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エピローグ 【魔法の革命】

 

 重要なのは《気付き》だ。


 この世界の人間は気付いていなかったが、実はこの世界の魔法技術は停滞してしまっていた。


 完全に画一された魔法技術は完成されており、既に常識として認識されるに至っていた。


 だから、この世界にはアトゥムという一石が投じられたのだ。


 アトゥム自身は気付いていないが、属性を合成したり、イメージで上位属性を変えるなんてことは、この世界では異端と言っても良い考え方だった。


 自他共に認める天才で柔軟性のあるアルメリアでさえ、その発想は出て来ない。


 何故なら常識を覆すというのは、そのくらい難しいことだからだ。






 ハッキリ言ってしまうが、アトゥムという異端児が生まれて来なければ、この世界の魔法技術の停滞は1000年は続いていた筈だ。


 アトゥムの発想や気付きは、考えてみればなんてことのないものかもしれないが、それは後から考えてみればという話。


 その気付きがなければ常識というものは1000年経っても覆すことは出来ないのだ。


 これは一種の変革、革命なのだ。


 アトゥムの発想力は気付きによって魔法技術に変革が齎され、アルメリアの柔軟性によってそれが受け入れられて――革命に至った。


 アトゥムという転生者がアルメリアの元に生まれて来たのは、そうなるように願った世界の意思でもあった。






 色々な意味で鋭いアルメリアはアトゥムが普通の子供ではないことにはとっくに気付いていた。


 流石に転生者であるという正解にまでは辿り着いていなかったが、なんらかの異端の要素が自分の息子の中に入り込んでいるのには気付いていた。


 それを放置した理由は――単純に楽しかったからだ。


(アトゥムちゃんは反応が可愛いのよねぇ♪)


 ちょっと意地悪をすると大げさなリアクションを取ったり、ガックリと落ち込む息子がアルメリアにとっては可愛くて仕方なかったのだ。


 それに誰も追随することも出来なかった自分の魔法の手腕にくらいついて来ることも楽しくて仕方がない。


 アトゥムは才能という面ではアルメリアに全く及ばないが、それでも間違いなく天才ではあったのだ。


 超天才のアルメリアにギリギリで付いていけるくらいには。


 当初、アルメリアは息子に魔法を教えるつもりなどなかった。


 理由は単純で、どうせ自分に付いてくることなど出来ないし、理解することなど出来ないだろうと思っていたから。


 それに自分とは格が違い過ぎると悟ってしまえば魔法自体を諦めてしまうから。


 今まではそうだったからアルメリアは誰かに魔法を教える気などなかったのだ。


 だが息子は才能は乏しい中でも確実に成長して成果を積み上げていった。


 そうしてアルメリアが見守る中で、ついにアトゥムは属性の合成という異端の成果を出してみせた。


 この時点で、もうアルメリアは我慢が出来なくなっていた。


 こっそりと息子を観察して合成の理論を学び、自分でも実践し始めた。


(合成……楽しいわね♪)


 それに夏は暑いと愚痴を零してみたら――息子は母の為に氷属性を合成することを試みていた。


(アトゥムちゃんったら、可愛いんだから!)


 ちょっとした愚痴だったのに、それを拾って何とかしようという息子が可愛くて仕方がない。


 まぁ、件の氷属性は先回りしてアルメリアが先に成功させてしまったのだが。


 お陰で夏を快適に過ごせるようになった。






 アトゥムが3つの属性を合成して雷属性を生み出した時、またしてもアルメリアは我慢が出来なくなっていた。


 即ち、息子と一緒に合成魔法で遊びたくなったのだ。


 まぁ、息子に秘密を明かしたらガックリと項垂れていたけど……。


(まぁ、あれはあれで可愛かったわね♪)


 本質的にドSなアルメリアには、それすら楽しかったけど。


 それからは息子と一緒に魔法の開発をすることになり、アルメリアの人生で最も楽しい時間がやって来た。






 結果として、この世界の魔法技術は1000年は先取りして進むことになった。


 この技術が世界に広まるのは随分と先のことになるだろうが、それでも確かに魔法技術は大幅に進んだのだ。


 例え、とんでもない威力の魔法がとある国の王都をクレーターに変えたとしても、とんでもない超広範囲の雷撃が大軍を蹂躙したとしても、それでも魔法技術は発展したのだ。


 これこそがアトゥムがこの世界に転生して来た理由であり、世界の意思だった。


 まぁ、全てが上手くいったわけではなく、自称勇者のように世界の思惑通りに動かない者もいたが、それでも概ね成功と言える。


 アトゥムとアルメリアがいる限り、この世界の魔法技術はドンドン発展していくだろう。




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