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私は自室で魔法の練習をしていた。レベル12、どうしても習得したいのに!魔法で髪を切ることができるようになったら髪型を保ちつつ男子生徒のフリをすることができるから、本当に習得したいの!私は髪に着けたウィッグに意識を集中し、魔法をかける。床に敷いた紙にウィッグの髪が落ちる音がする。
「やった、成功だわ!」
私が思わずガッツポーズをした時、部屋のドアがノックされるのが聞こえた。
「イディ。ちょっと良いか」
ヴィクト様の声だ。私は急いでドアを開けた。
「王子殿下。どのようなご用で?」
ヴィクト様は私の髪に着いたウィッグを見て怪訝な顔をしたけど、すぐにいつも通りの冷静な表情に戻った。
「ああ、少し話がしたくてな。数分時間が必要か?」
「あ、はい。お願いします。後でお部屋に出向きますので、少しお待ちください」
流石に王子殿下を部屋の外に立たせておくのは平民として無礼に当たるのでそう言うと、ヴィクト様は首を振った。
「いや、良い、ここで待つ」
「分かりました。なるべく急ぎます」
私はバタンとドアを閉め、ウィッグを外して上着を羽織り、ドアを開けた。
「お待たせしました。どのようなお話で?」
「ここでは話せない。場所を変えよう」
ヴィクト様はそう言って私に軽く触れると、転移魔法を使った。転移した場所は……学園のローズガーデン。
「イディ、君は、本気で俺を欺けると思っていたのか?」
耳元で囁かれた言葉に、私はビクッと反応してしまった。だって、ヴィクト様が言ったのって、きっと、私の正体のこと。
「何のことでしょう」
私がしらを切ると、ヴィクト様は私の目に手をかざした。これ、目の色を元に戻す魔法だわ。ってことは、もうしらばっくれるのもちょっと難しいかもしれないわ!
でも、悪女が何の抵抗もせずに屈する訳にはいかない。私は自分の瞳に魔力を込めて必死に黒色のままに保とうとした。でも、呆気なく元の色に戻されてしまった。
「アクアマリン色の瞳だな。なぜ色を変えていたんだ?」
「悪目立ちすると思ったので」
私が口に巻いた布の下でにこりと笑うと、ヴィクト様は今度は私のメガネを外した。そして口元の布を取る。抵抗したいけど、ヴィクト様には体術で敵わないだろうし魔法でも敵わなかったから、抵抗しようがない。
「大人っぽくなったな、ルディ」
すらりとしたヴィクト様の指に頬を撫でられ、私は鼻の奥がツンとするのを感じた。どうしてだろう。
「そちらは強引になりましたね、ヴィクト様」
「ああ、自覚している。どうして失踪したんだ?それにどうして、俺に声をかけなかった?お前の兄弟もいただろう?」
私はふふっと笑って答えた。
「乳母の夫の下らない妄想による策略ですわ。何でも、私がメイニーさんを苛めたとか?それで、1年以内にメイニーさんの悪い噂を消さないと乳母を殺すと言われました」
それを聞いたヴィクト様は不敵に笑って私の頭をくしゃくしゃに撫で回した。
「えっ!?」
「そんなことになっても普通に生活して魔法の進歩もさせるとは、流石俺が興味を持った女だな」
ヴィクト様の言葉に、私は目を丸くした。えっ、今ヴィクト様、私に『興味を持った』って仰りました?悪女は注目を集めて当然だけど、興味を持たれるのは少し複雑だわ。
「図太い分、自分に向けられた気持ちには気付きにくいのか……」
どうすれば興味を無くしてもらえるのか考え込んでいた私は、ヴィクト様がなんと言ったか聞き忘れてしまった。
「あっ!ところで、ヴィクト様は何でイディが私だと分かったのですか!?」
私がふと我に帰ってそう言うと、ヴィクト様が不思議そうな顔になった。
「何でって、仕草の端々にルディの雰囲気が滲み出ていたからな。王家の人間として平民の特待生をそれとなく見てやれ、と父上に言われたから見ていたら、全てがルディだった。まあ、これくらいのことは興味を持ったんだったら当然分かるな」
私はヴィクト様の人間観察能力に感心していた。
ヴィクト様が、私のことを可愛いと言うように見つめているとは知らずに。




