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底辺魔物と底辺テイマー  作者: @aozora
第四節 再びの城塞都市、新たな旅の始まり

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第142話 下水道のスライム討伐、それは底辺冒険者の基本依頼 (1)

多くの冒険者が集う王都冒険者ギルド本部受付ホール。そこでは金級冒険者シャベルの発言が物議を醸し、騒然とした状況を作り出していた。


「お前らうるせえぞ、別にテイマーが金級冒険者になったからって何の問題もねえだろうが!! まぁ金級冒険者がスライム退治の依頼を受けたって事で騒いだって気持ちは分からなくもねえが、それだってシャベルの自由だ、お前らがとやかく騒ぐ問題じゃねぇ。

大体金級冒険者は冒険者ギルドがその冒険者の働きや人格を精査し決めるもんだ、その決定に異議を唱えるってのは冒険者ギルドに喧嘩を売る行為だって事が分かってんだろうな、あん?」

「いや、でも、エステバンさん。いくらテイマーっていっても<魔物の友>持ちとなれば話は別ですよ。エステバンさんは<魔物の友>ってスキルがなんて呼ばれているのか知ってるんですか?」


騒ぎだす冒険者に白金級冒険者エステバンが声を上げるも、透かさず反論する冒険者たちに顔をしかめる。


「ん? あ~、あれだ、なんかこう敵がズババババッて倒れちまうよな、スゲースキルなんだろう?」

「イヤイヤイヤ、全然違いますから、むしろ真逆です。この<魔物の友>ってスキルを授かったテイマーは魔物のテイム数制限がない代わりに、底辺魔物の中でも最下層魔物と呼ばれるスライムとビッグワームしか<テイム>出来なくなっちまうんですよ」


一人の冒険者の言葉に「はぁ? いや、それ本当なのか?」と聞き返すエステバン。そんな彼に周囲の冒険者が頷きで肯定の意を示す。


「なぁシャベル、こいつらの言ってる事って本当か?」

「あぁ、正確ではないが概ねその認識で間違いないだろうな。だがやろうと思えばグラスウルフや魔馬もテイム出来るぞ? ちょっと方法が普通のテイマーとは違うが、やり方自体は別に秘匿されている訳じゃないしな」

シャベルの言葉に「なんだよ、驚かすんじゃねえよ」と周囲の冒険者を睨みつけるエステバン。


「イヤイヤイヤ、嘘言ってんじゃねえよ、どうやったらハズレ職業の<魔物の友>持ちテイマーがグラスウルフや魔馬を<テイム>出来るってんだよ。手前がハズレ職を引いたからって口から出まかせぬかしてんじゃねえぞ!?」

「そうだそうだ、このインチキ野郎!! 大体テイマーが金級冒険者って時点でふざけてるんだよ、とっととギルドカードを返上しやがれ!!」


だが騒ぎは収まるどころかさらに過熱し、受付職員の報告を受けたギルド長自らが駆け付けるまでに発展するのであった。


「それで、一体何が何だというんだ、エステバン、説明しろ!!」

そう言いギロリと睨みつけるギルド長に、「何で俺が睨まれないといけねえんだよ」と不満を漏らすエステバン。


「そんなもの普段からお前が騒ぎを起こしまくるからに決まってるだろうが!! 俺がお前の尻拭いにどれだけ頭を下げまくってるのか分からんのか!! いいからさっさと説明しろ!」

怒鳴り声を上げるギルド長に「へいへい、お世話になっておりますギルド長」と肩を竦めながら、エステバンは事の経緯を説明するのであった。


「はぁ、そこの金級冒険者シャベルが王都の下水道に溢れるスライム見たさにスライム退治の依頼を受けようとしたら周りが騒ぎだして、シャベルが<魔物の友>持ちのテイマーと知ってさらに収拾がつかなくなったと。

お前らは授けの儀が終わったばかりの見習い冒険者のガキかー!!

