episode4(11) 私は
橘さんとの間にまた距離が生まれた。もう四日間ほど一言も話していないし、毎日のようにかかってきた電話もかかってこない。
「待って、橘さん」
学校での休み時間。廊下で橘さんを見かけた私は思わず声をかけた。
「何? 委員長」
久しぶりに聞いた橘さんの声になんだか嬉しくなった。
「いや、あの~」
「実莉となにかあったんでしょ。それくらいわかる」
どうやら見透かされてしまっていたようだった。橘さんの声色は暗い。
「ねえ。私のことどう思ってる?」
「いつもからかってたのに何今頃聞いてんのよ」
「好きなんだよね? それはどう好きなの?」
勢いに任せてがつがつ聞いてしまう。それだけ橘さんの本心が知りたかった。ただ友達として好きなだけ? それとも……
「もういいの。私と委員長はただの友達。それだけなの」
「それってどういう」
「うるさいな! そうやって人の気も知らないでいろいろ聞いてこないでよ!」
みんなの視線が集まる。橘さんは吐き捨てるように言うと、走り去っていった。やっぱり怒ってた……違う、悲しそうに私には見えた。橘さんも私が好き、もう嫌われちゃったかな。だけどこのまま終わっていいはずがない。橘さんの本心を、自分の本心を知らなきゃいけない。
私は放課後あの公園に行った。ここに来るたびに橘さんとの日々を思い出す。ここで始めて練習してからもう一か月。思い出しているうちになぜか涙があふれてきた。
「橘さん、ごめんなさい……」
「えっ?」
声のした方には橘さんがいた。
「橘さん!」
ベンチに座っていた橘さんに私は飛びつく。橘さんも涙を流していた。私と同じように、ここにきて泣いていたのだろうか。
「委員長。やめて」
「いやだよ。離したくない。私、橘さんが好き!」
私の答え。ここにきて、やっと答えが出た。この一か月、短い間だったけど橘さんと一緒にいろんな時間を過ごすうちにどんどん惹かれていった。素直じゃないところ、ちょっぴり恥ずかしがり屋なこと、本当はまじめで優しいこと。知らなかった一面を知ったらもっともっと知りたくなってきて。もっと深くまで橘さんを知りたい。
「実莉より?」
「実莉ちゃんのことも確かに好き。だけど、橘さんへの好きは違うの。胸がドキドキするこの感覚がその証拠」
「……別にうれしくなんかないから」
橘さんに思いを伝えられた。だけど、こんなことが許されるのかな? 私は橘さんを想っていながら実莉ちゃんとあんなことをして。実莉ちゃんとはどうなるの? 私の心のもやもやは、完全には振り払えなかった。




