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第百六十一話 グエンの帰還

「問題はこの黒い飛竜か……今までこんなやつは出てこなかったはずだが」

「切り札は最後まで隠すものです。こちらの力を見るためであればああいうものが隠されていたとしても不思議ではないでしょう。事実、あの帝都の攻撃の後には翼竜だけでは不可能と思われる大きな傷跡がありました。あの飛竜の攻撃と見て間違いないでしょう」


 艦長は眉間にしわを寄せて映像に残された黒い飛竜を見ている。

 恐らく、自分も今似たような表情をしているのだろうとサイラスも感じていた。

 翼竜を遥かに凌ぐ射程と範囲。

 何よりも厄介なのは触れただけで消えてしまうというその力だ。


 そして……。


「何よりも問題なのは……なぜ、偵察がバレたかですよ。あの時までセイカーはレビテーションを使って無音飛行をしていました。高度もセイカーが砂粒よりも小さく見える距離のはずです。こちらと違って高性能レーダーの代わりなど持っていないのに何故……」

「普通に視えたんじゃないか?」


 サイラスが考えていると、サイモンが横から口を出した。

 視えた……と言っても意識して見ない限りはなかなか見つけることは出来ないはずだ。


「ああ、確かに。私も君達がそこにいるというセイカーを大分近づくまで視えなかった。音があってもそれだから人には視えていないと言うのは分かる。だが飛竜は別だ。奴らは大空の覇者だったんだぞ?視力は我々の比ではない」

「空の上から獲物を探して攻撃する……なるほど、確かに目が良くなければ難しいですか。盲点でした」


 飛竜がはるか上空を飛ぶセイカーを見つけ、それを迎撃するために飛んだとすれば……確かに考えられなくもない。

 確かにかなり離れた距離でもしっかりとセイカーの方向へと顔を向けているのが写っているのだ。

 明らかに捕捉している。

 救いは速度はセイカーの方が上、ということだろう。

 それでもあの長射程の触れてはいけないブレスと言うのは避けにくい。


「それで……どうするのです?偵察を続けるのは危険では……」

「ええ、確かに艦長の言うとおりこのまま続行は難しいでしょう。偵察用ポッドを一つ失った今、これを失うことはもう出来ません。それに……下からセイカーを発見できる目があることを知り、向こうも空を飛んでいたものが敵であると認識してしまった今、同じ手は使えません」


 あんなもので何度も落とされていてはあっという間に戦力が削がれてしまう。

 しかし……だからといってアレをそのままにしておくということも出来ないだろう。


 あの飛竜は今のところ1匹しか確認されていない。

 他にもまだ居るのか、もう居ないのかは分からないが……最優先で叩くべき相手だ。

 トレーラーに関しても荷台に積まれたものが何なのか、それも気になるところだが……。見た目からしてミサイルなどを積んでいるわけではないと思われる。

 どちらかと言うと、兵士、もしくは……魔鎧兵辺りが詰め込めそうな感じがした。


「隠れていれば見つからなかったものを、何故出てきた?」

「……分かりません。単純に気づかず、飛竜が気づいて排除しようとしたか……あるいはおびき寄せようとしたか……」

「釣られてあれに攻撃をしようとすれば2機とも助からなかっただろうな。確かに」

「恐らくは。そうなれば少し前からこちらが見張っていたのに気づいていたということになります。飛竜の目だけでなく、観測機器が無いともいい切れませんね。対空兵器も出されると面倒です。……とりあえず魔導車に関してはホーマ帝国と同等と思っていましたが、これは修正する必要がありますか」

