レーザービームと拳と
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放たれたのは、レーザーだった。
きゅどっ!
と、全身に衝撃が走る。
「っつっ!?」
一瞬だけ痛みが走った。
ちょっと熱いヤカンとかに触った感じだ。白蛇は、そんな俺の反応を見て嘲笑う。
ぐるりと体躯を躍らせ、俺を見下ろしながらチロロ、と舌を出す。
『はっはっは! 今のを耐えたか、中々しぶとい! だが――』
白蛇がまた口を大きく開ける。
ほとんど間を置かず、また巨大な光が収束し、今度は乱反射するように無数のレーザーとなって、半透明の俺の身体を穿ってくる!”
あっつ! あつつつっ!!
立て続けにやってくる灼熱感に、俺は全身を暴れさせる。
ああもう腹立った! ただでさえ腹が立ってたけど、これはもうとびっきりだ!
「あっついな! 何すんだこの蛇!」
『また我を侮辱……いや、熱い? それだけか?』
「当たり前だろ。ちょっと火傷したかもしれないだろ!」
俺は怒りに叫ぶと、白蛇が呆気にとられたようにぽかんと口をあけていた。
なんだ。情けないぞ。
俺は目を細めつつも、反撃に出る。
「覚悟しろよ!」
『ふざけた真似をっ!』
白蛇が牙を剥いて迫ってくる。けど、遅い。
俺は素早く《同化》スキルを解除し、三〇〇人に分裂する!
『――なんだと!?』
驚く白蛇。
そこに決定的な隙が生まれた。
俺と『俺』たちは、容赦なく攻撃を仕掛けるべく、一気に迫った。
「『『俺たち三〇〇人を、なめんなっ!』』」
俺たちは一気に拳を叩きつけた。
白蛇に反撃の暇なんてない。
――ドッガヵアアアアアアアン!!
と、まるで地鳴りでも起こったような轟音が発生して、白蛇は一瞬にして彼方へすっ飛んでいった。
って、あれ?
きらーんってお星様になった白蛇を見送りつつ、俺は目を点にさせた。
あ、もしかしてこれって、あれ?
ぶっ飛ばしちゃった?
『はーっははははは! さすが、さすが我が主! 無敵だな!』
そんな俺の隣で、ボロボロになったフォルトが喝采する。
いや、そんな褒めないで? っていうか無敵て。
「うお、おお、おおおおおお――――っ!」
なんて思ってたら、下からも大きい喝采がやってきた。
見下ろすと、町中の人たちが拍手したり手をふったり、とにかく興奮している様子だ。
って、え、ええええ?
困惑しているのはただ俺一人だった。いや、違う。『俺』たちだ。
いや、なんでだよ。
『はっはっは! 考えてもみろ。この町を毒という恐怖に陥れたバケモノを倒したんだぞ? それもたった一撃で。はっはっは! それに、町のみんなを助けたではないか!』
「いや、そりゃそうだけど……」
『いってしまえば、主は英雄になったのだ!』
……はい?
首をきょとんを傾けていると、下から声がまたやってきた。
「「「カーナータ! カーナータ! カーナータ!」」」
ってなんで俺の名前!?
さっと姿を探すと、フェリスが舌をてへっと出していた。くそ可愛いな! 許す!
けど、これってかなり大事になったんじゃないか?
