した響きがあった。


「旧教務管理システムのバックアップデータのうち、これまで一度も改変された形跡のないデータ領域が、今も完全な状態で残っていることを確認したそうだ。何年も前に忘れ去られた、ネットワークから切り離されたオフラインの保管場所から見つかったらしい」


 室内の空気が、一瞬、張り詰めた。


 まるで、その場にいた全員の呼吸が、同時に止まったかのようだった。


「ただし、現時点では、そのバックアップの中に具体的にどのようなデータが保存されているのか、正確にはわかっていない」


 高村は、慎重さを失わずに続けた。


「それに、かつてシステムを操作した人物の名前が、都合よくそこに残されていると断言できる根拠もない」


 しかし、バンソンにとって、それは単なる技術上の報告ではなかった。


 彼は即座に、高村へ向き直った。


「バックアップ本体を調べる前に、照合すべきデータ項目の一覧を作成しましょう。何を確認し、何と何を比較するべきなのか、先に明確にしておく必要があります」


 高村は短く頷いた。


 バンソンはアサの方を振り返った。


 その口元には、ほんのわずかだが、確かな希望の兆しが浮かんでいた。


 何日にもわたり、食い違う供述と錯綜する現場の仮説に翻弄され、行き詰まりから抜け出せずにいた彼らが、ようやく本当の意味で独立した情報源に手を伸ばそうとしていた。


 そこにあるのは、事実を捏造することもなければ、恐怖に怯えることも、嘘をつくこともないデータだった。そして、どの容疑者の支配下にもない、独立した記録だった。


 彼らはこれから、新たな検証に踏み出す。


 そこでは、人間の憶測ではなく、感情を持たない冷徹なコードの一行一行によって、真実の行方が定められることになる。


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