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異世界貴族に転生したけど思ったより不満だったので  作者: 南乗七史
第3章・食糧事情が問題だったので

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第15話・アドレナリンが出ているようで

「突然変異を抑制するシステムを仮に魔化抑制装置と名付ける」


 そう前置きをしてから、俺は説明を始めた。


「魔法攻撃耐性が高い魔獣や魔物の素材等を用いて、魔力が通過出来ない空間を作る。その内部で魔力を魔法に使用する妖精魔法を定期的に使えば、その内部は魔力が無い、又は少ない状況が作れるはずだ。魔力が少なければ少ないほど突然変異は産まれにくくなるはずだ。これが、魔化抑制装置の全体像」


 その説明に、まずシンシアが言った。


「となると、まずは魔法攻撃耐性が高い魔獣や魔物の素材が大量に要るっすよね。畑全体を覆えるほどの量となると莫大です。とてもじゃないが、一般の農家に普及出来る代物じゃない」


 それはその通り。しかし、


「畑全体を覆う必要は無いと考えている」


 俺は言った。


「どういうことっすか?」


 シンシアの問いに、俺は前世の理論をこの世界水準で説明するため、いくつかの要素に分解して解説する事にした。


「確認だけど、突然変異は突然変異として産まれてくる、というのは確定で構わないのかな。今まで普通に生きて来た人間、動物、植物が、ある日いきなり魔化した、みたいな事は、無いと考えている」


 シンシアは頷く。


「聞いた事ないっすね。因みに姫様はどうっすか?」


 シンシアに問われたクリスティーナは、首を横に振った。


「学んだ知識の中にはそのような話はありませんでしたわ。しかし、私はもとより鳥籠の鳥。ずっと部屋から出ていなかったので、世間の常識には疎いです」


 との事。まぁ、その点は無いという事で確定して良いだろう。というのも、


「それはおそらく、空気中に漂う無作為な魔力程度の影響力では、既に誕生している生き物に影響を与える事が出来ないからだ」


 サーシャが首を傾げる。クリスティーナは理解しようと一生懸命に考え、シンシアはどっちともとれない表情。なので、追加で例え話をするために、近くの机に向かい、ペンを持ち上げた。


「俺の右手の腕力を、魔力だと思って欲しい。例えば俺の腕力という力は、このペンを持ち上げるという形で、影響をもたらす事が出来る。しかし、俺程度の腕力では、この机のほうに影響を与える事は難しい」


 ペンを置いて、ぐいぐいと、片手で机を持ち上げようとする。当然、ぴくりとも動かない。この辺りは流石に10歳児の腕力なのだ。


「このように、限られた力には限りがあるんだ。少なくとも、空気中に漂っている程度の魔力では、誕生前の小さな個体の時じゃないと、影響を与えられないんじゃないだろうか」


 3人が「おお」と声を揃えて理解してくれたらしい。伝わったようで何よりだ。


 続けて、


「なら、小さな個体とはどの段階か? 誕生前ならいつでも良いのか? それは多分、否だ。空気中に漂うひとつの魔力が影響を与えられるのは、多分、生命になる前の段階までだ。作物が種を作り始めた瞬間か、花粉の段階。おしべとめしべの段階。鶏が卵を体内で作り始めた瞬間、または、黄身が生命に切り替わる前の段階の、生命になりきる前の段階でしか、魔力は影響を与えられないはずなんだ。なにせ、今生きている生命に対しては、虫すらも突然変異をさせられないのだから」


 精子や卵子の段階、あるいはそうなる前の細胞レベルの段階かもしれない。


 クリスティーナが言った。


「つまり、作物の場合、受粉する段階でのみ、その部屋に入れれば良いのかしら」


「そう。あるいは、種にする専用の作物をその中で作り、その中で育てた作物から取った種のみで農業をすれば良い。この理論が正しければ、理論上、これで作物の魔物化は減らせるはずだ」


 そう、この理論が正しければ、理論上。見当違いの可能性もあるが、


「やってみる価値はありそうっすね……」


 と、慎重に呟くシンシア。


「そうですわね」クリスティーナがシンシアに頷いてから俺を見る。「そうなると次の問題は、素材よね」


「ああ、その辺りは手探りになっていくと思う。魔法攻撃耐性が高い魔物というと何が居るかな」


 3人に聞いてみるが、そこでクリスティーナは苦笑して1歩引いた。流石に、魔獣、魔物に関して勉強はしていないか。


 となると、戦闘経験が豊富な元傭兵団であるシンシアとサーシャが頼りなわけだが、


「スケルトンやゾンビは魔法攻撃に強い印象があるっすね」


 と、シンシアが言う。


 だが、サーシャが首を横に振った。


「痛み無いから、部位破壊以外が無効なだけ。多分、物理攻撃と大差ない」


「あー、うちの団は物理攻撃が強いやつばっかりだったから、物理のほうが効いてるように見えたのかもな。すんません、勘違いっす」


 との事らしい。


 一筋縄ではいかない。俺も考えてみる。ゲームなんかだと、魔法耐性が強いと言えば、


「ドラゴンとか?」


 定番だろう。


 シンシアは答える。


「確かにドラゴンは魔力耐性ありますが、個体ごとっすね。頑張れば狩れる程度のドラゴンなら、少し威力を下げる程度ですし、魔法攻撃が殆ど効かないレベルになると、まずもって刈れませんし、ドラゴンの皮は高額かつ大人気の素材なんで、農業に使うなんてとてもとても」