俺のこの予感は、的中することになる。
とりあえず空中にいたら魔力をただ消費するばかりなので、フォルトを治療してから町に戻る。すると、まずもみくちゃにされた。
めっちゃ喜ばれた。
人生の中で、最大限に褒められまくったのである。
もちろん中には俺が亜人族だからって揶揄る連中もいたが、そんなのごくごくわずかで、俺は英雄扱いされてしまったのだ。
しかもとんでもないことに、自治政府の頭領にまで表彰されることになり、俺は勲章を授与された。
これはこの町が大都市であり、かつ、経済的にも非常に大きい影響力を持つからだ。もしこの町が機能不全になっていたら、またその町を巡って戦争が起きていたという。
実は結構不穏だったらしい。
けど、俺という《英雄》が出現し、町を守ったことで、伝説の再来となり、町の立場がまた強化されたらしい。勲章を授与したのも、それを周囲へ知らしめるつもりでもあるようだった。
「なんだか、すっごく大きいことになっちゃいましたね」
豪華なスイートルームに、ふっかふかのベッド。
この町にきたばかりの安宿とは桁違いだ。
フェリスはその柔らかく跳ねるベッドの感触をひとしきり楽しんでから、最初に出会ったころと変わらない笑顔を俺に向ける。
「そうだなぁ」
俺もベッドに腰をおろして、微笑む。
「しばらく、どころか、当分はいないといけなくなったしな」
テーブルでは、チョビが紅茶を楽しんでいた。
そう。
俺は勲章を授与されたと同時に、一年間は町に住んで欲しいと打診されたのだ。
どうやらその間に統治をより強化する狙いらしい。
その間の生活保障はされるって条件もあったので、俺は了解した。
この町に住むってだけで、外に出ちゃダメってワケじゃない。日帰り旅行とかは許されているし、これまで通りギルドの依頼だって受けられる。
ただまぁ、その、俺のギルドのランクが上昇したんだけどな。
その、Sランクに。
大都市を、ドラゴンでさえかなわないようなバケモノを倒した俺を、Cランクにしておくことはできないんだとか。
よって、かつての英雄たちが手にしたというSランクを俺にも与えられたってワケだ。
これは亜人族では初の快挙である。
もう急激すぎる大出世に、俺が一番ついていけてなかったりする。
あーもう、ほんと。
「まぁ、期限がくるまでに次にいく町を決めておけばいいんじゃね?」
「どこにいっても歓迎されまくるだろうけどな」
「ありえそうですね」
『まぁそうだろうな』
天井近くのシャンデリアの周りを飛び回っているフォルトまで。
「それってリアルに想像したくないんだけど……」
俺はげんなりして返しつつ、あることを閃いていた。
いや、これを利用したら、亜人族の知名度アップに貢献できるんじゃねぇのか? いや、フツーにできるだろ。
俺の目的はゆったり旅でのんびり暮らしていくことだから、ぶっちゃけ、この一年間は満たされたことになる。そしてもう一つ。亜人族の立場向上。
ちょっと、真剣に色々と考えてみるか。
俺はベッドに寝転がる。
ああ、柔らかい。こんなの、元の世界でも味わったことないなぁ。
このまま溺れてしまいたい。
でもきっと、それはできないんだよな。
「……――なぁ」
ふと、俺は声をかける。
「これからさ、もっと、っていうか、もうちょっとだけ頑張ったら、亜人族の人たちも、大手をふって歩いていけるようになるかな?」
そんな問いかけ。
沈黙は、少しだけあった。
「なる、と思います。絶対に。カナタさまですから」
「俺もそう思う。いつか、魔族の町にもきて、色々と革命してくれそうだし」
『はっはっは! 俺様も同意だな。主は必ず何か大きなことを成し遂げるだろう!』
「いや、そういう大袈裟なことじゃなくてだな」
いつの間にか世界を変える話になってんぞ。どんだけスケール大きいことさせんだ。
俺はちょっとだけ。ちょっとだけ頑張るだけだ。
「とにかく、難しい話は無しにしてさ、これからもよろしくってことで」
半分くらい苦笑しながら顔をあげると、みんな俺のことを見てくれていた。
「もちろんです! フェリス、ずっとついていきます!」
「俺も同じだぜ、兄貴」
『言うまでもなかろう! はっはっは!!』
――ふふ。
俺は嬉しくて、ちょっと泣きそうになった。
ちぐはぐだらけな仲間だけど。何よりも心強い仲間だ。
俺は彼らを大事にして、これからを生きていこうと思う。
そう、三〇〇人の『俺』たちもな。
これにて最終話です。
評判が良くなればまた書くかもです。
応援、本当にありがとうございました。
新作でお会いしましょう。