「我々と同等、と考えておいたほうが良いかもしれないな。こちらよりも上ということは無いだろうが……」


 魔導車の技術は確実に向上していると見ていい。

 ホーマ帝国でも戦車として活用していた通り、大砲などを積んでの遠距離攻撃手段としても優秀なものだ、使わない訳がない。

 どれだけの数を作っているかなどは全くわからないが、エフェオデルの人口からしてもそこまで多くないだろう、というのが帝国の見通しだ。

 ハイランドとしても似たような結論となっているが、魔鎧兵にアンデッドを入れて操るという手法を取っていた以上、あまり楽観視はしていない。


 それにしても。

 帝国に居なかったはずの黒い魔物はどうやって従えているのか。

 ディノスはあくまでもミレスの司祭で、ある程度精神支配が出来る精霊術もしくは死霊術辺りは出来るだろうが、それは複数を操ると言うまでは行かない。

 アンデッドであればやり方次第で可能とは言え、生きている魔物は自分の意志もあるためそれを押さえつけてとなると難しい。

 精霊術であれば正当性が無ければ精霊は手伝うことすら無いのだ。


 別な手段で従わせているのか、何なのか。

 それは分からないが……エフェオデルにはテイマーと呼ばれる存在も居るという。

 詳細は不明だが、魔物を従える術を持つ特殊な人材であるとか。

 詳しく調べる前にディノスに奪われたか殺されたかしているらしく、今となっては本人たちの口で語られた一部の証言のみしかない。

 それでも、強力な魔物を従える場合には1人につき1体までなどの制限がつくという。


「わからないことが多すぎるな」

「ディノスに誰か協力者がとも思いましたが、そんな魔物を従えているなど結局人には出来ないことです。であれば、ダンジョンケイブを味方につけていると考えるほうが自然でしょう」

「……ダンジョンケイブに居る魔物を味方につけている……と?」

「誰も見たことのない魔物、ディノスに従い、我々を襲う……。ミレスではダンジョンケイブを乗っ取り、資源を堀ってどの国にも依存すること無く自分達だけでずっと生き延びてきたような国の生き残りですよ?そういう魔物が居るところがあってもおかしくないかもしれません」


 あくまでも想像ですが、と言ってサイラスは後部甲板を見やる。

 セイカー4。グエンが帰ってきた。

 コンラッド達セイカー乗りが全員で迎えている。


 しばらくして艦橋にノックの音が響き、艦長が応える。


「……失礼します。セイカー4、グエン。偵察任務より只今戻りました!」

「ご苦労だった。……聞きたいことはあるが……後にしよう、今は少し休むといい」

「いえ、いつかはこうなることは覚悟しておりました!問題ありません!」


 問題ない訳がない。

 腫れぼったい赤い目で言ったところでその心の傷が大きいことくらいは分かる。

 しかし、問題ないという。


 一通り報告を聞き、あまり記録されていなかった戦闘中について聞いてみる。


「任務中、黒い飛竜が突然飛び立ってきたのを見ました。しかし、ある程度上に上がってきたところで我々は場所を変えるために移動を開始。その間ずっとポッドの映像で飛竜を捉えていましたが……その顔がこちらを向いていることに気づき、全速で離脱することを決定したのです」


 その直後にブレスが機体を掠め、グエンの左主翼の先端と、キアの機体後部の一部と尾翼全てを消失。

 コントロールが難しい状況下でキアはなんとか機体をもたせながら加速し、射程外へと逃れようとしたものの……横に薙がれたブレスに巻き込まれて機体後部の一部を残して全て消失。


 グエンの機体も主翼など一部を何箇所か損傷しながらも空域を離脱することに成功。


「以上です」

「よく、戻ってきてくれた。彼の死は無駄にしない。必ずあれは叩き落とす」

「はっ!機体が直り次第、私も復帰します!」

「まずは身体を休めろ。その時が来ればランサーポッドフル装備で出してやる」


 グエンの機体は損傷した部分を交換するだけで終わる。

 その他の整備を含めても3日程度もあればすぐに出れるだろう。


 その時には偵察はもっと慎重に行うことになるか中止することになっているだろうが、出撃となれば全機フル装備で出すつもりでいる。

 ランサーポッドはその名前の通り、大量のランサーをその中に入れたものだ。全て放てばがらんどうの入れ物でしか無いため廃棄して新しいものを取り付けるだけですぐに補給が完了する。