「そうか、当たり前だけど、そういう問題もあるか……」


 金額の問題というのはガラスの時でも思った事だ。なのに失念するなんて……恥ずかしさを隠しつつ、言った言葉を引っ込める。


「そういえば」ふと、1歩下がっていたクリスティーナが言った。「エルフやデーモンは魔法耐性強い、みたいなのを、何かで読んだ気がするわ」


 との。確か、この世界においてエルフやデーモンは『魔人』に分類されている。


 獣が魔化すれば魔獣。物が魔化すれば魔物。人が魔化すれば魔人、というような分類らしい。深いところは専門的すぎて解らないので、いつかアルフレッド兄が帰省してきたら聞いてみよう。


 ともかくその分類で言うとエルフやデーモンは元々が人間なのだ。それを素材にしようというのは、現代日本の倫理観を体験していまっている俺にとっては避けたい。それになにより、


「エルフやデーモンとは戦争した歴史もある。素材なんかにしたら全面戦争になっちゃうかな」


「そうね、失言だったわ」


 思いついたから言ってみただけ、というやつだろう。彼女は自分自身を「人では無い」と言い切っていたほど冷徹なほどの冷静さを持っている。多分、こういうちょっと驚くような提案はこれからもあるだろう。


 さて、他の意見はというと、待ってましたと言わんばかりにサーシャが言った。


「エレメンタル」


 と。


「え」


 魔法攻撃耐性がある、という事以外にも、いわゆるその素材を用いて部屋にするって事を考えていたからか、無意識に候補から外していた。


 エレメンタル。


 コアを持ち、対象の物質を操って自分を守ったり攻撃したりする、妖精魔法を使う魔物。確かに、魔法攻撃耐性は高いと聞く。その理由は確か、魔力こそがエレメンタルの餌だからだ。魔力を吸収して身体や機能を維持し、魔力によって妖精魔法を行使する。そういう魔物。確かに、条件としては合致するが、


「建材にするには、コアだけじゃ小さいかな……」


 なんとか活用する方法は無いかと考えつつも、捻りだせず、否定する。


 しかし、サーシャは自信があるようだった。胸を張りながら、ドヤ顔で言う。


「傭兵団の頃に戦闘経験済み。エレメンタルの近く、ダガーが届く距離、魔法行使困難。多分、その範囲の魔力、吸われてる」


「それだ!!」


 そうだ、周りから吸収するという効果があるなら、全面をその素材のみで作る必要は無い。


 ダガーが届く範囲というと1メートル程度だろう。1メートルごとにエレメンタルのコアを設置するというのも馬鹿にならない数のコアが必要になりそうだが、その辺りはガラスやその他の素材と組み合わせれば行けるか?


「エレメンタルのコアは使える。だが部屋をひとつ作るのにどれくらい必要になるだろうか。その数を揃えるのが大変なら、他の素材との組み合わせも検討したい。他にも何か、魔力を通さない物質は無いだろうか」


 尋ねると、クリスティーナが逆に質問を返してきた。


「その効果なら、コアを畑自身に等間隔で設置すれば良いのではないかしら」


「その方法はひとつの案としてやってみる価値はある。でも、コアに吸収されるまでは魔力が流れ続ける事になると、結局作物は魔力に接してしまう。俺の考えだと、突然変異は防げないと思う」


「そうね、言った後に私もそう思ったわ」


 魔力を通さない物質。


 魔獣や魔物に限らなくても良いのだ。ガラスのようなものさえあれば……。小屋を作れる素材で、農家に設置できるほど価格を抑えられるものが良い。なにも農家が直接買う必要は無い。この街、パラノメールの食糧事情さえ改善出来れば良いのなら、資金はファラン家が持ったって良いだろう。


 なにか、何か無いか。


「暗くなってきたっすね」


 いつの間にか夕方になっており、この部屋には光が差し込まなくなっていた。部屋を変えても良いが、ここにはせっかく魔法灯があるのだ、使おう。


 魔法灯を起動させる。レバーを動かすと、小さなジャングルジムのような形をした土くれのフィラメントが輝き出す。


 思えばこれの開発はトントン拍子だった。一緒にワーウルフの毛を加工したシャーリーは元気だろうか。土くれのフィラメント作成に尽力してくれたアルフレッド兄はご健勝だろうか。


 光魔法を閉じ込めた箱から、魔力を毛根から毛先に流す効果を持つワーウルフの毛を使って土くれのフィラメントへ運ぶ。この土くれのフィラメントは土魔法で作っており、既に魔力が満ちているため、少ない光魔法で土くれのフィラメント全体を発光させる事が出来る。そういう装置。


 そう。


 これは、そういう装置だ。


「…………これだ」


 ワーウルフの毛は、正確には『魔法』を毛根から毛先へ運ぶ機能のため、空気中の魔力を誘導する力は無い。


 だが土くれのフィラメントが証明している。魔法で作られたというほどに魔力が満ちている物質なら、魔力は通さないのではないか?


 出来るはずだ。出来ないとしても、試したい。そんな感情が沸き立つ。


 少しずつ、設計図が見えて来た。

ToDoリスト


・既存の農業の問題点の発見及び改善。 ←now

・場合によっては問題解決のための装置開発。 ←now

・生産量を増やすための土地と人員確保。

・場合によっては効率化のための道具開発。

・場合によっては調理器具の改善。

・新料理開発。

・新料理のレシピ拡散。

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