金級冒険者になる事と職業に直接の関係がある訳ねえだろうが!! 聖騎士だろうと賢者だろうと、仕事の出来ねえ奴は上にあげねえんだよ、このシャベルが金級冒険者になれたのはただ仕事が出来たってだけの話だ、くだらねえことで騒ぐ暇があるならシャベルに負けねえくらいギルドに貢献してみやがれ!!」


轟く怒声、全くの正論である為一言も言い返せない冒険者たち。


「で、でもギルド長、コイツは<魔物の友>持ちのテイマーですよ? スライムとビッグワームしかテイム出来ない。そんな奴が金級冒険者っておかしいでしょうよ」

だが冒険者たちが納得できるかといえば話は違う。戦闘職の底辺であるテイマー、更に言えばテイマーの外れスキルである<魔物の友>を持った残念テイマーが強いはずもなく、そんな奴が魔物との戦いを生業とした冒険者の憧れてある金級冒険者になるなど許すわけにはいかない。


「模擬戦だ、模擬戦で決着を付けようじゃありませんか。冒険者なら自分の主張を模擬戦で示す、これが冒険者ギルドのやり方でしょうが!!」

「「「「「そうだそうだ、模擬戦だ!!」」」」」

騒ぎだす周囲の冒険者たち、そんな彼らを冷ややかな目で見詰めるギルド長。


「そうか、模擬戦か。こんな大勢に正面から模擬戦を求められる日が来るとは、人間生きてるといろんなことがあるもんだな。久々に身体を動かすとなると手加減が難しいが、まぁ頑張ってみるか。死んじまったら勘弁だ、出来るだけ努力はする」

そう言い獰猛な笑みを浮かべるギルド長に、一斉に顔色を青くする冒険者たち。


「ちっ、ちっ、ちっ、違います、模擬戦の相手はあの金級冒険者シャベルです、何で俺たちとギルド長の模擬戦って話になるんですか!!」

「いや、お前たちは冒険者ギルドがこのシャベルという冒険者を金級冒険者として認定した事が気に食わないんだろう? 金級冒険者の認定を最終的に承認するのはこの国じゃ王都ギルド本部のギルド長であるこの俺だ。だったらその責任の一切は俺にある。

つまりだ、おまえたちはこの俺の決定が気に入らない、冒険者なら自分の主張を模擬戦で示す事が冒険者ギルドのやり方と言っている。だったら俺が受けるしかないだろう。

俺も忙しいんでな、直ぐにやるぞ、今すぐ全員訓練場に向かえ!!」


「「「「「すみませんでした、俺たちが間違っていました!! シャベルさんは立派な金級冒険者、俺たちの憧れです!!」」」」」

その場の冒険者が皆して頭を下げる。その額には冷や汗が浮かび、早くこの状況が終わる事を心から祈る。

ギルド長はそんな冒険者たちの姿を冷ややかな目で見つめると、「シャベル、ウチの馬鹿どもがすまなかったな。下水道のスライム退治の手続きはすぐに済ませてやる。それと少し話がある、ギルド長執務室まで来てくれるか?」とシャベルに言葉を掛け、受付職員に指示を出してからギルド長執務室に戻っていくのであった。


「さっきはウチの連中がすまなかった、まぁここに座ってくれ」

ギルド長は執務室の来客用をソファーの前で頭を下げると、シャベルに席に着くよう言葉を向ける。


「いや、特に気にしてはいない、いつものことだからな。それよりもギルド長自らが仲裁に入ってくれた事の方が驚きだ、こちらこそ手間をかけた、礼を言う」

シャベルはギルド長に感謝の言葉を返すと、勧められるがままソファーに腰を下ろすのだった。


「・・・で、何だって俺まで呼ばれたんだ? 二人の間で解決したんだったら俺はもう関係ないよな?」

「そう言うな、エステバン。お前にはちょっと頼みがあるから呼んだんだよ。なに、大した事じゃない。このシャベルが下水道のスライム退治に向かうのに付き添ってやってほしいってだけだ。

エステバンも見てただろう、ウチの馬鹿どもの様子を。別にシャベル一人を向かわせたとしても問題はないんだろうが、難癖をつけられたシャベルが反撃した時騒ぎが大きくなる可能性が高くてな。

