第三話 まとめたいのに
というわけでいろいろ暗礁に乗り上げている昨今ですが、そろそろ本格的に脳梗塞とは無関係になってきそうなのでまとめに入ろうと思う。
いくつか宿題として残しておいた課題がもう少しはっきりしてからにしたかったが、どうもそちらはあまりうまく進行していない。
その一つが血液検査にて如実に出ている。
これまで何度か血液を採取して検査をしてもらった。
その度に新米看護師に血を抜かれ、失敗してはやり直されというのは既に触れた。
脳梗塞後はそれが定期になっている。
あれだけ失敗された自分も、最近ではすっかり血管が見えるイケメンボディになった……などとこっそり浮かれていたのだが、最近ダイエットした末モテモテになって事件を起こした奴がいたという記事を読んで背筋が凍った。
まあ残念ながら自分は痩せはしたのだがまだモテモテになったことはなく、相変わらず異性どころか他人とも無縁の孤独な生活を送っているので完全にひとごとではあるのだが、他山の石としなければなるまい。
得することは全部逃げていくのに損なことばっかり回ってくるのは、もうそういう宿命なのか。
ここで俺は太っていた頃からモテていたなんて言い出せば、どこかのオタクの王様になってしまうし八方塞がりだ。
ひねくれて誰かを睨みたいがもうそれさえ許されない状況に涙が出ちゃう。
そういえば自分がやったことは、大体あの人が以前本を書いていたレコーディングダイエットとやらと同じかもなあと思った。
読んだわけではないのでそんなに詳しくは知らないが、常に意識することで積極的に有害要素を排除したくなるというのはよくわかる気がする。侮りがたし。
まあ最近の姿を見ていると大分リバウンドしている感じだが。
まあたわごとはいいとして、内科にかかるようになっても血液検査は行われた。
大体四ヶ月おきに血を抜かれ、その度結構な点数を取られてちょっと泣きそうになったが、この検査と二回目の骨折前(母親が死ぬ以前なので三年ほど前)に小さな整形外科で行った血液検査では、一つの共通点があった。
それが尿酸値が微妙に高いということ。
尿酸値というとビール、プリン体というのが有名な連想だが、アルコールと非常に関係が強いと思われがち。
ところがどっこい、ご存知のように(言ったっけ? 既にうろ覚え)自分は酒が全く飲めない。
料理酒の代わりにワンカップ大○を小さじ一杯使って豆腐ステーキを作ったら、火入れが弱かったためアルコールが飛んでおらず、気づけばたったそれだけの量でべろんべろんに酔っ払って三十分間悶絶したくらいは酒が弱い。
ついでに言うとアルコール消毒もかぶれるため厳禁。
これも以前触れたような言ってないような、まあいいや。
繰り返しだったら年寄りの話と思って適当に流していただきたい。
消毒かぶれと酒が飲めるかどうかはあまり関係ないとも聞いたが、真偽はともかく自分は両方駄目。
しかし整形外科ではたった0.1ほど基準値オーバーだっただけで「ちょっと尿酸値が高いね」と言われた。
それ以上言葉を付け足しこそしなかったが、その時の医者は「酒は程々にしておけよ」と言っているのがその顔からありありと伺えた。
存命だった母親も検査数値を見て「尿酸値高いじゃん」と渋い顔で言っていた。
酒なんて普段から全く飲まないことくらい一番知っているあんたまでそれを言うのか、と当時思ったものだ。
その頃日々の食事を作っていたのは間違いなくその本人なのに。
そして今の内科にかかってから初の血液検査は令和二年の三月に行われたのだが、この時も尿酸値はわずかに0.1基準値を越えていたため、当然内科医はそれに目をつけた。
やはりアルコール摂取を疑っているようだ。
その流れで飲酒に関しても質問されたが、自分ははっきり酒は飲「め」ないということを告げた。
しかしそれは疑念として残ったらしい。
「尿酸値が上がるのはどういう場合があるのですか?」と質問すると「やっぱりお酒だね」と返される。
しかしそれは自分には本当になんのアドバイスにもなっていないから困る。
酒断ちができなくて言い逃れをするおっさんではないのだ、自分は。
結局その時は大した数字でもないので見逃されたが、これがさらに変化したのが四ヶ月後、七月の検査の時となる。
実は三月の検査の時、血を抜かれる前に自分は「血液検査の度に散々失敗されるんです」と先に予防線を張った。
それを聞いた係の人は「それはプレッシャーかかりますね」と幾分慎重になっていたようだが、若手看護師と違って狙い過たず一発で貫通を決めてくれて、この病院ではその後一度も失敗されたことがない。
なので逆にちょっと張り合いがなかったりもする。
さてそれは腕の差なのか、徐々に肉が薄くなっていく自分の体の影響なのか……。
まあそれはともかく、七月の結果では尿酸値がさらに上昇することになった。
そして一緒にクレアチニンという数値が基準を大きく上回ってしまう。
それ以外の数字は軒並み基準値内、もしくは基準値以下を示して健康な食生活を証明してくれたのだが。
その数字を見た医者は、しばらく考えた後「脱水を起こしたのではないか?」と所見を述べた。
思えば水はあまり飲んでいない。
せいぜい麦茶を一杯食事時に飲むくらいだった。
それもパン食の朝は紅茶になる。