 中身を投下型爆弾にした爆撃ポッドもある。


 敬礼して退室するグエンを見送り、艦長とサイモン、サイラスは顔を見合わせる。


「いずれ、この借りはきっちりと返す」

「ああ、この大空の覇者はどちらか、思い知らせてやれ。サイラス」

「あなたもドラゴンスレイヤーとして有名でしょうに、ハーヴィン候」

「……この宝剣も君らのお陰ですっかり魔力を取り戻したどころか、私が使ったときよりも魔力を蓄えている。あれに近づくことさえ出来れば私が両断しても構わんがね」


 そう言って腰に下げている剣に触れる。

 以前サイモンが両親を殺した飛竜を一太刀で屠り、ドラゴンスレイヤーとしてその名を轟かせる事となった宝剣。

 それに宿る魔力はマナを吸い上げ効率よく魔力へと変換するテンペストの技術によって、長年蓄えられてきたその当時の魔力量を短期間で超えた。


 今ならば昔の数倍の威力の剣となっていることだろう。


 そんな機会など来て欲しいとは思わないが、自分も上陸して戦いに向かう以上、その可能性は考慮するべきだろう。

 改めて気を引き締めるサイモンだった。


 □□□□□□


「……酷いね」

「改めて、敵のブレスの凄まじさと、攻撃手段の無慈悲さが分かります。ここを復興させるのにどれだけの時間がかかるかは分かりませんが……」


 1日でメールの街から帝都までを駆け抜けたテンペスト達は、帝都に入り、その一角で野営をすることになった。

 以前はこの門の周りで賑わっていた店や人々はもう居ない。

 明かり一つなく、静かに暗く闇に沈む帝都の景観はなかなかにくるものがあった。


 街や村に立ち寄って補給を受けることは出来ない。

 手持ちと、各国の倉庫経由でもたらされる物資が頼りとなる。


 朝早くに出発したとは言え、すでに辺りは暗く、今は魔導車のライトの明かりとテントから漏れる光だけが辺りを照らしている。


『二日後にはクラーテルに到着できるだろうと言っている。空から見る限りではここと大差ないのだろう?』

「そうですね。破壊の状態からすればここよりはまだ良いとはいえますが。あちらはまだ建物が残っていますので……ただし人的な被害などは激しかったようです」


 エフェオデルの攻撃を真っ先に受けることになったクラーテルは、ディノスの築いた軍事拠点を徹底的に破壊され、利用できないようにされた上で魔物を放たれて外に出ることができないままに食い荒らされた。

 その上で破壊の限りを尽くしたエフェオデルは、そのまま進撃していったということだった。


「そのクラーテルから先はエフェオデルなんだよね?」

「はい。エフェオデルの地形は南北に長く、深い谷によって全ての大陸と分断されています。クラーテルはエフェオデルの中心部に近い場所に位置しており、この付近には街などの建造物は一切ありません」

「それでもここまで来てわざわざ通ってくのは、ここが一番割れ目の幅が狭いからって話だけど……」

『地図を見る限りではそうだな。しかし本当に他の場所は無理なのか?北側の方で繋がっていたりはしないのか?』


 実際の所は海でたしかにつながっては居る。

 ただホーマ帝国の北側の海岸線は、海から上がることは出来ないような場所が多く、また上陸可能であっても狭いため大部隊を送り込むには危険すぎるのだ。


 大地の裂け目は深く、底は見えない。

 地の果てまで続いているというものも居るが、一定以上は雲がかかったようになっていて下が見えないという。

 また、北側の谷の幅は500mを超えており、エフェオデルもホーマ帝国もそこまでの長さの橋を作る技術はない。

 無理やり作ったところで、軍隊を乗せて進むには厳しい物となるだろう。


 対してクラーテルに掛かる橋は数十m程度で十分だ。

 これならば幅を広く取って重いものを通すという事も楽にできる。


「北の海に関してはこれから艦隊が向かうから、敵が居れば殲滅すると思うし……。渡ろうと思えば飛竜レベルの力を持った空を飛ぶ魔物とかにぶら下げてもらうしか無いんじゃないかな?」

