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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第69層目

 頭痛が酷くて眠っていたら5日も経過してた件。

 ……なんて冗談が思いつくくらいには回復したから、多分大丈夫だろ。


「とりあえず現状は理解したっすけど、別に40層の回廊で待機でも良かったんじゃないっすか?」


「それに関しては特に理由はない」

「強いて言うとするならば、あそこでビーチチェアに寝っ転がってるホオヅキが理由だな」


 姉御が親指で指差した先には、ビーチチェアに寝っ転がって優雅にくつろいでいるホオヅキさんと、その傍らで分身たちと一緒にコンロへ火を起こしたり、食材の準備をしたりしているクチナシさんがいた。


 俺が言えたことじゃないけど、お二人さんダンジョンで海辺のバーベキューしようとしてません???


「ホオヅキさんがね、ダンジョンから出たらきっと打ち上げどころじゃないだろうから、後で食費とか払うからバーベキューしようってね」


「なるほどな。それで今こうなってるわけか……」


「うん。それに1号がね、そろそろカルマが起きるから起こしてあげてって言ったのもあるね」


 はーん、1号がねぇ……。


 そういう気づかいができるのは2号な気もするが、俺と一番近しい1号だから俺が回復したタイミングが分かったのかね。


「まぁそういうことだ。起きたならカルマも手伝え。もれなく私らの中でまともに料理をするのはお前くらいなんだ」

「クチナシのやつもたまに料理をするらしいが、基本はクランの寮母さんが作ってくれているらしいからな。カルマの方が得意だろ」

「それに結局チェストから出していい食材の判断とかもあるだろうしな」


「一応病み上がりなんすけどねぇ。了解っす」


「ふん、お寝坊さんには丁度いい罰だろう」


 姉御はそう言うと、ホオヅキさんの隣に置いてあるビーチチェアへ寝っ転がってしまった。


「あれでも僕の次くらいにカルマのことを心配してたんだよ?」


「あぁ、姉御は優しいからな。有り難い限りだ」

「つーこって、せっかくなら美味い飯食おうぜ」


「そうだね。僕は3号と一緒に火の番とご飯炊いとくから任せたよ」


「おうさ、任せとけ」


 一足先に相棒は3号の元へ向かい、チェストから飲料水を貯水しているタンクを取り出して、飯盒の準備を始めた。


 その姿を横目に、俺はチェストの中へ格納している食材を確認する。


 普段から買いだめをしているとはいえ、バーベキューに適した食材となると意外とそこまでの物はないんだよな……。


 強いて言うなら、オヤジさんが昔から懇意にしていた肉屋のおっちゃんが今も俺らによくしてくれるから、それなりに質のいい肉塊があるのが救いか。


 そんなことを考えながら歩いていると、気づけば調理場まで来ていた。


「カルマさん。もう大丈夫ですか?」


「はい、ご迷惑をおかけしましたがもう大丈夫っす」

「2号、今どんな感じだ?」


 こちらに背を向けて調理台へ向かっていた2号が振り返り、ニヤリと笑いながら横へ移動する。


 2号に隠れていた台の上では、先ほど思い浮かべていた肉塊をちょうど磨いている最中だった。

 流石2号。こういう時の選択肢が同じなのは助かるぜ。


「さんきゅ。それじゃあそのまま肉を磨いて、焼肉サイズにカットを頼むぜ」


「クチナシさんの方は……野菜を切ってくれたんすね。助かるっす」


「いえいえ。むしろ野菜を切ることくらいしかできないので、この5日間は2号さんにほぼ任せっきりになってしまっていて……」


「それも十分助けになるっすよ。ということで、そのまま野菜を切ってもらっていいっすか?」

「俺はその間にタレと汁物を作っとくので」


「分かりました」


 さてさて、それじゃあサクッと用意しますか。



 ーーーーー



 3人で役割分担しながら食材の準備を進め、ご飯が炊き上がる頃にはなんとか全てを用意することができた。


 今は全員の手元へ飲み物も行き渡り、そろそろ打ち上げと洒落こもうかというところだ。


「あー、それじゃあ酒がないのは少し残念だが、モンパニの攻略及びそれに伴う溢れをダンジョン内で阻止できたことを祝って打ち上げといこうか」

「一時はうちのお馬鹿コンビが離反したので暗雲が立ち込めたが、結果としては先行して防衛戦を続けておいてくれたおかげでなんとかなった」

「よくやったな、カルマ、サズキ」


「うっす」

「はい」


「クチナシとホオヅキもよく私に着いてきてくれた。とても助かった」


「冒険者として当然のことをしただけよ」

「そうそう、それに大変そうな友達はほっとけないよー!」


「そうか、ありがとう」

「長々と話していても仕方ないか。それじゃあ今日の食事代は色を付けてカルマに後ほど私から払うから、今日は思う存分飲んで食べてくれ」


「では、乾杯」


「「「「かんぱーい!」」」」


 姉御が色々語っている間に、2号が準備をサボっていた1号を捕まえて色々焼かせていたため、取り分けられていた料理をササッと皿へ盛り付ける。


「そういやカルマ、今回のお肉って」


「あぁ、防衛戦前に色々買い出しへ行った時に、肉屋のおっちゃんがくれた秘蔵の肉だな」

「確か陸牛(ランドオックス)のロースだったかな」


「あぁ、やっぱり……」

「たぶん秋音先輩そのことを知らないよね」


「恐らくな。それがどうかしたか?」


「いやほら、僕らは常連なのとチェスト入手以降たくさん買っていくから割り引いてくれているけど、モンスター素材のお肉だから普通にいいお値段になるじゃない?」

「それに色を付けるって言ったらねぇ……秋音先輩びっくりするんじゃないかな」


「まぁそこら辺は大見得を切った姉御が悪いってことで」


「……カルマ、まだパーティー組まされかけたこと根に持ってるでしょ」


「さぁな。そんなことよりマジでこの肉旨いから食べてみろよ!」


 そそ、根になんて持ってないさ。

 ただちょーっとだけ、今、美味しいお高い肉が食べたかっただけさ!


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