第三章 星を見る者達 3
黒星の鼓動が胸の奥で響く。ノアはナイフを握り直し、視界の端で動く騎士たちを一瞬で分析する。彼らは均衡を保ちながらも、一瞬の油断を突いてくるはずだ。ノアは呼吸を整え、心の中で計算を重ねる。
「動くぞ」
アークが声をかけ、周囲の空気がさらに張り詰める。セシリアの剣が光を帯び、ルナの瞳が揺れる。騎士たちは静かに間合いを詰め、威圧感を増す。ノアは動きを最小限に抑えつつ、タイミングを狙う。
一瞬の隙――セシリアの剣が騎士の防御を誘導する。ノアはその間に跳び、ナイフを軌道に乗せる。火花が散り、音が鳴る。騎士たちは互いに気配を読み合い、攻撃を回避する。
「……早いな」
イリスが呟く。彼女の瞳は冷たく、だが興味深げだ。ノアの動きは、単なる反射ではなく、計算された一連の戦術であり、同時に胸の奥の黒星の力が微妙に加わっている。
騎士の一人が魔導光線を放つ。ノアは回避しながら壁に跳びつき、角度を変えて反撃のチャンスを探る。アークが前方から斜めに走り、騎士の注意を分散させる。セシリアも剣の振りで視線を誘導する。
「行け、銀目!」アークの声。
ノアはナイフを投げ、正確に騎士の肩をかすめる。騎士は一歩後退する。だがそれは始まりに過ぎない。黒星の力が胸の奥で脈動し、ノアの身体能力と直感を瞬間的に増幅する。
「……制御、まだか」
ノアは小さく呟き、次の瞬間に備える。騎士達は連携を取り、魔法と剣を同時に仕掛けてくる。ノアは頭の中で軌道を計算し、相手の攻撃の予測を次々に書き換える。
「……これなら……」
ナイフが再び空を切る。騎士達は互いの間合いを保ちつつ、ノアの動きを封じようとする。しかしノアは黒星の力を微妙に制御し、間合いと攻撃タイミングを完全に把握する。
「くっ……」騎士の一人が短く唸る。
「まだまだ」ノアは思う。胸の奥の脈動は強く、だが心は冷静だ。力が暴走する前に、計算し、動く。戦闘の緊張感、頭脳戦の駆け引き、そして仲間の存在。それらすべてがノアを押し上げる。
「……これで終わりじゃない」
イリスの視線が鋭く光る。彼女もまた、この戦いが単なる訓練ではないことを理解している。星教会の騎士達は、ノアの力を見極めようと本気で動いているのだ。
ノアはナイフを握り直し、次の瞬間を待つ。胸の奥の黒星が、微かな警告を発しつつも、未知の力の可能性を示していた。学院の闇、星教会の影、仲間たちの信頼――すべてが混ざり合い、ノアの戦いは新たな段階へと進む。
そして、黒星の脈動が一瞬強まり、全身に力が走った。ノアはその感覚を抑えつつ、前に出る。セシリア、アーク、ルナ、そしてイリス――すべての視線が一斉に彼に注がれる。戦場は静寂に包まれ、次の一瞬がすべてを決する。




