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ボッチの俺が異世界で魔法使いになってボッチを脱却するまでの話。  作者: 神代家家長


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第6話 【母の二つ名を知ることになる(笑)】

 

 洞窟から3人を連れ帰った俺は冒険者ギルドで受付嬢に報告を行っていた。


「途中でホブゴブリンが3匹現れたから、3人では無理だと判断して俺が倒しておいた。洞窟内のゴブリンは俺が全滅させておいた。これで依頼は完了ということで良いな?」


「あ、うん。お疲れ様」


 受付嬢は俺の報告を受けて呆気に取られていた。


「それで、どうだったかな?」


「ハッキリ言って、あの程度なら俺1人でも余裕で依頼は達成出来た。今のところパーティを組む意味は見出せなかった」


「……そう」


 受付嬢としては今後も俺にパーティを組んで欲しかったのかもしれないが、同じランクの冒険者では実力が違い過ぎてパーティを組むメリットがなかった。


「あ、これが今回回収してきた魔石ね」


「い、いつの間に」


 アルスは驚いているが、俺の疑似眼球を通して魔法を使って回収しておいたのだ。


 重いに荷物は無理だが魔石程度なら疑似眼球でも運び出すくらいは出来る。


「ホブゴブリン3匹を瞬殺かぁ。Eランクの成果じゃないわね」


「そうなん?」


「事前調査が甘かったとはいえ、ホブゴブリンはDランクが担当する案件だもの。君ならオークが相手でも問題なさそうね」


「オーク」


 確か豚面で巨体な魔物だ。


 まぁ、Eランクの俺には関係ないけど。


「今回のことは君の功績として上に上げておくわ。今回はありがとうね」


「……どういたしまして」


 俺は報酬を貰って家に帰ることにした。






 家に帰ってから俺は魔法のことについて改めて考える。


 俺も当初勘違いしていたのだが、魔法を使う為には呪文を詠唱したり術式を構築したりする必要はない。


 自己投影魔法のような完全に完成していて、簡易的な魔法書に魔力を流すだけで習得出来る魔法というのは本当に例外だった。


 必要な属性レベルを確保して、後は術者のイメージで発動出来るのだ。


 この術者のイメージに属性レベルが追い付いていないと魔法は不発に終わる。


 だから術者は必死に属性レベルを上げようとするわけだが、術者のイメージが貧弱だと属性レベルを上げても使いこなせない、なんてことが起こる。


 魔法使いにとって属性レベルを上げることは重要だが、同じくらいイメージも重要なのだ。


 そういう意味では属性の合成を成し遂げた俺はイメージの面では合格だと思うのだが……。


「母さん、空を飛ぶ魔法ってないの?」


 今度は空を飛ぶ魔法はないものかと母に聞いてみた。


「うぅ~ん。一時的になら風属性の魔法で飛べないこともないんだけど、あくまで浮くだけで飛ぶとは言えないわねぇ」


「そっかぁ~」


 俺はガッカリしながらも属性のレベル上げを行っていたのだが……。


「うごぉっ!」


 唐突に土属性の魔力を回転させていた右手が机の上に叩きつけられて悲鳴を上げる。


「アトゥムちゃん?」


「うごごごご……」


 母には心配されるが、俺は机に張り付いたように動かない右手を見て焦る。


「なんだ、こりゃ?」


 困惑しつつも俺は自己投影で自分のステータスを確認する。



・アトゥム

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル1

 水属性 レベル9

 木属性 レベル8

 風属性 レベル7

 氷属性 レベル6

 火属性 レベル5

 雷属性 レベル5

 光属性 レベル7



「あ」


 土属性がカンストして重属性が発現している。


(ってか、土属性の上位属性は地属性じゃなかったのかよ)


 俺は呆れて自分のステータスを確認していると――唐突にガシッと頭を掴まれて母の方を向かされる。


「アトゥムちゃん、何があったのかしら?」


「えっと、その……」


 どう誤魔化したものかと思っていたのだが、母の視線の強さを見て誤魔化しは無駄だと悟った


 結果、俺は正直に土属性がカンストして重属性が現れたのだと暴露することになった。


「重属性。それは物を重くしたり軽くしたり出来るのね」


「あ、はい。多分」


「アトゥムちゃんが空を飛びたいとイメージしていたから発現したのかしら? これなら身体の重さを軽くして風属性の魔法で自由に飛ぶことが出来るわね♪」


「お母様?」


 重属性が出たのはあくまで俺なんですけど?


「実は最近になって土属性のレベルを上げていたのよねぇ。もう直ぐカンストするから……お母さんも重属性にするわ」


「……そっすかぁ」


 もう驚かない。


 この母が魔法関連でどんなことをしようと俺は驚かない。




 ◇◇◇




 またも冒険者はお休みして訓練の日々に戻る。


 そして、またも3ヵ月程で重属性のレベルを上げて、風属性で宙に浮くことには成功した。


 成功したのだが……。


「…………」


 視線を上に上げると……。


「~♪」

 そこでは自分に掛かる重力を重属性の魔力で遮断した上、風属性の魔法を推進力にして自由自在に空を飛び回る母の姿が。


「……おかしくね?」


 重属性は俺の属性の筈なのに、俺より母の方が使いこなしているんですけど?