「帝国の飛竜達も魔鎧兵だけでなく、兵士達を詰め込んだ箱を持って飛んだという実績があるそうです。ディノスの案だったそうですが」

「ならディノスはその方法でこっちにいつの間にか兵を送り込むことも可能か」

「可能ではありますが……それなりの数を揃えるとなると難しいでしょう。これからは偵察がなくなるので可能性を捨てきれないのですが」


 ただ、かなりのダメージを負って再起不能に近い状態のホーマ帝国をこれ以上襲ったところで、あまり意味は無いだろう。

 そしてこちらの行動に気がついて兵を向けるということもしないだろうと見ている。

 ただただ兵を消耗させるばかりか、自分の首を絞めかねない行動にしかならないのはわかっているはずだからだ。

 それであれば、居場所を隠して引きつけた上で罠にはめるか、一気に撃滅したほうが良いだろう。


「夕食の準備が整いました!」

「おっ。飯か!さっきから腹が鳴ってたんだ、話し合いとかは置いといてとりあえず食おうぜ」

「コリー……緊張感なさすぎ無い?まあ、おなかすいてるのは確かだけど。テンペスト、行こう」


 先程から漂ってくるいい匂いは食欲を刺激している。

 テンペストも実際腹は減っていたので異を唱えることはなかった。

 夕食はある程度食料の支援ということで港街においてきているため、追加が来るまでは少し少ないが……それでもニーナ達が頑張って工夫してくれたものだ。


 温かいスープは夜になって冷えてきた身体を温めてくれる。

 肉は塩漬けの保存食の物を使っているが、柔らかく煮込まれており塩気が疲れを癒やした。


 夕食後、テンペストとニールはエキドナに設置した風呂へと入る。

 狭く1人が入るのが精一杯の浴槽であっても、小柄な2人ならば余裕だ。

 コリー達も順番を待っているが、ニールがテンペストと一緒に入るのはその時間短縮もあるが、テンペストが望んでいるからだったりする。


 ニールもすでに慣れたものだ。


「あー……暖かい」

「欲を言えばもっと広くしたいところですが」

「戦場で入れるだけでもおかしいくらいだし、良いんじゃない?それに何日ぶりだっけ?こうやって身体温められるの……」

「7日ぶりです。臭いなども気になっていたので丁度良かったです」


 軽く身体を流す程度なら2日置きくらいにしていたものの、きちんと洗うことは出来ていなかったので体を洗うと垢が凄い。

 さっぱりとした身体で湯を入れ替えてコリーと交代した。


『テンペスト、良いところに来た。上を飛んでいる蝙蝠の群れに1匹紐がついているのが居るぞ』


 近くの洞窟や木などから飛んできたのだろう、蝙蝠達がばさばさと音を立てて飛び回っている。

 その中にエフェオデルの偵察が混じっているという。

 テンペストでは判断しきれないため、ギアズに教えてもらうと……1匹だけ動き方が他と違う物が確かに混じっていた。


「確認しました。狙撃します」

『うむ』


 レールライフル、ペネトレーターを取り出して威力を落として狙撃する。

 大きく長いサイレンサーを装備したペネトレーターはその音を吸収し、小石が当たる程度の音に減じてくれた。


『どうやら替えは居なかったようだ。攻撃に関しては見張っておいてやる。休んでいると良い』

「お願いします。また気づいたら教えてください」

『任せておけ』


 そういってギアズはケルベロスへと戻っていく。

 あれに乗っていれば索敵範囲は広がる。魔力の流れを敏感に感じ取れるギアズはこの部隊の優秀なレーダー役となっていた。


 この日、これ以上の接触はなく、無事翌朝を迎えることが出来たのだった。


 □□□□□□


「ディノス様、またやられました」

「魔力を辿られないようにしているはずだろう?なぜ見つけられる!」

「相手には優秀な魔術師が混じっている可能性が……。これ以上魔力を薄めるともう繋がりを保てません」


 エフェオデルの巨大洞窟の中、テイマーがディノスに報告している。

