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異世界貴族に転生したけど思ったより不満だったので  作者: 南乗七史
第3章・食糧事情が問題だったので

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第17話・初めての野営なようで

 馬車に乗って草原を移動する。シンシアに冒険者について云々を聞こうと思っていたが、馬車を操れるのがこのメンバーだとシンシアだけなので、移動中には聞き出せなかった。なので俺は、馬車に用意していた小窓から外の景色を楽しむ。


「アルメル様、あれはなんですの? じゃなくて……なにかしら?」


 一緒に外の風景を楽しんでいたクリスティーナが、イディムの森の反対にある岩山のほうを指差した。山脈が連なっているためどこを指差しているかは解らなかったが、何について聞きたいのかはすぐに見当が着いたので、説明する。


「パラノメールの城壁の外にはいくつかの小要塞や見張り台があるんだけど、多分そのうちのひとつだね。因みに、あの山脈、面白いんだよ」


「面白い? 何がかしら」


「我が国、ディグステニア王国は、あの山脈をパラノメール山脈と呼んでいる。隣接する他国からの侵攻を大幅に阻害してくれる様が、王国を守る盾みたいだろ? あの山脈の近くに作られた城郭都市パラノメールは、あの山脈から取られた名前なんだ。そして、パラノメールを治める貴族が『王国の盾』と呼ばれるのも、あの山脈のイメージから来ているらしい」


「まぁ!」


 気持ち良いくらいのリアクションをしてくれたクリスティーナ。勉強して最近やっと知った話なので、誰かに語りたかったんだよね。


 しかも、話はこれで終わりじゃない。


「そういう特徴的な山脈だから、国によって呼び名が変わるんだよ」


「え!? そうなの!?」


 敵対する国同士では同じ地域を違う名前で呼ぶのは普通の事だ。だが、他国からの情報が入ってきにくいこの世界にとって、他国がどう呼んでいるかを知る機会は少ない。


 勿論、戦時下でないなら出入りも交易も可能だが、わざわざ山の名前を調べようとする者は少ない。誰に話しても驚いて貰えると確信して、接待トーク用に調べておいたのである。これが元営業の嗅覚だ。


 そうこう雑談をしているうちに、目的地に到着する。イディムの森前にある、現役の見張り台だ。


 以前、サングラス作成のために一時的に借用していた廃墟ではなく、騎士達が働いている見張り台。これらの施設は、見張り台でもあると同時に、イディムの森に入る冒険者達の馬車置き場であったり、商人達の休憩所としても解放されている。森に入るため、馬車をそこに預けるのだ。


 騎士達からの挨拶を受けつつ簡単な手続きを済ませ、森へ入る。シンシアがやたら大きな荷物を持っている。申し訳無いので一部を持とうとするが、固辞された。


 そんな大荷物を持ちつつ先頭を進むシンシアが、歩きながら解説した。


「エレメントは自然環境ならどこにでも現れます。水場では水のエレメント、溶岩溜まりでは火のエレメント、岩場なら石のエレメント、って具合っすね。だもんで、イディムの森を流れる川沿いを進みます」


 そうすれば、水のエレメントと、その他、森特有のエレメントで複数の可能性を確保できるからだろう。


 効率は良い。効率は良いが、ただ効率が良いだけの作業には必ず裏がある。


「水場進む。危険」


 と、一番後ろで殿を務めるサーシャが言う。


 そう、川という事は当然、そこは野生の水場である。


 あらゆる生物にとって水は大切だ。多くの獣、虫、魔獣、魔物が、水を求めて集まる場所。


 だからこそ、危険。


 そして、危険だからこそ、俺は言う。


「他の素材も集めながらエレメント探索が出来るわけだ」


「そうっす」


 シンシアが指を鳴らして正解を伝えてくれる。


「エレメントはレアじゃないっすけど、狙って遭遇するなら1日じゃ無理っす。ただ歩くだけの数日っていうのも退屈なんで、良いもんがあったら拾いながら進むとしましょう」


 との事。


 それはそうだ。時間は有限。『ついで』は大事だ。


 そう、ついでは…………。


 ワーウルフの群れ5体が出現! 大荷物を置いたシンシアが、二刀流にて数秒で制圧。


 スライムが出現! 荷物の中から火炎瓶のような物を作成したシンシアが即座に処分。


 バーサークベアが出現! 何故か動きが鈍い巨大熊をシンシアが圧倒。


 夕方になってしまった。水場から離れ、近くにあった岩山の風化穴に、シンシアが焚火とキャンプ地を設営。


 水場で確保しいた魚を焼き、荷物に隠していた塩と黒パンで晩御飯の支度をシンシアがして、貴族である俺やクリスティーナでも安心して寝れるように草と毛皮で布団を作ってくれて――これ子連れのキャンプや。


 全部シンシア。全部パパがやっちゃうキャンプ。この仮拠点にした小さな洞窟も、たまたま見つけたというより、ここにある事を知っていた感じで、今日はここに泊まるつもりで動いてたっぽいし、なんなら俺今日1日なにもしてないからね。この洞窟での作業中に気持ち程度の光魔法を使っただけだ。


 その上、


「サーシャ、見張りの前後はどちらが良い」


「決めていいの?」


「俺はどっちでも良いぞ」


「じゃあ、私、先」


「解った。頃合いを見て起こしてくれ。……すんません、アルメル様、姫様、自分、先に寝ます」


 一通りの準備だけしてさっさと寝てしまった。睡眠に着いたのは一瞬。目を閉じて30秒するかしないかで寝息を立て始めていた。


「すごいわね、あなたの私兵」


「俺も、こんなにすごいとは把握してなかったよ」


 賃金を上げる必要があるだろう。


 いや、強いのは知っていた。2,3年前まではスレイン兄と互角だったというような話を聞いた事がある。


 こんなにも、戦闘以外の段取りも手際が良いとは思っていなかった。


 焚火で暖を取りながら、寝る前の時間、少しだけ、クリスティーナと2人で話をした。サーシャは洞窟の外で見張りをしているため、大きな声で喋らなければ2人っきりの会話。


「楽しいわね」


「そうだね」


 正直、安全だから、というのが大きいだろう。仮にシンシアとサーシャが居なかったら、俺は絶対に穏やかな気持ちではあれなかった。


 でもまぁ、遠足にしたって研修にしたって最初の1日は楽しいものだ。エレメントのコアを確保出来れば明日にでも帰れるが、確保出来なければ、持続可能なまでこの生活は続く。そうなった時に、温室育ちの俺とクリスティーナの健康が持つのか? このメンタルを維持できるのか? それがネックになるだろう。


 少しだけ。本当に少しだけ、今日のシンシアやサーシャの活躍と、お互いに何が出来たかの些細な武勇伝を語り合って、その夜は眠りについた。

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