 俺はまだ宙に浮くのがやっとなのに、母は既に飛行魔法というレベルで使いこなしている。


「……おかしくね?」


 これが才能の差なのかと思うと、やっぱりやる気を削がれるのだった。






「まぁ、お母さんは昔からそういうところがあるからな」


 父に相談したら、そんなことを言われた。


「本人に悪意はないんだけど、圧倒的な才能の差で他の人を周回遅れにするんだ。本当に本人に悪意はないんだけど、ドンドン人が離れて行ったよ」


「そ、そうなんだ」


 俺がボッチだったのは母の遺伝もあったのか。


「母さんって友達少なそうだよね」


「……そうだな」


「本人は友達多いって言ってたけど、絶対に嘘だよね?」


「……正確にはお父さんの友達が多くて、その関係でお母さんも友達が多いと思い込んでいるんだ」


「あぁ~」


 父は本当に友達が多いけど、その父の交流関係は母と共通なので母は自分に友達が多いと思っているわけか。


 実際にはほとんどが父の友人というのが真相だ。


「母さんには黙っていた方が良いよね?」


「そうだな」


 母には実は俺と同じくボッチだったということは秘密にしておくことにした。




 ◇◇◇




 翌日。


 再び3ヵ月ぶりに街へ出かけ冒険者として活動を再開することにした。


「君は3ヵ月に1度しか仕事をしない方針なのかしら?」


「そんなことはないけど」


 ただ実家で母に訓練を受けていたので仕事は後回しになってしまっただけなのだ。


「今日は仕事をするということで良いのかしら?」


「そのつもりだ」


「……君って実力はあるのに、偶にしか仕事をしないから他の卒業生にランクで置いて行かれているわよ」


 どうやら同期の卒業生は既にDランクになっているのに、俺だけEランクのまま取り残されているらしい。


「ちなみにDランクに昇格する為にはどうすれば良いの?」


「Eランクの依頼を10件達成した後に試験を受けて合格すればDランクになれるわ」


「なるほど」


 俺はEランクの依頼を2回達成しているので、後8回達成すれば試験を受けられる訳か。


「なんか丁度良い依頼はない?」


「そうね。近頃は近くの森でゴブリンが大量発生しているから、それを10匹倒す毎に依頼を1回達成扱いに出来るわ。但し、その森にはオークも出るから危険度は高いわ」


「ほぉほぉ」


「やる?」


「勿論」


 そして俺は街の近くの森へ向かうことになった。






 件の森には街から歩いて来られる距離だった。


 俺はその森で練習中の飛行魔法を使ってフワフワ浮きながらゴブリンを探す。


 まだ母のように自由に空を飛べるほどの練度ではないが、上空に浮きながら疑似眼球を飛ばしてゴブリンを探すのは効率が良い。


 そうしてゴブリンを30匹ほど片付けて魔石を回収していたら――オークを発見した。


 オークは1匹で依頼達成扱いになるらしいので、土属性の槍で脳天を貫いて仕留めた。


(オークは耐久力が高いと言っていたが、ゴブリンとの違いが分からんな)


 ともあれ、これで依頼4回分の達成扱いになるので、そろそろ帰ることにした。






「本当にオークも仕留めたのね。あの森はオークが出るから初心者には敬遠されるのに、君には楽勝みたいね」


「これで依頼4回分達成?」


「ええ。ゴブリンも随分と仕留めてくれたみたいだし、これで少しは森が安全になるわ」


 これで後4回依頼を達成出来れば試験を受けられる。


「ゴブリンって繁殖力が強いから、あっという間に数が増えちゃうのよね。チームを組んで根こそぎ討伐しても生き残りがいれば直ぐに増えちゃうし」


「チーム?」


「複数のパーティが合同で依頼を受けることよ。多い時には数十人規模の集団になるわ」


「へぇ~」


 冒険者には色々と仕組みがあるものだ。


「ともあれ、お疲れ様。次は間を開けずに依頼を受けてね」


「……善処する」


 そういうのは母に言って欲しいものだ。






「懐かしいわねぇ。私もDランクになる時は試験を受けたわ」


「へぇ~」


「気付いた時にはDランクになっていたから、どんな試験だったのかは忘れちゃったけどね」


「……だと思った」


 この母は性格は穏やかだが、案外適当なのだ。


 その為、細かいことは気にしない性質なのだ。




 ◇◇◇




 翌日も俺は森へ行ったが、今日はオークを発見出来なかったのでゴブリンを40匹ほど倒して魔石を回収した。


(疑似眼球、便利だなぁ)


 俺自身が動かなくても森の中を探索して見つけたら速攻魔法で倒して魔石を回収という流れが出来ている。


 森という環境なので死体の処理もしなくて良いし、楽な仕事だ。






 そうして俺は受付嬢にゴブリン40匹分の魔石を提出したのだが……。


「本来なら試験としてオーク1匹を仕留めて来てもらうんだけど、君は昨日の時点で達成しちゃっているからねぇ。よって試験は合格ということで君はDランクに昇格よ、おめでとう」


「ど、どうも」


 母が言っていたように気付いたらDランクになっていたぞ。


 母もEランクの時にオークを仕留めたからほぼ無試験だったのだろうか?






