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別式虎緒妖物事件帳  作者: CGF
神隠し
25/28

尾行


一明が日に一度、何処かへ雲隠れする。


幼い頃とは違うのだから始終くっついているつもりは無い。無いが、湖西の寺に間借りしている現状、何処へ行くかくらい一声あってもいいのではないか?


夕飯には戻ってくるのだが、何処へ行っていたのか、何をしていたのか訊いても生返事ばかりが返ってくるのだ。


湖西の手前、腹を立てて声を荒げる訳にもいかず、虎緒は憮然とするばかりだった。







(『おでかけ』か?)



一明が立ち上がるのを見て、竹箒を持つ虎緒の手が止まった。


見ていると狩衣に着替え、裏口へと向かう。



足音を忍ばせ後をつける。


一明が後ろ手に閉めた裏口の扉をほんのわずか開けて覗くと、狩衣姿が蔵の扉を閉めるところだった。



(あいつ、あんなところに何の用だ?)



蔵からは依然よく判らない気が漏れている。


まさか暇だからといって曰く付きの物を祓っている……とも思えなかった。



(……覗いてみるか)



一明に見付かったら掃除をしにきた、とでも云えばいい。


虎緒は重い蔵の扉を開けてみた。



特段変わったところの無い、薄暗い土蔵の姿だ。


古い書物や木箱、行李などが積み上げられ、物置の様な案配である。


高窓から射し込む陽が唯一の光源だった。



何処にいるのかと耳をすませる。が、物音一つ無い。



(……おかしいな、確かに入っていったのに)



蔵の中には『よく判らない気』が充満していた。何処から発しているのか判然としない。仕舞われているいくつもの古い品々がそれぞれに気を放っている。そのせいだ。



「……カズ?」



虎緒は声を出してみた。


はじめは見付からない様に、と思っていたのだが、当の一明が見付からないのだ。



「カズ?……おいカズ!」



二階への階段を駆け上がる。これだけ音を立てて上がれば何事かと顔を見せるはず……





……二階にも一明の姿は無い。



(何で?)



確かに一明は蔵に入ったのだ。狩衣の後ろ姿が扉の奥に消えるのを見たのだ。



一明の姿は何処にも無かった。



訳が解らない。虎緒は二階から下りて今一度辺りを見渡す。


さっき階段を駆け上がったせいで、埃が舞っている。明かり採りの窓から射し込む陽にふわふわと。




(……ん?)



ふと、虎緒は足許に目を落とした。




埃の溜まった床には、虎緒の足跡。



一明のものは無い。




「……何で?カズ!何処だよ!」



虎緒の声が蔵の中に響いた。






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和語り企画
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