第43層目
粗方今回の騒動の原因がわかったので、話題転換がてらダンジョン内の様子を先生に伝え、逆に姉御がこの1週間何をしていたかを聞いた。
先生はこちらが間引いた量に戦慄し、俺たちは姉御がしでかしたことの大きさにドン引きした。
いやまぁね。
片や美人女優に負けない爆美女で、片やそこら辺のアイドルでも太刀打ちできない美青年。
そんな2人にワンチャンお近付きになれる…!なんてチャンスが来たら、一般人ということもあってミーハー達が軽く暴走するのは分からなくないけどさ。
日本全国からEランク冒険者が愛知に集まりつつあるって何???
おたくら、ワンチャンにかけすぎでは???
冒険者が各地のダンジョンに行きやすいようにって、Eランクからは公共交通機関の値段が半額になるとはいえ、いくらなんでもフッ軽すぎるだろ。
それに今回の騒動がお盆期間とも重なるためか、都市部のホテルの価格が高騰していたり、一般の方々が帰省時に苦労することになりそうだったりと、割と社会問題に発展しつつあるらしい。
いやー、これどうやって収拾をつけるんだ?
俺は絶対手伝わねぇぞ、姉御。
情報収集を手伝ってくれていた2号と目を合わせて、お互いの思考を同期する。
向こうも面倒事はごめんと大きく頷いた。
よし、これで分身ズを駆り出される事態になっても逃げられる。
…必然的に呼び出された1号は何してるかって?
1号は今、カットパイナップルを食べながら携帯用ゲーム機で遊んでる。
あっ、台パンした。ろくでもない負け方したな、ドンマイ。
にしても、やっぱとっとと身を固めるためにクランを創りたいな。
今回の掃討戦に1枚噛ませろってDMに紛れて、それなりの数クラン参加への案内とかが来てる。
中には恐喝紛いのものもあるので、前後の流れが表示されるようにスクショを撮って、ついでにアカウントと公式サイトの魚拓も取る。
アンタらは然るべき処置をさせてもらうからな。
そんな事を考えながら2号と収集した情報を纏めていると、脱衣場のドアが開く気配がする。
「カルマー、お風呂いいよー」
「ほいよー!」
声に反応して振り返れば、ミルクティー片手に相棒が風呂から上がってきていた。
んー、俺はこれに見慣れてるからなんとも思わないが、この姿をSNSに投稿したら今回の騒動よりも酷いことになりそうだ。
「相棒が風呂入ってる間に2号とこの一週間の騒動を調べて纏めといたから、俺が風呂入ってる間に確認しといてくれ」
「ん、分かったよ。ありがとね、カルマ、2号」
「SNS系は俺の方が得意だからな、持ちつ持たれつってやつさ。んじゃ、風呂入ってくる」
「行ってらっしゃい」
ーーーーー
赤コーラ片手に風呂から上がると、2号が3号を呼んで欲しいとアピールする。
割と頻繁に分身達を出す都合上、それなりに広い部屋にしているから1人増えるくらいなんら問題ない。
サクッと3号を創造すると呼び出された3号は2号と手短にやり取りをして、あれからさらに負け込んだのか、燃え尽きて天井を見上げている1号を担ぎ上げて風呂場へと向かって行った。
…お前らも風呂入るんね。
さっき思考同期させた時にそんな気がしてたから、湯船の栓は抜いてねぇけどよ。
「2号ー、温くなってっから追い焚きしてから入れよー」
よし、聞こえてればあとはなんとかするだろ。
「おかえりカルマ、秋音先輩から電話来てたよ」
「おっ、それは良かった。んで、姉御はなんて?」
「とりあえず僕たちに迷惑をかけたことを謝罪してから、この1週間で集めた情報をまとめたいから、3日くらい頂戴ってさ」
「騒動に関してはハルさんのところのクランとDEAが動いてくれるみたいだから、1、2日もすれば収まるだろうって」
「ふーん、逆に言えば2日くらいこのホテルに缶詰ってわけか」
「そうなるね」
英雄模倣で隠密特化にすれば、空間魔法も合わせて俺は脱出できるだろうが、そうなると相棒を残す事になる。
相棒にだけ窮屈な生活をさせる気はサラサラないので、ここは大人しく突発的な休暇を満喫するとするか。
「幸いと言っちゃあなんだが、食べ物も遊ぶものもチェストの中には山ほどある。なんなら必要な物は姉御に連絡してチェストに格納させればいい」
「えぇ…」
「元はと言っちゃ姉御の見込みの甘さもあるからな。それくらいしてもらってもいいだろ」
「というか、先生が断るのを許さんさ」
「たしかに、万城目先生はこういうとこキッチリしてるからそうだろうね」
「だろ?という事でこの突発的な休暇を楽しもーぜ」
「ふふっ、そうだね。積読しちゃってる本いっぱい読もーっと」
「いいねぇ、俺は分身たちと積みゲー消化するかな」
「Eランクに昇格前は勉強漬けで、昇格後はダンジョン漬けだったからね。ちょうど良いリフレッシュタイミングだったかもね」
「そうだな。一息ついて墓参り済ませたら姉御の話聞こうぜ」
「うん」
つーこって、少し窮屈ではあるがお盆休みとしゃれこみますか!
分身たちが戻ってきたら1号のゲーム機をテレビに繋いで大乱闘するぞー!!!




