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Rain Drop Memories ‐ BAR RAIN と、ある女性バーテンダーへの追憶

作者:雨澤夕虚
――もう、あのバーはない。

東京の片隅に、知る人ぞ知る小さな店があった。
その名は「RAIN」。黒い壁に囲まれた、カウンター七席だけの静かなバー。
まるで街の喧騒から切り離された、洞窟のような空間だった。

店主は、雨沢夕子という女性。
多くを語らず、愛想笑いも浮かべない。けれど、彼女が差し出す一杯には、どこか人の心をほどく温度があった。
たとえばギムレットの冷たさに滲む優しさ。あるいは、ブルーキュラソーの奥に沈む、彼女自身の孤独。

私も、あの店の常連のひとりだった。
決まった曜日に足を運び、決まった場所に腰を下ろし、何かを話すでもなくグラスを傾けていた。
他の客たちも皆、無口で、どこか少し傷を抱えていたように思う。

「劇的なことは、何もなかった」
でも今思えば、それこそがあの場所の特別さだったのだ。
沈黙すら心地よく、雨音すら会話のように聞こえた。

やがて「RAIN」は静かに姿を消した。
看板も残さず、惜別の挨拶もなく。
ただ、ふとした雨の夜に、思い出だけがふと立ちのぼる。

夕子さんが最後に出してくれた、あの一杯。
瑠璃色の光を宿した、名前も味も忘れられないカクテル。

『Rain Drop』――
それは、夜ごと静かに降りそそいだ、記憶のしずく。
誰かの胸に、いまもなお、静かに降り続けている。
Rain Drop
2025/08/07 18:30
”Memories of a Gin and Tonic”
2025/08/07 18:40
”Memories of a Gin & Tonic Part 0”
2025/08/07 18:50
”A Portrait of BAR RAIN”
2025/08/07 19:00
”The Opening Ritual at BAR RAIN”
2025/08/08 18:10
XYZ
2025/08/08 18:20
Hemingway Daiquiri
2025/08/09 18:30
Papa Doble
2025/08/09 18:40
Violet Fizz
2025/08/10 18:10
Margarita
2025/08/11 18:10
Screwdriver
2025/08/12 18:10
Dirty White Mother
2025/08/13 18:10
Red Eye
2025/08/14 18:10
Peachtree Fizz
2025/08/18 18:10
”a quiet sanctuary”
2025/08/20 18:10
Mimosa
2025/08/23 18:10
Alexander
2025/08/24 18:10
Kir
2025/08/25 18:10
Mojito
2025/08/26 18:10
Cuba Libre
2025/08/28 18:10
Cardinal
2025/08/30 18:10
Blue Hawaii
2025/08/31 18:10
Manhattan
2025/09/03 18:10
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