『とあるサンタと召喚大戦』――その2――
かなり短目ですが。
今回からはこの物語の主人公事。杉原 響の一人称視点に挑戦もかねて行かせてもらいます。
そんな訳でっ。
『サンタ×オカルト部』
響「始まりますっ」
これは現実なのか…信じられない光景が俺を襲う。 度重なる地響きと共に俺の眼前に現れたそれは深紅に彩られた巨体だった。
それがあの優しかったあいつが招き入れた物とは信じるのに少し時間がかかったが俺の顔をじっと遥か高い位置から見下ろす巨体の表情から分かる。あいつの匂いがするんだよ――
俺は逃げ惑う人々をかき分けながら息を切らしひた駆ける。目の前に見えるボート乗り場の恥にたどり着く。そこから斜め後方から水面を苦しげに引き裂き暴れるあいつの近くから見上げる。
赤い甲羅の先端。そこから伸びるあいつの変わり果てた顔が覗ける筈だ。そして俺が見た巨大生物の。変わってしまったあいつの表情は泣いていた。とても大きな声で――
何で今まで俺はあいつの気持ちにまったく気付かなかったのか。
"あいつ"が傷ついて。それでも耐えて耐えぬいて――初恋の相手であるマリオン先輩の事で頭がいっぱいな、バカな俺は気付いてあげれなかった。
あの時――事故とはいえ別世界に飛ばされた俺が出会ったこの世界でたった一人のとても大切なパートナー。
あの出来事以来俺の異常体質を唯一理解してくれた。他人には決して明かしたくない超能力。ここに居る俺の唯一の大切な仲間達や先輩達だけが知ってる俺の人の夢に介入する能力。
その俺の能力を初めて知ったのもあいつ。カレンだった。
カレンは俺が持つこの大っきらいな得意体質をとても感心し。今まで全く思いつかなかった一言を可愛らしい顔を覗かせ告げてくれた。あなたのこの能力で人々がうなされる悪夢を退治しようと。
共に数々の夢内に掬う魔物を退治してきた。そんな戦友であり大切なカレンの心をもて遊び――そして土足で踏み躙った。ったく俺は本当に最低なクズ野郎だぜ…。
「こらっ! 響っ! こんな場所で一体何油売ってるんだよ。私と光雄が魔物を食い止めてる内にあっちに居るマンジロウの夢にっ!」
「――えっ?」
はっ! と今まで考えていた思考が停止する。俺の遥か頭上から巨大過ぎる深紅のハサミの鋭く尖るきっ先が差し迫る。
時速120キロ以上で迫り来る巨体なハサミを僅か数センチでマリオン先輩の拳と激突する!
体魔法防御を施した紫の手袋ごしの小さな拳の先から蒼白い光が眩ゆく照らす。
足元にある木製の床を軽く捲れあがらせながら轟!と何重にも折り重なる防御結界が発生し、その余波を的もに正面から受ける。
目の前が眩む。あんな凄い芸当を軽く出来る先輩の魔術的戦闘力に只唖然とする。
「っつ! ああああああ! こんのぉぉぉぉぉぉおおっ! クソバカカレンっ! ちったぁ先輩に対して手加減しろやぁ!」
眩ゆく照らす右手で防御結界を張り巡らせながら空いてる左手に持つ蒼白く輝く杖を振りかざす。
一瞬だけ押し戻された深紅の巨体を横目にマリオンは再び俺が居る位置に向かい何かしらを唱えた。
俺は足元から崩れるような浮遊感に焦る間もなく遥か先に一瞬で飛ばされる。 飛ばされるという考えより何かしらの術で転送されたのか。
「つあ? みっ…光雄先輩?」
「ああ。マリオンの転送魔術か? まぁ。どうでもいいけどよ。アンタが来るのを待ってたぜ」
俺が所属するオカルト部でのムードメーカーでもある副部長。いつになく真面目な表情で視線を足元でしゃがみこむ一体の着ぐるみに送りながら一言つげる。
足元で未だ微動だに動かずに蹲るこの施設でのイメージキャラ。
マンジロウと言われるそれはあった。
俺の真横で光雄先輩は意味ありげな仕草で一言を告げる。
「さあ、早くこの着ぐるみ。サンタクロースの夢に介入し、こいつを使おうぜ」
更に光雄先輩は俺の右手に掴むある魔具。小さな小さな超合金に視線を送るのだ。
そして決戦へ続く
光雄「短けえ…」
マリオン「うん。短いよ」
響「なんか今回は色々と理由的に区切ったみたいどすよ」
カレン「まったく。こんな意味のねーのを只の"サボリ"と言うんですわよ」
アーク「いや(汗)…初めてのまともな一人称ですからww」
◇◆
マリオン「そんな訳で次回からは一気に長くなる予定だから」
響「お楽しみに…です」