第1話 最強とはお嬢様なのか
小林悟は5歳の時に両親を亡くし天涯孤独となった。しかし鳳凰院家に拾われ、長女鳳凰院可憐の執事見習いとなり12年の時を過ごした。
その日も可憐の言いつけで一日30個限定プリンを買いに行く途中で異世界に勇者として召喚された。
魔王に対抗すべく勇者となった小林は仲間達と共に最強を呼び出すといわれる古代呪文を用いた。
最強の破壊の力・聖なる癒しの力・絶対の守護の力それぞれが最強を望む中、すでに聖剣を携える小林の頭の中に思い出されたのはあの最強のお嬢様、鳳凰院可憐の姿だった。
眩い光の中から現れたのは、完成された美を体現する少女だった。
何より目を引くのは、陽光をそのまま紡いで織り上げたような、輝かしい金髪の縦ロールである。 それは彫刻家が精緻に削り出した大理石の螺旋のように、一点の乱れもなく完璧な曲線を描いて彼女の肩に流れている。
この陰鬱な洞窟の湿気など微塵も寄せ付けず、彼女が首を傾げるたびに、弾力のある宝石のように気品高く揺れ、瑞々しい光沢を放っていた。
その髪に縁取られた顔立ちは、透き通るような磁器の肌に、意志の強さを感じさせる勝ち気な瞳を湛えている。長く上向きの睫毛に縁取られた瞳は、深みのあるサファイアのように青く澄み、一瞥するだけで並み居る群民跪かせる圧倒的な「支配者」の輝きを宿していた。
身に纏うのは、最高級のレースとフリルを幾重にも重ねた、真紅のゴシック・ロリター調のドレス。そのシルエットは、ただ座っているだけで一輪の毒を秘めた薔薇のように華やかで、そして残酷なまでに美しい。
彼女は、完璧に巻かれた髪のひと房を細い指先で弄びながら、女は手にしたティーカップを、音もなくソーサーへ置くと、驚きに目を見開く小林悟を冷ややかな、しかしどこか慈愛に満ちた瞳で彼らを見据える。
「あら小林、久しぶりね。……ところでプリンは買ってこれたのかしら? 随分と長く『お出かけ』していたようだけれど」
のちにこの日こそは最強がこの世界に召喚された日となったのであった。そう最強のお嬢様、鳳凰院可憐その人が。




