13話:推測
空腹で森を彷徨い聖歌さんの屋敷にたどり着いたという雑賀スズメさん。
彼女はオレの腰に下げていた木の棒を一目で魔法の杖だと見破り、バリアまで発動させてみせた。
その正体は異世界の存在を包み隠そうとしている……ってのはオレの推測でしか無いが、いずれにせよ厳しい検閲を行っているマキシム社の技術顧問。
技術顧問って事は正式な社員じゃないはずだが、それでもバレてしまったのはマズい。
「これは……とても危険じゃな」
スズメさんは鋭い眼光を向け、ズイズイと近寄って来る。
プレッシャーに負け、後ずさりしていると、そのまま壁に背中が付き逃げ場が無くなってしまった。
「この大惨事は何じゃ!?」
「え?」
オレの真後ろを指さすスズメさん、そこは部屋のドアを開けっぱなしにしていた工房だった。
えぇっと実験に失敗して、片づけて……魔法の杖以上に見られてマズいモノは無い……ハズだ。
「この部屋……壁や床が酷い焦げじゃ、貴様の発明した珍妙な杖の構造を考えると……火でも起こせるようにしたが失敗して爆発でもさせたか?」
魔法の杖を分解もせず、そこまで見破るなんて、やっぱマキシム社の技術顧問は、オレとは比べものにならない。
こんな状況じゃなきゃアドバイスとか話を聞きたい所だ。
「こんな爆発を何度も起こしてたら、命が幾つあっても足りんぞ?」
そう言いながらスズメさんは魔法の杖の分解を始めた、
オレは魔法の杖と名付けているが、内部は思いっきり機械仕掛け。
魔力を動力にしてるけど、バラせば基盤が向きだしになり、電力を使用していた時代の製品と何ら変わらない……残念ながら。
「バリアはちゃんと開発出来たからね、爆発は慣れっこだよ」
「なるほどのぉ」
今更言い逃れは出来ないだろうが、息を飲みながら慎重に質問に答える。
スズメさんは、魔法の杖から目を離さず、オレの方を見向きもしない。
「うぬ、こりゃ炎を出すのは無理じゃのぉ、ちなみに雷もダメじゃ、爆発するのが目に見えておる」
「なっなんで!? 原因まで分かったの?」
何回作り直しても同じ結果だったのに、原因を一瞬で解明した?
それでこそマキシム社の技術顧問なのだろうが、オレは彼女の立場が好奇心で頭から飛んでしまった。
「うぬ、お主らは命の恩人じゃ、こんな事で良ければ手を貸そう」
その言葉に、リン生徒会長がやたら大きな安堵のため息を吐いた。
オレは我に返り、魔法の杖をマキシム社の人間に見られる危険性を思い出したが今更遅い。
というかスズメさんの方から協力を申し出てくれたという事は、思ったより問題ではないのだろうか?
「それで爆発の原因は何なの?」
「単純に配線のショートじゃな、バリアと言ったか?
魔力を凝固させたりするのは問題ないが、炎はそもそも熱を持っておるからな。
耐えきれずにボンじゃ」
「なるほど……そういえば成功した発明品は、全部熱は生まないようなモノだけだ」
「ちょうど、マキシム社新製品の耐熱ケーブルがある、これは2000度の高温に耐えられるので使うとよいぞ」
「2000度って……何に使うのさ……ってコレくれるの!?」
「そう言っておるじゃろ? 何こっちは命を救われたでの、安いもんじゃ。
まぁ開発したのはワシじゃし、そう気にせんで受け取ってくれ」
「ありがとう!!」
一時はどうなる事かと思ったが、何とかなった。
いや、それどころかオレの発明が何歩も前進する手がかりまで、今は両手を挙げて喜ぶことにしよう。
「しかし、これ程のモノを発明できながら、単純な原因に気が突かんとはのぉ」
「あはは、魔力を動力にする発明品は色々作ったけど、配線は今まで適当にやってたかも」
「いくら魔力が無限のエネルギーと言っても、常に満タンという訳ではない。
配線は燃費やら出力にも影響するので、完成品も見直す事をオススメするぞ」
「参考になるよ」
オレは言われたことを速攻でメモに取った。
ちなみに、メモはアナログ派だ。
「しかし、その様子だと、この屋敷を造ったのは、お主ではなさそうじゃのう」
「流石に家は建てれないよ」
「お主は不思議に思わんのか? これ程の爆発を起こしながら、部屋の壁が焦げた程度」
「本とかはバリアで守れるようにしてあるんだけどね」
「……この屋敷、木造じゃぞ?」
「あっ……」
さっきもそうだったがオレは単純な事にほど気がつかないらしい。
この屋敷に来るまで使っていた、自宅の工房は鉄筋コンクリート、本や家具さえ守れれば大きな火事にはならない。
しかし、木造の屋敷で爆発したのに、火が燃え広がらないのは妙だ。
「堂本ネオウ!!」
思考錯誤する間もなく、リン生徒会長の鉄拳が、オレの後頭部に炸裂する。
痛みで悶絶していた所にマナさんが視界に入ったが、いつもは天使の微笑みの彼女も、ゴミを見る目……いやジト目でオレを見ている。
うん一歩間違えば、いや本当なら間違わなくても大惨事だ。
今回は反省しよう、本当に……
「しかし、この建物全体に魔力はあるのは分かっておったが妙じゃのぉ」
スズメさんは羅針盤を取り出し、左右上下に掲げている。
「来るたびに霧が濃かったり、不思議が一杯で楽しいですよ?」
良かった、マナさんの表情が天使の笑みに戻った!!
ってそんな事を言っている場合じゃない。
「オレの発明品以外にも気がついた事があるの?」
「うぬ、魔力とは魔法石から供給されるものじゃ。
なので建物だろうと道具だろうと、魔法石が設置されている場所が1番魔力が高くなる。
しかしのぉ、この建物は何処を調べても検出される魔力が同じなのじゃ」
それはオレも気がついていた、仮説はいくつか立ててあるけど、スズメさんの頭脳はオレの比ではない。
もしかすると、答えを導き出した可能性がある。
協力的で忘れそうになるが、彼女はマキシム社の人間、聖歌さんが異世界の人間とバレるのが1番マズい。
そういえば聖歌さんは……いない?
正体がバレたらマズいのは、彼女も分かっているはず。
ボロが出る前に、部屋に身を隠したか?
聖歌さんの部屋の方へ目を向けると、扉を拳1つ分ほど開けてコチラの様子を息を殺しながら見守っていた。
助かった……彼女に聞いておけば良かったんだけど、オレの立てた仮説の最有力候補は、聖歌さんが自身の屋敷と共に、この世界に転移したということだ。
まぁ聖歌さんが住んでいる屋敷をオレ達が借りてるんだしね。
「この建物は異世界からやってきた、もしくは霧が異世界へ続く入り口だったのかもしれんのぉ」
覚悟はしていたけど……見破られた……
「色々と面白いモノも見れたし、命も救われた、何よりワシと行動していた100人近いマキシム社の研究員は、ここに来れんかった、今日は何も見なかった事としておこう」
そう言い残し、彼女は屋敷の出口の扉を開けた。
彼女の目には、オレの建てた看板が写っているハズだ。
「だが次は容赦できんぞ? ラノベ異世界実現部の諸君」
屋敷を立ち去る彼女の背中に、冷たい何かを感じた。
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