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異世界貴族に転生したけど思ったより不満だったので  作者: 南乗七史
第4章・トイレは三大欲求にも並ぶので

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番外編・奪われた晩餐会1

 日が沈み、しばらくが経過した。魔法灯のおかげで夜更かしも現実的になったけれど、まだまだ習慣としては寝静まるのが普通の頃合いに、突然、家の外が騒がしくなり始めた。閉じていた両目を開けると、モノクロに見えていた周りの景色が色づき、障害物ひとつを透過する。


 魔眼。それが私の体質。


 その魔眼が、家から少し離れた村の入り口付近で、剣を振り回す乱暴な男の姿を捉える。


 武装した男と、逃げる女。考えるまでもなく、野盗だろう。


 16歳になった記念にお酒を試してみたくて、今夜にでもアルメルを誘ってみようかしら、と考えていたタイミングでの出来事に不快感を覚えつつ、髪を隠すためのカツラを被る。いつもなら瞳は閉じて隠すのだけれど、事が事だ。魔眼を使うだろうから、サングラスに変更する。


「アルメル様! アルメル様」


 村人の1人が我が家に駆け込んでくる。私も部屋を出て玄関へ向かうと、隣の部屋から出て来たアルメルと鉢合わせる。2人して頷いて、駆け足で村人の元へ向かっている最中に、サーシャも合流した。そこに、シンシアの姿は見当たらない。


「どうした!?」


 慌てた様子のアルメルが聞くと、村人は答える。


「野盗です! 今、自警団の連中が時間を稼いでますので、避難を!」


「なっ!」


 アルメルは動揺を見せた。そして青ざめる。


 異世界でも争いとは無縁の場所で生まれ育ったというような話を聞いていたので、こういう出来事には疎いのだろう。普段は聡明で頼れるのに、こういう時は可愛げがある。そういえば一緒にサバイバルをした時もそうだった。


「アルメル、クリス、護衛する。避難、問題無い」


 そう言いながら、サーシャはロビーの済に常備していたダガーとバックルを取り出す。


「避難……でも……」


 歯切れが悪いアルメル。優しいのか、甘いのか、自分の命を大切にするか、村のための行動を起こすのか決めあぐねているのだと思う。


「野盗の規模はどれくらいでしょうか?」


 アルメルの変わりに確認すると、村人は言う。


「10人以上は居ます。自警団も5人しか居ないので、必要最低限の物だけ持って避難を。ある程度のもんを持っていったら満足して帰ってくれるんで、早く!」


 野盗も馬鹿では無いので、生かしておけば再興し、また奪えると解っている。だから、再興の余地があるこの村には甘い対応をしてくれるのかもしれない。


 とはいえ、アルメルはやはり、歯切れが悪い。


「そうだな……」言いながら、私を見て、サーシャを見て、ぐっと唇を噛む。「わかった、避難しよう」


 その視線の意味を見逃すつもりは無い。アルメルは今、私が居るから避難という道を選んだ。サーシャという戦力を、村のためではなく自分のために温存するという罪悪感が、手に取るように伝わってくる。


 だから、私は言う。


「迎え撃つわよ、アルメル」


 毅然として告げる。そしてこれは、決定事項だ。アルメルと交渉をするつもりは無い。


「ルーサー公爵家の長女である私と、ファラン男爵家の三男であるあなたが、野盗如きから尻尾を巻いて逃げるなど、許されないわ」


 あえて強い言葉を使ったが、アルメルはその言葉を受け取って、嬉しそうに笑った。


「ありがとう。それじゃあ遠慮なく、迎え撃とう」


 3人は村の入り口に急行する事にした。




 急いで移動する時、前が解らないと困るので、私は片目のみを開けた状態にする。


 これは私の魔眼のためだ。


 両目を閉じていると全方位がモノクロに見え、片目を開けると前方が障害物ひとつ無視して見え、両目を開けると全方位が障害物ひとつ無視して見える。これは解除出来ないので、前がどちらか解らなくなる時がある。だから、前が解るような工夫がいくつか必要になる。それが、片目だけ開けるであったり、杖を着くフリをして前方を示したりする、などだ。


