閉幕
あれから一週間。
私とセルジュはとある国の地方都市にいた。
クロードを通してアデレード家の現当主、つまりセリアの父の力で友好国の有力貴族に話をつけ、そこに身を寄せている。
今はホテルの仮住まいだが、落ち着いた頃にその貴族が今は使っていない田舎の屋敷に住まわせてくれるらしい。
なんでも、アデレード家と世代を越えて長くつきあいがあり、そのときに大きな借りがあるらしくようやくそれを返せると逆に喜んでいたとのことだった。
今日の朝、クロードから手紙が届き、あのあとの顛末が書かれていた。
フェリクスがレナを殺したことが多くの警備兵の目に留まり、事は大きくなった。
王族のスキャンダルは公にはならなかったが、目撃した者が多かったため口止めを完全にすることは出来ず、有力貴族の間では公然の事実となっていた。
フェリクスは対外的には体調を崩し、長期で療養をすることになったということになっているが、聖女を殺したという国の平穏を揺るがす事態を起こしたということで生涯幽閉されることになったということだ。
レナの死も国民には知らせず、聖女の力が不安定であるため修行中ということにしていた。時が立ち、聖女の関心が薄れたときに死を公表するらしい。
エリクは病んだフェリクスを、今は友人として見舞いにいっているようだった。
クロードは混乱した国をアデレード家の次期当主として奔走しているらしい。
手紙を読み終えるタイミングで、セルジュが私にお茶を入れてくれた。
それはあの思い出のムーンライト。
彼はほほえみ、そして私の向かいの席に座る。
もう私の執事ではない。ともに人生を歩む相手になったから。
「おいしいお茶をありがとう。セルジュ」
「いいえ、お嬢・・・・・・セリアがお茶を楽しむ姿が見られることが私の喜びですから」
そう言って、顔を赤くする。
ここからはゲームにはない物語。どんなことが起こるかわからないけれど、限られた選択肢の中で、生きていかなければならない。でも、その選んだ選択肢を工夫することは出来る。
これからも、私たちは支え合って生きていく。悪役令嬢と元奴隷。どんな人生だって乗り越えられる力はあるから。