2話:規則
結局今日は、マナさんとそれ以上は話せなかった。
からかわれた可能性も十分ある、いやそんな子とは思ってないけど、話した事なかったし。
なんて考えながらオレは家の敷地内の工房で、クラスメイトから受けた依頼品の修理を行っていた。
「ふぅ思ったより早く終わったぁぁ!!」
椅子をグッと後ろに倒し背伸びをすると、やはりマナさんの話が脳裏を過る。
「聖剣……は100歩譲ってオーパーツみたいなのが存在するとして、異世界人なんて居る訳ないよなぁ、居たとしても日本に来れるとは思えない」
椅子に座ったままローラーを走らせ、壁の隅まで移動し、カレンダーの裏にあるスイッチを押す。
自慢の地下への隠し階段が現れる仕掛けだ、ちなみに爺ちゃんから、この工房を譲り受けた際、自分で改造した。
秘密の地下室に、何があるかというと、平成から令和という時代に発売されたライトノベル、500年も前のモノなのでボロボロで読めない部分が大半。
あれやこれや手を尽くし、何とか読める状態まで回復したモノから“何故か”最初から状態が良かったモノも何冊かはある。
大昔のライトノベルの現物、こんなモノを大量に所持していると魔力を管理する“マキシム社”にバレたら、どうなるか分からない。
今はそんな事は今はどうでもいい、聖剣について調べないと……
『村人Dの俺が聖剣に選ばれた件』まともに読めそうなのは、これくらいか。
この時代のライトノベルは、タイトルで目的の作品が探せるので助かる。
……ダメだ、他にも何冊か見つかったが聖剣については、メッチャ強い剣、選ばれし者にしか使えない、という情報しか出てこない。
教科書の古ラノベは、マキシム社が現代の教育用に執筆したモノ、宛てにならない。
これ以上考えても答えはでないか……やはり揶揄われたとか、冗談とか、罰ゲームの可能性が高い。
マナさんは小動物的な印象で、女子からも可愛がられている子、そんな事をすると疑いたくはないんだけどな。
まぁ明日になれば、マナさんの真意くらいは分かるはず、本当に一緒に聖剣を探すなら楽しみだ……
ん? 俺は何を楽しみにしているんだ?
~翌日~
いつもと代わらない退屈な授業が終わり帰りの支度をしていたが、誰かが目の前に立っている気配を感じる。
「リン生徒会長、何か用?」
「何か用? ではない!! 重大な校則違反だ!!」
かなりご立腹な様子で、どこから持ってきたのか、20枚ほどの瓦を拳で真っ二つに割ってみせた。
リン生徒会長は武術の達人、下手に刺激するとオレも瓦と同じ運命を辿る事になる。
「ええっと、何の事か分からないんだけど……?」
「心当たりが多すぎるからだろう? 堂本ネオウの場合、全て指摘していてはキリがないし、今日は一番デカイところからだ!!」
鋭い目つきで、オレの髪の先から褄先、カバンまで見られている。
「女子から、そんなに見られると照れるなぁ」
「ふざけるな!!」
ライトノベルだったら、これで照れてくれて時間が稼げるんだが残念。
「やはり一番問題なのはこれだ!!」
「ホウキだけど学校に持って来ちゃいけないなんて校則あったかな?」
オレは胸ポケットから生徒手帳を取り出し、ペラペラと校則を確認する。
「“ただの”ホウキであれば、持ってくる必要は無いが校則違反ではないな」
「ただのホウキだけど?」
無理と分かっているのに、無意識にしらばっくれようとしてしまった。
リン生徒会長は自信のスマホの画面をオレの眼前に向ける。
「堂本ネオウの言う“ただのホウキ”とは、人を乗せて空を飛ぶのか!?」
今朝のオレの登校風景、空飛ぶホウキに股がり、校門をくぐる姿がバッチリ動画で納められている。
「おぉ綺麗に撮れてるね? 盗撮は校則違反じゃないの?」
返事の代わりのバキッという音と共に、オレの自信作、空飛ぶホウキは真っ二つに折られてしまった。
「あぁ!! せっかく今回は上手く出来たのにぃぃぃ!!」
思わず涙が溢れ空飛ぶホウキを抱きしめるオレに、リン生徒会長が冷たい視線を送っているのが見なくても分かる。
「堂本ネオウ!! 自分が何をしたのか分かっているのか!?
魔力をエネルギーとして利用する我が国では、古のライトノベルを現実と混同しないよう、魔力を魔法の根源と勘違いさせるような利用は禁止されている!!」
「それ校則じゃないよね? 魔力に関する法律って、国じゃ無くてマキシム社が作ってるんだし影響力も、マキシム市内で……」
「国が全ての法律を作っていた大昔の話をしてどうする!!
歴史の授業を真面目に受けすぎ……いやそれは良いが影響を受けすぎた!!」
「まぁオレの夢への道として、歴史を知るのは大事な事だからねぇ」
「堂本ネオウ、その夢とはなんだ?」
「聞いても面白くないと思うけど……」
オレは自分の夢を答えようとしたのだが、背後から強烈な視線を感じたので、思わず中断し振り返った。
そこにはマナさんが話し終わるのを待つように立っていた、恐らく結構前からそこにいたのだろう。
「マナさん……どうしたの?」
「昨日約束したじゃないですか!! 私が異世界人に取られた聖剣を探してくれるって!!」
マナさんはリスのように頬を膨らませている。
ただただ可愛いが、恐らく怒りが表に出ているのだろう。
「ゴメン、ちょっと抜けてて……」
忘れていた訳で無いが、要件が要件なので本気にしていなかった。
この場合、どう相手に伝えるのが正解かオレには分からない。
「それでは行きましょう!!」
マナさんは、その小さい体から出ているとは思えない力でオレの腕を強く引いてくる。
抵抗する間もなく、そのまま教室の外に引きずり出されてしまったのだった。
「待て!! 堂本ネオウ!! まだ話は終わってないぞ!!」
というリン生徒会長の声は聞こえたが、今のオレにはどうする事も出来ないのだった。
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