カフェインは利尿剤になって水分を排出してしまうため駄目なんだそうだ。
とすると日の摂取水分は一リットルにもならないことになる。
というわけでこの結果から自分は毎日水(あるいは麦茶)を二リットル目標にして飲むことにした。
とりあえず三食の度に水を二杯飲む。これに薬を飲むための一杯を加える。
普段使っているマグカップは満タンで三百ミリリットル入るので、七杯飲めば二リットル達成。
ところがこれが想像以上にきつい。
慣れるまでは一杯満タン飲み干すのさえ難儀した。
飲むだけでも辛いのに、このせいで今度は頻尿になってしまった。
今までは平気でトイレを半日我慢できていたのに。
今思えばそれもよくなかったのだろうが。
今は寝る前にトイレに行っても、夜中だろうとトイレに行きたくて目が覚める。
トイレから帰ってきて寝直そうと思ってももう眠れない。
そのまま起きていれば当然昼前には眠くなるという悪循環も生まれてしまった。
体力がないため運動というわけにもいかないし、それでなくてもコロナ禍で外出もままならないため、このループは結局長く続いた。
まあ働くためにも夜まで起きていなきゃという使命感は、もう枯れ果てたし必要もなくなったので既にないのだが。
こうやって人は堕落していくんだろうな。
そしてさらに四ヶ月後の今年一月の検査でも、尿酸値はわずかに数ポイント低下はしたのだが、やはり以前ほどはよくならなかった。
それ以外の数字はほぼ気にするほどではなく異常もないのだが、この尿酸値とクレアチニンの数字だけはしつこい。
この二つが悪いということは、腎臓にそれだけ負担がかかっているということらしい。
夏の比較的高値の時も医者は「まだ薬を飲んでどうこうという段階ではない」と言っていたし、一月の検査で数字はわずかとは言え下降したため、なおさら緊急性はないと思ったらしいが、こちらとしては唯一思ったようにいっていない数字なのでどうにも気になってしまう。
じゃあ尿酸値やクレアチニンを下げるためにはどうすればいいのか? と思って調べても、内臓脂肪、塩分減らして血圧を下げ、野菜を食べ、アルコールを控えましょう、バナナがオススメなどと書かれている。
ほぼ全部自分が普段から意識してやっていることだったりするこれ。
酒は最初から飲めないし、塩分も肉も減っているし野菜も大幅に増えた。
バナナも食べるし体重はもう相当減っている。
もうこれ以上自分で打てる手がないのだ。
結局誤差で気にすることはないと思うしかないのだが、果たしてそのまま放置して本当にそれでいいのやら。
脳梗塞後数値が悪化したのは確かなので、なんらかの原因が改革後の食生活にあったのは事実らしい。
果たしてこれを無視していいものか……。
食事以外に一応もう一個だけ脳梗塞後明らかに変化したことがある。
それを考えるとさらに憂鬱になるのだが。
なにかと言えばそれは「定期的に薬を飲むようになった」ということ。
これのせいだとすればそら自分ではどうにもできないのだが……さあその疑問が解決する日は来るのかどうか。
少なくとも今日明日は解決しないだろうな。
大体それなら必要悪でしょうがないと言うしかないか……と思ったが、あれこれもしかして特定の降圧剤(血圧を下げる薬)の使用時期とキレイに重なるぞ、と思い当たった。
三月、今の病院に初めて行った日に新しい降圧剤を処方され、同時に血液検査。まだその薬を飲んでいない。
七月、その薬絶賛服用中。当然影響あり。
一月、既に一ヶ月服用を中止している。ちょっと影響が抜けてきている段階?
と推理すれば、この結果に一番納得できてしまう。
他の血液サラサラ薬だとか悪玉コレステロール排除の薬は三月の検査の段階でもう半月以上は飲んでいたので、これが原因なら三月の検査の数値にも影響を及ぼしていないとおかしいことになる。
となればもう犯人はこいつしかいない。
ちょっと薬名で検索をかけてみたのだが、はいありました。
「副作用:クレアチニン上昇」
の文字が。
これじゃん!
他にも血中CK、血中CPK上昇という聞き慣れない言葉も副作用の中にあったのだが、この数字も確かに七月だけ全然許容範囲とはいえちょっと上がっていて、一月には下がっている。
やっぱりこれらしい。
だからどうというわけではないのだが、原因がどうやら特定できてほっとした。
しかしなんでも書いてまとめてみるもんだ。
本当にただあったことを書いていただけのはずなのに、意図せず自分で事件を解決してしまった。
これから自分のことはレコーディング探偵と呼んでいただきたい。
なんでこんな優秀な人材を世間は放っておくのだろう……不思議だ。
一応断っておくが、その薬を否定したり攻撃したいわけではないので誤解はしないでいただきたい。
その薬は血圧を下げることにかけては優秀で、その効果が高かったのは確かなのだから。
ちょっとばかり副作用もあったが、それは医者の言う通り今すぐどうこうなるような悪質な副作用でもない。
本当に治療のためには必要悪の範囲でしかない。
ただ食事改善がうまく行った自分にはちょっときつくて荷が重すぎたというだけの話だ。
決して後発品がないから毎回財布の負担が大きくて嫌だったというわけではない。ええ決して。




