第九話
放課後、私は雪菜と一緒に近くのカフェへ寄った。
それは、副会長のことを考えるためだ。
昼休みに副会長のことは話したけど、雪菜は何か腑に落ちなかったみたいなので、話そうというそとになったのだ。
カフェに着くまで、雪菜は焦ってるというか、苛立っているというか...。
どことなく、落ち着かないようだった。
何かあったのかな...?
カフェの外装は落ち着いていて、どこか温かみがある。
中に入ると、チリンチリンと鈴の音が鳴り、爽やかなコーヒーの香りが鼻を掠めた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「2人ですが、後からもう1人くるので3人ですわ」
「かしこまりました。待ち合わせですね。こちらのお席へどうぞ」
もう1人...?
雪菜の言葉に首を傾げる。
誰だろう?お兄ちゃんかな?
真衣ちゃんは、今日早く帰るって言ってたよね。
「今日、乙女ゲームの発売なんだ!」って、朝から楽しそうだったから、たぶん違うだろう。
そんなことを考えているうちに店員さんが、奥のテーブル席へ案内してくれた。
「ご注文がお決まりになりましたら、こちらのチャイムをお鳴らしください。それでは、ごゆっくりどうぞ」
その言葉と共に深々と頭を下げると、店員さんは下がる。
それを見てから、私は隣に座る雪菜に気になるもう1人の人物を聞いた。
「ねぇ、雪菜。もう1人って誰が来るの?」
「......私が苦手な相手ですわよ」
「ゆ、雪菜が苦手な相手!?」
そんな人いたかな?
あ...!!も、もしかして...!!
私がその相手を思い浮かべた時、ちょうど扉が開く。
その人は、ぐるりと店内を見回すと、私達を見つけたらしく、にこりとこちらを見て微笑んだ。
「やぁ、雪菜、リア。久しぶりだね」
「...貴方には、出来れば会いたくなかったですわね」
「やだなぁ、仮にも元恋人にそんな態度は酷いんじゃない?」
「恋人なんかじゃありませんわ!」
珍しく、雪菜が声を荒らげて反論する。
しかし、相手は全く意に介さず、私の前の通路側の席に座った。
そして、高校生になってからかけ始めた分厚いレンズの眼鏡を外し、前からの眼鏡に付け替える。
「うん、やっぱりこっちのほうが見えやすいね」
「先輩、まだその眼鏡かけてるんですか?」
「もちろんだよ。これのお陰で女子からキャーキャー言われなくなったんだから」
「ははは...、そうですか...」
さ、さすが...!
イケメンは言うことが違うな...!
この人は同じ中学で、お兄ちゃんの友達の佐伯 終夜先輩だ。
アレンジして、少しハネている黒髪に、レンズの奥の少し冷たい印象を与える髪と同色の瞳も、今は楽しげに細められている。
イケメン...、なんだよねぇ。
この人を面白がるところがなければ、もっとよかったんだけど...。
でも、よく人を見ている分、先輩は情報が豊富だ。
ちらりと隣を見ると、未だに不機嫌そうな雪菜がいた。
さっきから、気になっていたけど、聞けなかったことを雪菜に質問する。
「雪菜、今日はどうして終夜先輩を呼んだの?」
「...副会長のことを、聞こうと思ったのですわ」
「副会長のこと...?」
「えぇ。どうやら、あちらはリアのことを知ってるようだったので、どこから情報が漏れたのか調べようと思いまして」
雪菜はそう言うと、終夜先輩のほうをみた。
その視線に気づいたらしい終夜先輩は、悲しそうに眉を下げた。
「ひどいなぁ、雪菜は。俺のことを疑ってるんだ?」
「だって、貴方以外に怪しい人はいませんもの」
「んー、俺は確かにリアの過去は知ってるけど、それは元々雪菜が「今すぐ黙らないとその口を永遠に封じますわよ」...はいはい、わかったよ」
雪菜が氷よりも冷たい瞳で、終夜先輩を見据える。
自分が怒られてる訳じゃないのに、すっごく怖い...!!
それにしても、終夜先輩が言いかけたことってなんだろうなぁ...。
閲覧ありがとうございました!
遅れてしまってすみませんでした!
次回はもっと早く更新できるように...頑張ります...!




