表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/38

"When the Bar Serves Dessert"

挿絵(By みてみん)


BAR RAIN のカウンターに腰を落ち着けて、ふと気づく。

この店には、いわゆる「料理」というものがない。

メニューに並ぶのは、ナッツやチーズ、クラッカー――そんな乾き物ばかりだ。


もっとも、夕子さんは料理が苦手というわけではない。

むしろその逆で、二年間料理学校に通い、調理師免許まで持っていると聞いた。

それでもメニューに料理を載せないのは、「ショット・バーに料理は必要ない」という考えからだという。

「カクテルは食事をしながら飲むものじゃないのよ」

そう言って笑う彼女の声には、確かな自信と、わずかな割り切りが混じっていた。


現実的な理由もある。

一人きりで最大七人の客を相手にするのだから、凝った料理を作る余裕はない。

その代わり、カウンター内には小さなオーブンレンジが置かれていた。


卵黄が余ったときはカスタードプリンを、卵白が余ればメレンゲクッキーを作る。

作ったものは、気まぐれに客へサービスで出すこともあれば、自分で食べてしまうこともある。

忙しい夜はボウルに素材だけ取っておいて、後で仕上げることもあるそうだ。


ある夜、運良くそのプリンにありついたことがある。

カラメルの香ばしさと、ほろ苦さ。

甘さ控えめのそれは、カクテルの余韻と不思議に寄り添った。


この店に「料理」はない。

けれど、時折こうして差し出される一皿が、どんなフルコースにも負けないほど心を満たすことを、僕は知っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