第5話 PVが100を超えた日
初めて感想をもらったあの日から、私は少しずつ前を向けるようになった。
たった一行の言葉が、どれほど作者の心を支えるのか。
その事実を知った私は、「もう少し頑張ってみよう」と思えるようになった。
だが、現実の数字は依然として厳しかった。
PVは1日10前後。ブックマークはまだゼロ。
感想も二つ目が来たきりで止まっていた。
「これで本当に前に進めているのだろうか?」
不安は尽きなかった。
■ 実験を始める
私は思い切って「小さな実験」を始めることにした。
上位作家を研究して学んだことを、一つずつ試していったのだ。
タイトルを少し変える
地味だった題名に「追放」や「最強」といった読者が反応しやすいワードを入れた。
更新時間を工夫する
夜の23時半前後に更新するよう心がけた。ランキング集計直前を狙うためだ。
SNSで告知する
勇気を出してXにアカウントを作り、「更新しました」と投稿した。
誰も反応してくれないだろうと思っていたが、運よく一人が「いいね」を押してくれた。
その瞬間、心臓が跳ねた。
小さな実験。小さな結果。
それでも、数字は少しずつ動き出していた。
■ 伸び始めたグラフ
ある日、私は見慣れたページを開いた。
そこに表示された数字に、思わず目を疑った。
――PV「50」。
昨日まではせいぜい10前後だったのに、いきなり5倍。
私は手のひらに汗をかきながら画面をスクロールした。
ユニークは「30」。つまり30人が読んでくれたということだ。
「……夢じゃないよな?」
画面を何度も更新して確かめた。数字は消えない。
本当に、30人が私の作品を読んでくれたのだ。
■ 100の壁
そこから数字は少しずつ伸びていった。
PVは70、80、90……。
だが、どうしても「100」の壁を超えられなかった。
「なぜだろう?」
私は必死に原因を考えた。
タイトルがまだ弱いのか?
あらすじがつまらないのか?
文章が拙いのか?
自己嫌悪に沈みかけたとき、ふと気づいた。
「100を超えないのではなく、もうすぐ超えるのだ」
昨日の私には想像できなかった数字が、いま目の前にある。
ならば焦る必要はない。続ければ必ず突破できる。
そう思うと、少し肩の力が抜けた。
■ その瞬間
そして、ある日の夜。
更新を終えて眠り、翌朝スマホを開いた。
PV「112」。
ついに、三桁の大台に乗った。
その瞬間、胸が熱くなり、息が詰まった。
私は画面を見つめながら、小さくつぶやいた。
「……やった」
数字が全てではない。
それでも、この100という数字には特別な意味があった。
ゼロから始まり、孤独に悩み、感想をもらって涙し、少しずつ積み重ねてきた結果。
それが「三桁」という形で目に見える成果になったのだ。
■ 数字の向こう側
PVが100を超えたからといって、生活が変わるわけではない。
有名になるわけでもない。
それでも、私の中では確かな「手応え」があった。
PV10の頃には想像もできなかった景色が、今は見えている。
つまり、これからも数字は伸びていく可能性があるということだ。
「ゼロは無限の始まりだ」
私はそう実感した。
最初のゼロがあったからこそ、この100が輝いて見える。
ゼロを味わった者だけが知る喜びが、そこにはあった。
■ 今日のまとめ
実験を重ねれば、数字は少しずつ動き始める
PV100の壁は、ゼロから始めた者にとって大きな節目
数字の裏には、確かに人がいる
だからこそ、一人ひとりに感謝すべき
私は決意した。
次の目標は――「初めてのブックマーク」を手に入れること。
PV100を超えた今、次は「誰かが続きを読みたい」と思ってもらう段階だ。
それこそが、ランキング入りへの第一歩だろう。
小さな数字の積み重ねが、大きな未来を作る。
その未来を信じて、今日もキーボードを叩き続ける。