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お茶会の準備

それから幾日かは平穏な日々を過ごすことが出来た。

フェリクスやエリクに接触することもなく、家でもクロードとは必要最低限の会話ですんだ。


ただ、彼らからの目線を痛いほど感じていた。


警戒しているのか、今までとの変化に戸惑っているのかわからないが、時折こちらを観察するようだった。


それは主人公であるレナも同様だった。

彼女に関しては困惑が一番大きいようだった。攻略対象の隣で彼らに微笑みかけながら、私のことをじっと見つめる。


役割通りにに行動しない悪役令嬢のことを不思議に思っているとか?

だとしたら、彼女もまた私のように転生してきたゲームのプレイヤーということになる。


だが、それを確かめる気はなかった。

ただでさえ死と隣り合わせの生活だ。選択肢が発生しやすい主人公に近づくことは恐かった。


だが、避けられないイベントもある。


1月ごとに発生する学園イベントだ。


4月はお茶会


5月は遠出


6月が学園祭


記憶がたしかであればお茶会はもうすぐ開催されるはずだ。


どのイベントでも悪役令嬢のセリアに盛大に絡まれていたのを思い出す。

無事、切り抜けられるのだろうか・・・・・・・。




4月に生徒同士の交流を目的として、大規模なお茶会が開かれる。


学園の庭園に椅子やテーブルを設置され、美しい花の中で攻略対象達とお茶を飲むシーンはとても綺麗でゲームプレイヤーの間でも人気のイベントだ。


ゲーム序盤で訪れるため、そこまで攻略対象とは仲が深まっていない。

逆に言えば、ここで大きく好感度をあげることが出来るイベントでもあった。


そこで悪役令嬢からの嫌がらせをされる。

確か毒を盛られそうになる、というものだ。

飲む前に紅茶の色が変わっていたことに攻略対象が気がつき、未然に防ぐというものだった。

状況的にはセリアがやったことは明白だが、決定的な証拠がないことから彼女は何の罪にも問われなかった。


もちろん、私は毒なんて持っていないし盛る気もない。


だが、ゲームのイベントに参加する以上気は抜けない。

出来る準備はしておかなければ。

悪役令嬢としての準備とは別に、参加者はそれぞれ持って行く物があることを知った。

女子生徒は紅茶を。男子生徒はお菓子を持ってきて、それをきっかけに交流をするということらしかった。


言われてみれば、ゲームで何のお茶を持って行くか選択肢が出ていた気がする。

単純に好感度をあげるアイテムとしか考えていなかったが、あれは当日必ず持ってこなければいけない物だったようだ。

このことは生徒なら当然知っていることらしく、しばらく周りとの交流を立っていた私が知ったのは、クラスメイトの会話をたまたま聞いて知ったというものだった。


常に取り巻きに囲まれていたセリアは、いまやすっかり学園でぼっちとなっていた。


紅茶であれば、アデレード家の中に腐るほどあるだろう。

だが、考えてみればこの世界に来てから家と学園しか知らない。

家の中にいても、クロードとはちあえばゲームウインドウで死の選択を迫られる可能性があるので、いつだって気が抜けなかった。


外の方が安全なのかも。


それに、イベントに備えて考えていることもあった。

私はセルジュを呼んで、買い物に出ることにした。

「お呼びでしょうか?」


「えぇ。明日のお茶会に備えて、ちょっと紅茶を見に行こうかと」


それにセルジュが笑顔で答える。

「かしこまりました。では、出かける準備をいたしょう。護衛の騎士も手配いたしますね」


アデレード家には専属の騎士団がいる。

家の者が外出するときは護衛としてついていくらしい。


だが、それでは息が詰まる。セリアを嫌っているのは使用人だけでなく騎士も同様らしく。

敷地の中にある訓練場を通りかかったときに、騎士の陰口を聞いてしまっていたのだ。

アデレード家にふさわしくないとか、守るに値しない令嬢だとか。

ここで騒ぎを起こしても、とその時は知らない振りをしたが、気分転換に自分を嫌っている人達と一緒に行きたくはなかった。


少し考えてから、セルジュに提案する。

「護衛の騎士はいらないわ」


セルジュは困惑しながら言った。

「ですが、外出の際に何が起こるかわからないので騎士は必ずつけるようにという決まりになっています。もし、お嬢様に何かあったら・・・・・」


心から心配するセルジュに、わがままを言うのは良心が痛む。

けれど、そこは譲れなかった。

「わかった。では、アデレード家の者とわからないような格好で行きましょう。簡素な服を着ていれば、目立たないでしょう?馬車も家のものではなく、町の業者のものを使えばいいし」


私の提案にセルジュは考え込むも、まだ心配そうだった。

「ですが・・・・・・」


「わかった!セルジュも一緒に来て!」


セルジュは目を丸くする。

「ぼ、僕がですか?」


「えぇ。セルジュが守ってくれればいいのよ。それに、セルジュはこの前まで食料庫の管理をしていたでしょう?食材のお店には詳しいだろうから、案内してほしいし」


ゲームのイベントは学園や攻略対象に関するものばかりだ。

それ以外であれば特に何も起こらないだろうと見立てていた。

だから、セルジュに守ってとは言ったもののあくまで彼を納得させるための言葉だった。


セルジュは迷いながらも、最後はうなづいてくれた。


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