「因みに、状況は?」


 走りながらアルメルが私に聞くので、少しだけ両目を開ける。


 すると、私が最初に見た時や村人から聞いた状況から、事態が一変している事に気付き、少しの悔しさを誤魔化すために苦笑する。


「ええ、まあ、このまま進みましょう。サーシャ、私達は大丈夫だから、先行してもらえるかしら。野盗が入口に集結してるみたい」


「了解」


「?」


 私の言葉に、サーシャがすぐさま従う。アルメルだけが微かに首を傾げる。


 そしてサーシャが先行し、私達も到着した村の入り口にあったのは、フードを被った双剣使いの男が、バンダナを被った10人以上の男達を食い止めている背中だった。辺りに複数の血痕はあるけれど、倒れ伏している村人は居ない。変わりに、手や足に剣傷を負い動けなくなっている盗賊が3人。


「流石過ぎるでしょ、シンシア……」


 その光景に、アルメルが乾いた笑いを浮かべる。こうも活躍されてしまうと、私の活躍の場が無くなってしまうから悔しい。


 とはいえ、私の能力はなにも、戦うだけのものじゃない。


 少し視界を広げてみる。村人はおろか、自警団の5人、というのも見当たらないのが気になったのだ。すると、どうやら自警団のメンバーは、近隣の村人を護衛しながら避難しているらしい。これなら、人質に取られる心配も無い。魔眼で見る限り、逃げ遅れも居ない。


 ふと、サーシャが村の外に出て、野盗の背後に回り、気配を消しているのが見えた。シンシアの立ち回りを見て、直接の加勢は必要無しと判断したのと思う。


「ちくしょう、なんでお前みてぇな冒険者がこんな村に、こんなタイミングで居るんだ!」


 野盗の1人がシンシアにそう問いかける。


 しかし、


「…………」


 シンシアは答えず、ただ、立ち尽くす。


 私とアルメルも、適度な距離の所で立ち止まった。シンシアがこういう時にどういう立ち回りをするのか見てみたいという興味半分、これくらいの距離のほうが、私とアルメルの強みを活かせるという理由が半分の距離。


「無視かよクソが……てめえら、村人は避難済、こいつさえ殺せば物資取り放題なんだ、気合入れて殺せ!」


 野盗の1人がそんな号令をする。野盗達は往々に返事をして、シンシアに切り掛かった。


 3人が同時に切り掛かる。連携には慣れているのか、シンシアから見て、右から足を、左から頭を狙った横切りと、正面から胸を狙った突き。死角は無い。少なくとも、この攻撃範囲なら、双剣使いのシンシアでも反撃までは出来ない。――というのが、シンシアの実力を知らない人間の予想だろう。


 正面の突きを右手の剣で上に弾いた流れのまま、上段の横なぎを弾き、足を狙った刀の横腹を踏みつけて、攻撃を全ていなすと、まだ空いている左手の剣で、左の盗賊を切る。上に弾かれて脇が無防備だった所に、その脇をピンポイントで切っていた。


 追加で蹴りを入れて、切られた野盗が遠くへ弾かれる。その隙にと正面と右の野盗が同時に切り掛かろうとした所で、唐突にシンシアとの距離がゼロになったせいで、切る事は出来ず、3人がぶつかり合う。――ではなく、シンシアは、切った野盗を蹴り飛ばしたのではなく、切った野盗を足場にして、残りの野盗へ体当たりをしたのだ。すなわち、この衝突はシンシアの狙い通りという事になる。


 弾かれた野盗2人。追撃をしにかかるシンシア。野盗の第二波が、シンシアの追撃を阻もうとしたので、シンシアは追撃を中断し、数歩飛び退いた。


 第二派はシンシアに追撃せず、体勢を崩していた野盗2人の護衛と、脇を切られた野盗の撤退を支援する。これが野盗のチームワークなのかしら。それだけの協調性があるなら、町でも普通に暮らしていけたでしょうに。


