14話:経歴(改稿予定あります)
マキシム社の技術顧問、雑賀スズメさんが屋敷に訪れてから数日。
オレ達、ラノベ異世界実現部は当初の危機感は薄れて、日常へと戻っていた。
「よし!! 完成だ!!」
スズメさんから貰った耐熱ケーブルを使った魔法の杖がついに完成!!
理論的には、これでファイヤーボールなど、杖自身が熱を持ってしまうような魔法も発動できるハズだ。
オレは意気揚々と屋敷の庭に向かった。
花の知識は無に等しいのだが、この屋敷の庭では、見慣れない草花が咲き誇っている。
この屋敷が、異世界から来たのであれば、庭の植物も異世界のモノだったりするのだろうか?
屋敷についての疑問は山積みなのだが、聖歌さんには聞きそびれたままだ。
魔法の杖の完成を最優先していたからね。
「ネオウさん、とうとう完成したんですか?」
庭に置いてあるテラステーブルに座っていたマナさんが、わざわざ立ち上がり質問してきた。
開発に夢中で気がつかなかったが、聖歌さんとリン生徒会長も交え、紅茶でお茶会をしていたようだ。
男子1人のオレが、ハブられてしまったのは仕方ない。
古のライトノベルでは、百合に男が挟まるのは、万死に値する大罪らしいし、オレはコーヒー派だし……はい、正直に言うと寂しいです。
「うん、これからファイヤーボールの試し打ちをしようと思ってね」
オレがファイヤーボールを実現しようと籠もっていたのは、3人とも知っていたはず。
なのだが、彼女達の表情から笑顔が消えてしまった。
「総員衝撃にそなえろーーーーー!!」
リン生徒会長が大声をあげる、いやこんな声出さなくても全員に聞こえるでしょ?
っと呆気にとられていたのだが、リアクションを取るのはまだ早かった。
何処で手に入れたのか、警察の機動隊が使うような盾を、3人は装備したのだ。
「3人とも……何やってるの?」
「堂本ネオウ、貴様に何を言っても魔法の杖とやらの開発を辞めないと諦めた。
このまえ訪れた、雑賀スズメさんは技術顧問とはいえ、マキシム社の関係者。
彼女に知られた上、開発の協力までされた以上、学校外で私に止める権限も無い。
だが爆発に巻き込まれるのは御免だ!!」
「というわけで、自分達の身は確実に護る事にしたのよ!!」
「万一に備えて、生命保険にも加入しました!!」
女子高生には似合わない、ゴテゴテのプロテクターにヘルメットまで用意してある。
今回は爆発はしないハズだけど、信用が無くて悲しい……
「そんなに怖いなら、屋敷の中にいれば?」
「「「だって気になるじゃん!!」」」
息ピッタリかよ、というかマナさんは聖歌さんが嫌いじゃなかったのか?
「じゃあ打つよ? 打つからね?」
念を押すと3人は、揃った動きで盾をガッシリと構える。
それは、さながら訓練された軍隊のようだ。
テンション上げたり怖がったり、女子って忙しいな。
とか思いつつ、期待の眼差しを向けられているので打たないわけにはいかない。
「それじゃあお披露目!!」
【ファイヤーボール】
数十メートル先にある戦闘民族が激突しそうな岩盤。
それに一直線に向かっていく火の玉……成功だ!!
少なくとも、今まででこれ程の持続時間と移動距離を保った事は無い。
やがて岩盤に激突すると、綺麗な円形のヘコみが出来上がった。
「やった!! 成功だ!!」
思わず子供のようにはしゃいでしまったが、長年の研究が身を結んだので仕方ない。
「ネオウさん!! おめでとうございます!!」
「まぁ元の世界みたいに魔法が使えたら、私はこんなモノじゃないけどね」
パチパチと惜しみの無い拍手を送ってくれるマナさんと、何故か得意気にしている聖歌さん。
「まぁあのマキシム社の研究員から助言を受けたんだ、当然の結果だな」
その横で、全く同じポーズで得意気にするリン生徒会長。
この人に関しては、どうして得意気なのか本当に分からない。
オレは感情が表に出て苦笑いしていたと思うが、それに構わず話しを続けた。
「そう、その雑賀スズメについてだが私なりに色々と調べてみたんだ」
カバンから取り出されてのは、大量のレポート用紙。
机の上に乗せるとドスッっと鈍い音がした。
この屋敷って、低いとはいえ山の上なんだけど、女子が手提げカバンに入れて持ち歩いてたのコレ?
