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刃の転界者  作者: 利々 利々
第四章 刃術師は幕を斬る
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第28話 エピローグ

 六面世界(キュビリス)には四季がない。


 それ自体は薄々勘付いていたことだ。しかしはっきりと知識として知ったのは最近――こちらの世界へ来てから一年近く経った頃だった。

 六面世界(キュビリス)六面世界(キュビリス)で、四季の代わりに平界(ワールド)があって、それぞれ違う気候が広がっているのだけれど。


 とはいえ俺が生まれた世界の、俺が育った国のことも、知ってほしいと俺は思ったのだ。

 ……いや、本当はアルキスが「ジンは知ってるのにあたしだけ知らないなんて」と謎の()ね方をしたからなんだけど。

 でも前者の理由が存在しないというわけじゃない。


 ――というわけで、ここは地球。

 長い耳をマフラーで隠せる季節。二人でイルミネーションを見るために外出中だ。


「異世界は随分と寒いのね」


「今度は暖かい時期に来ようか」


「あら。それだと耳が隠せないでしょ?」


 ……それは確かに。

 けど地球だと奇跡も魔法も使えないしなあ……六面世界(キュビリス)と地球を繋ぎ続けて魔力を充満させる……? いや()(すず)(りゅう)の後継者としてそれは流石に……。


「別にいいわよ。そんなに考え込まなくても」


 頭を悩ませる俺を見かねて、アルキスが溜め息を()いた。


六面世界(キュビリス)の寒冷地っていうと、たいていは魔境だもの。そういう場所を無防備に歩けるだけで、充分過ぎるくらい物珍しいわよ」


 白い息が、街路に溶ける。


「だからね――」


 きゅっ、と袖を引かれるようにして。

 指先に絡むのは、冷たくて柔らかな感触。右腕を包み込むように、重なる暖かな時間。


「――たまにはこういう歩き方もしたいから。地球(こっち)に来るのは(フユ)だけにしましょ。寒いなら、こうしても変じゃないでしょ?」


「……ああ。そうだな、そうしようか」


 右側に心地(ここち)()い感覚を覚えたまま、俺とアルキスは微笑み合う。


 小さな雪が、アルキスの、少しだけ赤くなった鼻先に落ちて。

 俺はそれを、接吻(くちづけ)で溶かした。

この小説はこれで完結です。

最後まで拙作にお付き合い頂き、ありがとうございます。


それでは、また。

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