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幻月蝶  作者: こうえつ
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流れる日常

@クマ「あのさ、その手の事件は印象的だけど、件数の全体数は少ないだろ? 交通事故なんかに比べてクマ」

@ゆき「クマ、いちいち語尾にクマつけなくていいよ(笑)。結論として最近、陰惨で残酷な事件は増えてきたとは言えるけど、その割合は死亡原因としては多くない。陰惨な事件が起れば、大きくニュースで取り上げられるから印象を強く持つだけかな」

@フェイト「三か月前は200件の陰惨な事件があった。今月九月は3000件を越える。そしてこの数はこれからも加速度的に増えていく」

@ゆき「年間の殺人事件全体で約千人程度なのに。この数ヶ月で幻月病の事件がそれを越すって? しかも、その数はもっと増えていく?」

@クマ「そんな馬鹿な! どこのニュースでもそんな事件やってないクマ!」


 今月3000件の凶悪犯罪? あまりの数字に、私もフェイトへ返信してみようと思ったが時間だった。ため息をつきスマホを消して、準備を始める。

 リプが数個表示され、その後は他人のツイートが続き、タイムラインは流れ始める。早い流れとともに、私の痕跡は画面から消えていく。

 洗面所に向い化粧を施す、返って机の上に置いてあるバックに今まで使っていたスマホをしまい、部屋の照明を消す、部屋は微かな赤い小さなランプが灯り、2DKの部屋がほんのりと映し出される。とても少女とは呼べない私の、特に贅沢でもなく、されとて困ってもいない、そんな今を表現している一人暮らしの部屋。

 テレビはドラマが嫌いで、もっぱら報道番組と旅行ものを見る。ニュースにはコメンテーターはいらないと思いながら見ている。パソコンも持っているけれど、がっちりとネットに入り込むのは疲れてしまう。情報の検索や書き込み、仕事以外のものはスマホとパッドを使えば十分に事が足りている。

 がっつりと懸命に何かをやるのは好みじゃない。仕事も男も、自分ではいい線を行っていると思う。勤め先は広告系の上場企業だし、モテないわけでもない。SNSでつぶやき、会ったこともない、不特定多数な常連の知り合いと真面目に話したり。人に束縛されるのは大嫌い。でも淋しい時には誰かに一緒にいて欲しい。

 相反する感情と行動、今の時代の普通のありきたりの女。それが私。誰にでもある人間の表と裏、その境が曖昧なのは私の特徴らしいが。


 前の彼氏と別れて半年くらいになるが、淋しいとか、惜しいことをしたとは全く思っていない。三十歳を過ぎた今、全てに理想は高くなる。今まで付き合った男の中にも、理想に近い人がいなかったわけじゃない。でも恋愛関係が進んでいくと、相手との距離が近くなればなる程に、面倒だという気持ちが強くなってしまう。

(なんで、男は女を束縛するのが好きなんだろう?)

 お互いが会いたい時にだけ一緒にいるのが一番いいと思うのに。

 関係が深まると、少し連絡を入れないというだけで、男は必ずこんなことを言い出す。

「どうした? 何か心配事でもあるのか? 会社の事か?」

(何言っているの? あんたの事なんだけど)

 さてどう返事をしようかと迷っていると、ほぼ確実にこんな言葉が続く。

「何でも相談してくれよ。俺はおまえの彼氏なんだ」

 “愛しているから”と便利な言葉もつける場合もある。

 それならばと、お言葉に甘えて、私は彼氏に向かって口を開く。

「少し距離を置かない? 毎日会うのは疲れるの」

 まあ驚くね。私の素直な気持ちは男性にはかなりキツイらしい。

 それで彼氏からの返答はこんな感じになる。

「怜子、俺のことが嫌いになったのか? 昨日までは二人で会っても、そんなこと言わなかっただろう?」

 慣れたから本音を言っているの。最初から面倒だとは思っていたけどね。


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