連行とそして異端審問
(ないものは)ないです
「しかし……またですよ、……さん。それも我が王国で連続して」 「仕方ない、お上の命令を受けて、その通りに行動する。それが我々の役目だ」「まあ、そうなんでしょうが……」 目が覚めて最初に感じたのは冷たい石の床と、そんな会話だった。 ここはどこか、といわれれば「はい、刑務所です」と即答できそうな、まあそんな場所だ。 さっき話してたのは多分看守とかそこらへんの奴だろう。 頭に手をあて、壁に横たわりながら整理する。 ……まず、俺が何かよくわからんがここに召喚されて、その召喚地点、記念されるべき路地裏から出た瞬間何者かに襲撃、と。 短けーな。俺の転生記。普通ここまでに多少なりともなんか起こるだろ、接触が。 あ、いや襲撃という最大のツンデレかもしれない的な接触はあったけどさあ。 あと言っておくとここまで誰一人とも会話をしておりません。向けられたのは奇怪な視線だけでございます。 泣きたいわ、こんなん。 一瞬こんなんが困難と変換されたような気もするが、実際のところ困難ですら
ない。路地に出た瞬間、ターイホだからな。 革命軍を組織するまでもない。組織するはずの民衆には可哀想な人を見る目で見られたし。 まあそんな感じ異世界という名の異世界という現実を嘆いていたら閉じ込められていた檻の門が開いた。 そしてすぐさま俺は座り込みデモ隊とそれを解除する警官のような構図で連行される。 「目は絶対に合わせるな、そして会話もするな。危険人物だ、洗脳されるぞ」
右肩を掴んだ看守が片方に大きくそんな事を言った。なんですか俺は。中世に降り立ったレーニン扱いですか。路地裏から路地へしかまだやってませんよ。なんですかこの特待。 10分後。 「貴方は、何者ですか?」見事なまでに裁判というような感じの中、俺に向けられた第一声はそれだった。 who are you? もっとも基礎的な会話。俺も中学で習いますた。 ちなみに異世界での会話、これがはじめて。 「えっと……なにかと言われれば、それは人間です。」
確かにもっとも当たり障りのない内容……のはずだった。 重い俺の言葉がずっしりと全体に響く。聞いているのはなにやら実に偉そうな人々。 「何が人間だ! 貴様のような豚が言語を解せるだけで吐き気がするわ!」 と、ヤジが飛びました。 いや、何で俺こんな嫌に思われてんの? ひどすぎない? 一介の転生者に対して。 「静粛に」 と裁判官らしき人。 「じゃあ審問の内容について申します。まず被告は昨日の昼頃、ブロンシュタイン大通りの路地にて、不審かつ反王政的であるような服を着ていたとのことで憲兵が独断により拘束し連行し、異端審問をすれというわけであります」 なるほど、わからん。 とりあえず言語は異世界パワーで通じたのだけはわかった。通じなかったらガチの異端だろうと。
「では被告に、罪の意識また異端の意識は、ありますか?」 「ないです」と俺は即答してしまった。 しかし対して動揺することもなく、手慣れたようすで「判決を下します」と言った。 え、もうおわるの? それだけだった。 「被告である自称『人間』を、異端であるとして、処刑することを認めます」 実に手慣れたようすで彼は言った。最初のヤジの主は元気そうだった。 異世界生活、終了。 遺書:やはり中世。(一文) いやまて。ほんとにまて。いや、終わんねえからな。げんざいのところ意味不明だが。 なにをいいたいかというと、つまりはおわるまではおわらないよと、言いたいわけなのであります。 2月16日 秋月士郎