 Dランクに昇格したと言ったら母が御馳走を作ってくれた。


「流石はアトゥムちゃんだわ。自慢の息子で鼻が高いわ♪」


「あ、ありがと」


 盛大に祝われたが、殆ど無試験なので居心地が悪い。


「分かるぞ、アトゥム。過剰にお祝いされても困るよな」


「……うん」


 たかがDランクでお祝いされても、どうしたものやらって感じだ。


「良いじゃない。折角だからお祝いしたかったのよ」


「お祝いをしたかったんだ」


 それは単純に母がパーティをしたかっただけなのでは?


 ともあれ、御馳走は嬉しかったので美味しいものに舌鼓を打った。




 ◇◇◇




 Dランクとなった俺の依頼対象はオークやホブゴブリンだが、猪の魔物であるボアも対象に含まれる。


 ボアはウルフよりも巨体な為か、それだけ凶暴な魔物に分類されている。


 生息域は街から大分離れた場所になるが……。


(まだ上手く飛行魔法を使えないんだよなぁ)


 俺はまだゆっくりとしか飛ぶことが出来ないので、母のように長距離を飛んで移動するのは不可能だ。


 現在の練度だと時速10キロで移動するのが精々だ。


 母は平気で時速50~60キロ出していたが。


(あの人、大概おかしいよね)


 どうして、この世界で自動車並みの速度が出せるのだろう。


 俺は今日も森の中に入り、木から木にプカプカと飛び移りながら移動する。


 直線距離で速度を出せないので、こうやって移動するしかないのだ。


 そうして眼下にはオークが増えて来たので上空から水属性の槍を使って仕留めていく。


 水属性を使うのは、そろそろこちらも上位属性になりそうだからだ。


 確か次は流属性だったか。


 重属性のように事前にイメージしておけば別の上位属性になりそうな気がするが、水属性の別属性を思い浮かばない。


(敢えて言うなら綺麗な飲み水が欲しいかな)


 今の水属性でも飲み水を出すことは出来るが、純水の為かあんまり美味しくないのだ。


 そんなことを考えながらオークを水の槍で仕留めていたのだが……。


(ん?)


 なんか水の槍の感覚が変わったので自己投影してみると……。



・アトゥム

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル4

 水属性 レベル10★

  清属性 レベル1

 木属性 レベル8

 風属性 レベル7

 氷属性 レベル6

 火属性 レベル5

 雷属性 レベル5

 光属性 レベル7



(清……属性?)


 どうやら綺麗な水が出せる属性になったようだ。


 試しに水を出して飲んでみると……。


(あ、美味いかも)


 確かに普通に水を出すよりも美味くなっている気がする。


 これで料理とかを作ったらいいかもしれない。






 帰って母に報告したら、とても喜ばれた。


「良いわねぇ。お料理がより美味しくなったわ♪」


 戦闘には使えないが、母にとってはとても有用な属性だったようだ。


 良妻賢母を目指す母にとって、料理がおいしくなる魔法というのは貴重らしい。


 これから水属性のレベルを最優先で上げて清属性を目指すらしい。


 今回は訓練をしなくても良さそうだ。




 ◇◇◇




 今日も今日とて馬車で街に向かい冒険者ギルドに顔を出すと――なんだかいつもよりも騒がしかった。


「なんかあったの?」


 顔見知りの受付嬢に聞いてみると……。


「今日は有名なAランクの冒険者が来ているのよ」


「へぇ~」


 Dランクの俺にはAランクがどのくらい凄いのかよく分からなかった。


「知らない? Aランクの潔癖のクラリスって言ったら、かなり有名なんだけど」


「潔癖さん?」


 それは昔、母から聞いた覚えのある名前だった。


「それって俺の母と同期で、母に会う度に婚期を逃したって愚痴っているっていう潔癖さんのこと?」


「ちょっ……!」


 俺が聞いたままを告げると受付嬢は顔を引き攣らせる。


 どうしたのかと思ったが……。


「あなたのお母様の名前を聞いてもいいかしら?」


「…………」


 背後から声を掛けられて、振り返ると30代くらいの女性が顔を引き攣らせながら俺を睨んでいた。


「えっと、その……母の名前はアルメリアですけど」


「かっ……!」


 だが俺が母の名前を告げた瞬間、彼女は意味不明な声を上げながら膝から崩れ落ちた。


「あの最速でAランクに駆け上がった癖に、男を選んであっさり引退して結婚した……白銀のアルメリアのことかぁっ!」


 そう叫んで潔癖さんは床を拳で叩いていた。


「えっと……なんか、すみません」


 やっぱり母にも友達はいないんだなって納得した。




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