「いっぱい調べられたんですね」
食い入るように見つめるマナさん。
聖歌さんも紙を眺めているが、表情からして日本語は読めないのだろう。
「読む気も失せるような量になってしまったが、簡単に彼女の経歴を説明すると、雑賀スズメ13歳、5歳の頃にはマキシム社の技術顧問を務めていたらしい」
「「「ごっ5歳!?」」」
マナさんと聖歌さんの女子2人に、オレの声もハモってしまう。
「っていうか13歳だったの!? まぁ年上にも年下にも見える子だったけど」
「いわゆる天才という奴だな、過去を遡って調べてみれば、とてつもない経歴だ、数年で飛躍的に技術が進化したホログラムが我々一般人でも分かる彼女の研究か」
“一般人”というワードが出た瞬間、女子3人の視線がオレに向いた。
魔法の杖やらを発明してるのは、一般人から除外と言いたいのだろうか?
「お前なら分かるのはあるか?」と言わんばかりに大量のレポートがオレに向けられた。
「オレも自分が造りたいモノを造ってるだけだし研究や最新技術に詳しい訳じゃ……」
と言いながらタイトルだけに目を通していったが、やはりチンプンカンプン。
なのだが1つだけ、気になるモノを見つけた。
「これは……異世界に関する論文!?」
慌てて目を通すが、気持ちの焦りもあるのか内容は理解出来ない。
この論文は、約500年前の科学者、大道竜一という人物の研究を元にしているらしい。
その要約の部分だけは、理解することが出来た。
「ネオウさん、何か分かりましたか?」
「さすがに一目で分かるようなモノではないけど、500年前に異世界の存在を証明した科学者がいたみたいだね」
「異世界の存在だと!? 現代でもそんなもの……」
リン生徒会長の視界に聖歌さんが入って来たのだろう。
言葉が詰まってしまった、まぁ彼女も謎が多すぎるし、異世界人が1人いても、異世界の存在の証明になるかは微妙な所だろう。
その聖歌さんが、文字は読めないだろうが、論文を見つめる。
「でも、そんな前に発見されたのに、この世界で異世界の存在が空想のままなのは何で?」
「そこまでは分からないけど……空を飛ぶ車とかも、大昔から言われてて未だに一般化されてないし、そんなモノなんじゃない?」
この例えにマナさんとリン生徒会長は納得したようだが、質問主の聖歌さんは首を傾げている。
ずっとここのいいたら、車なんて見る事ないよね?
「ねぇ、こっちの古い紙にはリアルな絵が書いてあるけど」
聖歌さんが見つけてきたのは写真だ、異世界、少なくとも彼女のいた世界には無いのだろう、その写真には日付がメモされていた。
「すっごい、2020年の町並みだ!!」
「それって500年も前? ……今とあまり変わらなそうね」
「そう言われると……この頃のエネルギーは電力やガソリンで今の魔力とは違うんだけど……」
江戸時代から令和まで約150年で文明は移り変わってるけど、石器時代とかやたら長いし……人類の進歩なんてそんなモノなんじゃ?
今まで考えた事も無かったが、無限に近いエネルギーが手に入ったなら、もっと凄い進歩があってもいいハズだ。
なんて考え込もうとした所で、屋敷の扉が勢いよく開けられる。
「お主ら!! 悪いが立ち退いてもらうぞ!!」
予想はしていたが、来訪者は雑賀スズメさんだった。
「次会うときは容赦しない」彼女の言葉が脳裏をよぎる。
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