↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/52

第33話 星のしずく亭

 結局のところ、ルーラン光使様の調査の手伝いをする羽目になってしまった。調査の開始はさっそく今日の夜から。夕食後に光使様が俺たちの宿まで来ることになっている。


 ゲル子と花子については留守番をさせることにした。連れて行けばそれなりに役立つかもしれないが、光使様の前で万が一魔物とばれるようなことがあってはまずい。光使様も、「ご婦人を危険な目にあわせるわけにはいかない」と言ってくれたんだが・・・・・・それって、俺は危険な目にあうかもしれないってこと?


 俺たちが宿をとったのは東エリアの「星のしずく亭」。ロマンチックな名前通り、赤いレンガ造りのかわいらしい外見の宿屋だ。俺たちの部屋は2階で、1階はテーブル席がいくつか置かれた食堂になっている。


 ここの名物である「カララナッツ入りパン」は台所奥に設置された釜で焼いていて、ふんわり香ばしいと大人気だそうだ。俺たちは今回夕食代も光使様もちになっているが、一般人向けの宿屋としては値段はちょっと高めだろうと思う。それでも宿泊者だけでなく地元の人も食べに来ているようで、かなり広めに作られた食堂は早くからほとんどの席が埋まっている。


 ルーラン光使様の紹介と聞くと、宿屋のおかみさんは相好を崩していろいろサービスをしてくれた。あの人、結構評判いいんだな。まあ、イケメンだし。


 俺たちの今日の夕食は焼きたてのふんわりしたカララナッツ入りパンに好みで脂肪分の多い家畜の乳から作ったクリーム状のチーズをちょっと乗せて。シチューはモモの肉を使った濃厚なブラウンシチューだ。モモは主に毛と肉をとるために育てている大型の家畜だが、臭み消しとコクを引き出すためにプーディの果肉から作った酒を入れているとみた。力強くもまろやかで深みのある味わいだ。


 それと、わずかに苦味のあるシェンの葉を加えたサラダ。潰したゆで卵も入ってるな。デザートには色とりどりのフルーツを盛り付け、少しだけ蜂蜜をたらしたもの。花子はこれが非常に気に入ったようで、一言もしゃべらずに夢中になって口に運んでいる。


「いやあ、うまい。飯のうまい宿だとは聞いてたけど、想像以上だったよ」

「おや、うれしいことを言ってくれるねえ」

「特にこのパン、ナッツが香ばしくてこれだけでもごちそうだな」

「キノコのサラダもよかったらどうだい?ソースがパンによく合うよ」

「い、いや、それは遠慮する・・・・・・」

「なんだい、好き嫌いしてるとでっかくなれないよ」


 おかみさんから見れば俺たちはまだ子供なんだろう。俺の背中をばしばし叩いてパンのおかわりをよそってくれる。今度はシチューにつけながら食べてみようかなあ。


 料理に舌鼓を打っている俺の肩に、ぐにゅっと柔らかいものが押し付けられた。のしかかられるようなこの重み。


「クルクさああああああん♪」

「なんだ、ゲル子。まだ食ってる途中だぞ」


 あれ、なんかぐにょぐにょしてるな。どうしたんだ一体。


「そこのおじさんが、これ飲ませてくれたんですよぉぉ ひゃっほぅ」

「これって、プーディ酒・・・・・・ってお前、酒に酔うのかよ?!」


 フードの中を覗き込むと心なしかいつもより赤みが増している気がする。全体的に。


「体の中に入ってきた液体がですね、一部激しく蒸発しておりまして、その刺激が核に伝わってキモチイイといいますかなんといいますか。へふーん」

「仕組みはよく分からないが、お前は今後飲酒禁止だ。おい花子、ゲル子を部屋に連れ帰ってくれよ」

「そんな、ご無体なああああああん あふん」


 妙にぐねぐねしているゲル子が流動体に戻ってしまう前に、人目につかないところに連れて行ったほうがいいだろう。俺が声をかけると花子は俺を見て、ゲル子を見て、それから果物を盛り付けられた目の前の皿に目を向けた。・・・・・・ってその皿、さっきより量増えてないか?お代わりしたのかよ!


「あたしもまだ食べてる最中なのに!」

「食いすぎると腹壊すぞ」

「ううーー」

「ええい、そんな悲しそうな目で見るな!おかみさん、後で皿を返しますから、このフルーツ部屋に持っていってもいいですかね?」

「ああ、かまわないよ。持っていきな」


 二人を部屋に押し込めてから残りのシチューを味わっていたら、光使様が宿にやってきた。なんだか調査する前から疲れちゃったんだけど、やっぱ行くしかない・・・・・・よなあ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。