「くそが……てめぇ、なんで殺さねぇ」


 盗賊の1人が言う。シンシアがわざと致命傷を避けている事に気付いたらしい。


「…………」


 シンシアは答えず、立ち尽くす。


「てめぇのせいでこっちはくいっぱぐれる事になりそうなんだぞ、なんとか言えや!」


「…………」


 シンシアは答えない。


 野盗は笑った。


「ああ、すまんすまん、口を開けない障害持ちだったか? 可哀想な人生だなぁ」


「…………」


 汚らわしい挑発にも、シンシアは答えない。


 ただ立ち尽くす双剣使い。


 いつもの元気なシンシアを知っていると驚くギャップだった。サバイバルをした時も、相手が魔獣や魔物だと普通に喋りながら戦っていたので、あの状態のシンシアを、私は知らない。いや、知っていた。そういえば、初めてファラン家に訪れた際、私達が奇襲を仕掛けた時、シンシアは無言のまま人質を確保し、その一幕の間、全く喋らなかった気がする。


 対人では喋らなくなる癖のようなものがあるのかもしれない。と、考えていたため、気付かないうちに、というテイで、私とアルメルの後ろに2人の野盗が忍び込んでいた。


 念のため能力を展開しつつ、まだ様子を見ると、野盗は背後から私とアルメルの首元に刃を突きつけて、寸止めする。


「残念だったな冒険者、人質だ!」


 私とアルメルを人質に取り、シンシアの動きを止めようという魂胆だろう。及第点の対応であり、それ以上でも以下でも無い戦力だった。


 シンシアは黙って私を見る。そして、首を横に振った。どうしたのかしら。私とアルメルは人質に取られているので、シンシアのサインは解らない。私に首を横に振るサインについて、私は知らない。というテイで行くわね。


「形勢逆転だな、冒険者の兄ちゃん」


 野盗の1人が言うけれど、シンシアはため息をひとつ吐くだけだった。相変わらず、何も喋らない。


 シンシアが喋らないので、私が喋る事にした。


「野盗の皆さま、歓迎いたします。わたくし、アルメル・オース・ファランの妻、クリスティーナ・ルーサー・ファランと申します」


 その名乗りに、シンシアと向き合っている野盗が吐き捨てる。


「おい女、喋んな、命が惜しくねぇのか」


 つれない対応に、私は続ける。


「ご安心を。この方ではわたくしは殺せませんから」


「なんだと?」


 挑発発言に乗って来たのは、私に刃を突きつける野盗。


 その野盗は私の首を掴み、刃を私の目の前に突きつけてくる。


 シンシアが首を横に振り続けるのが見えた。私ではなくアルメルにも同じサインを送っているようだ。でも、もう遅い。


 私に刃を突きつけていた野盗が、そのまま私の目をくり抜く――のではなく、アルメルに刃を突きつけている野盗のこめかみに、刃を突き刺した。


 アルメルを人質に取っていた野盗は成すすべなくその場で力を失い、倒れる。


 そして、私を人質に取っていた野盗は、


「え、え? いや、は? ちが、な、なん」


 言葉にならない様子で、動揺しながら、なすすべなく私を解放し、今度は、自分自身に刃を突きつけた。


「な、なな、なん、ちが、はあ?」


 混乱する野盗。


 魔眼の他にもうひとつ私が持つ能力。魔眼で透過した筋肉を操る能力。私はこれを駆使して、人の動きを強制出来る。今、私の後ろに居る野盗は、私の思うがままに動く。


 だから、私は言う。


「残念ですが、野盗の皆さま。人質です。全ての武装を解除した上で、お引き取り願う事は可能でしょうか」

ToDoリスト


・浄水装置の作成 ← clear

・上水配管の設置 

・定量の水を流す仕組みの設計

・封水を伴う排水設備の構築

・浄化槽開発

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