この男は大人しそうな顔をしているが、敵対者に対して容赦がない。“スライム使いシャベル”、ダンジョン都市でのシャベルの二つ名だが、シャベルの攻撃方法は結構えげつないぞ? 大量のスライムで敵を包み込んで窒息させるんだ。スライムに覆われた連中は息が出来ず藻掻き苦しむも、どうする事も出来ずおぼれ死ぬ、そんな惨劇を王都民の前で行わせるわけにはいかないんだよ。

エステバンにやって欲しい事はシャベルに絡む連中を威嚇して遠ざけさせることだ、お前が王都の冒険者をシャベルから守るんだ」


エステバンは“またギルド長が阿呆な事を言ってやがる”と呆れるも、先程の受付ホールの冒険者たちの姿を思い出し、苦笑いを浮かべる。


「シャベル、すまないがそういう事で頼めるか? エステバンはおせっかい焼きのところもあるが、一流の冒険者である事は保証しよう」

「いや、ギルド長の心遣いに心から感謝する。流石はミゲール王国の冒険者を束ねる王都冒険者ギルド本部のギルド長だ、人としての器が違う」


「ハハハ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。それじゃ褒められついでに一つ聞いてみたい事があったんだが、ライド伯爵領のダンジョンでエリクサーを発見して薬師ギルドに持ち込んだのがシャベルだと聞いたんだが、どうして冒険者ギルドではなく薬師ギルドに持ち込んだのか教えてもらってもいいか?

そうした高額な値の付きそうなドロップアイテムは冒険者ギルドに預け、王都でオークションにかけるって流れが一般的だと思うんだが?」

ギルド長から話のついでとばかりに向けられた問い掛けに、「あぁ、その事か」と返事をするシャベル。


「おそらくギルド長はライド伯爵領セルロイド支部のゼジルギルド長から通信の魔道具か何かで話を聞いているのかもしれないが、たしかにダンジョンで発見したエリクサーを薬師ギルドに持ち込んだのは俺だな。

理由は単純、死にたくないからだ。

ギルド長はそうした高額な値の付くドロップアイテムを冒険者ギルドに持ち込む者がどういった冒険者だか知ってるか?」


シャベルからの問い掛けにしばらく考え込んだギルド長は、「深層探索者のことか?」と聞き返す。


「そうだな、四十階層の更に先、最前線と呼ばれる六十階層台を探索する冒険者たち、彼らの齎すダンジョンドロップアイテムはオークションの目玉出品物として高額で落札されていく。そんな彼らは組織を作り、多くの冒険者と共に日々ダンジョンの最前線に挑み続けている。

彼らはダンジョン都市でも一目置かれるパーティーであり、彼らの発見を羨む者はいても、彼らに手を出そうだなんて命知らずはダンジョン都市には存在しない。

ではその発見者がテイマーだったら? 残念スキル<魔物の友>持ちの残念テイマー、“スライム使い”の二つ名もエリクサーの魅力の前では何の効果もなかったよ。

現に今回王都に来る際にはダンジョン都市を過ぎたところで盗賊冒険者の集団に街道上で取り囲まれた、ライド伯爵家の馬車に乗っていたにもかかわらずだ。

そんな俺が素直に冒険者ギルドにエリクサーを持ち込んだらどうなると思う? 考えるまでもないだろう」


シャベルの言葉に唯々頭を抱えるギルド長、そんな阿呆な理由で大きな利益を逃したという事実に唸り声しか出ない。そのような事は起きないと否定の言葉を出したくとも、冒険者共が阿呆な行動をとるという事は先程受付ホールで証明してしまったばかりである。


「あ~うん、それじゃギルド長、俺たちはちょっくら王都下水管理局に行ってくるんで。いや~、下水道のスライム退治なんざ見習い冒険者の時以来だからな、懐かしいな~」

「いろいろ世話になった、それでは失礼する」


ソファーから立ち上がると、一礼をしギルド長執務室を後にするシャベルとエステバン。ギルド長は疲れた顔をしながら、「あぁ、気を付けて行ってこい」と声を掛けることしか出来ないのであった。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 流石王都だけあって、シャベルが言うようにギルド長もまともな人で良かった…。エステバンさんはあんまり理解出来てなかったみたいですが、目の前でスライム窒息戦法を見た時にどんな顔をする…
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