 これ以上小さくすると逆に魔力の調節が難しくなり、不安定になるため逆に見つかりやすくなるという。


「まあいい。見られていると思わせるだけでいい、これからも続けろ」


 テイマーを下がらせた後、ディノスは考える。

 つい最近、黒い飛竜……ペタオサウラをようやく使えるようにして、その目の良さを試すために外で監視させてみた所、遥か上空を音もなく飛んでいる何かを発見した。

 すぐにあの国の兵器である事はわかったため、ペタオサウラを仕向けた所片方をこの世から消し去った。


 片方は逃してしまったが、これであの小うるさいやつも落とせるとわかったのは大きい。

 しかしあれだけ高いところからこちらを見て何が分かるのかと思ったが、記憶の中に望遠鏡を更に強化したようなものなどがあったのだ。

 はるか遠くを見通すことの出来る目。それをあれに積んでいるとすれば……。

 こちらの動きは丸見えだっただろう。


 今から相手にする相手がどれだけ強敵なのかというのは嫌というほどわかっているが、それでも背筋が寒くなるのだ。


 もし、ここがアシュメダイによる結界によって隠されていなければ……。

 即座に攻撃されていたに違いない。


 誤算だったのはあの時に開発中の魔導車が結界の範囲外に出ていたことだが、すぐにペタオサウラが追い立てたために気づいていないことを祈るしか無い。

 あれはレギオンを輸送するために作ったもので、運転もレギオンの内1匹がやっている。

 なるほど確かに人と似た体型で、器用で物覚えが異常にいい。

 一度教えればそれを覚えて使い出すのだ。

 今回は操縦が上手く行かなかったというのが原因だったが、もう二度と過ちは繰り返さないだろう。


 ダンジョンケイブであるこの巨大洞窟は資源もそうだが、もう一つ別な世界が広がっているらしい。

 なんとも味気ないというか、あまり長居したくないような風景ではあるが、兵器のテストなどはここで好きなだけやれるのだ。


 お前はレギオンの本当の力を知らないと言われた時には、あの役立たずがなぜ……と思ったが……。

 これは人間の魔物版だ。

 知恵があり、道具を使い、すぐに増えてその知識を継承する。


 次々と代替わりしていく速さは流石に驚いたが……それを補って余りある強さを秘めている。

 武器と乗り物の量産はすでに取り掛かっている。

 まだ帝国を移動中であるというのであれば、なんとかギリギリ間に合うだろう。


 ミレスで小砲と呼んでいたライフルも性能を上げ、ある程度連射も可能となり、剛性も上がった。

 帝国で開発していたものなども恐ろしい速さで試作品が仕上がり、すぐに製品として使えるレベルへと出来上がる。

 それを使うのもレギオン達だ。

 魔力をあまり持たないとは言え、撃ち出すための発火に必要な魔力程度は持っているので撃つのにも特に問題はない。


 要するに……大人数の戦力が短期間で育ったのだ。

 人間と違ってかなりの替えがきく。恐怖を知らず、与えられた指示を忠実に守る完璧な兵士だ。

 アンデッド共よりも使い勝手がよく、強力な戦力となるだろう。


 言葉は話せないが、こちらの命令は通じているし、説明したものも全てわかっている。

 これならばもしかしたら……。


 などと考えていると、1匹のレギオンが来た。

 服装からして開発者だ。ということは……。


「出来たのか?」

「ギキッ!」


 頷いた。案内されるままについていくと、人の背丈よりも大きく、法撃用の筒が複数付いた装置があった。

 車輪を取り付けてあるため移動可能となっている。


「……丁度いい。あれを撃ち落とせ」


 空を飛んでいる翼竜もどき。それに狙いをつけさせて攻撃させる。

 光り輝く魔法の弾がかなりの速度で飛んでいく。複数の筒から連射されたそれは、ついに翼竜もどきを捉え、哀れな翼竜もどきは空中で四散する。


 今まで自分達に足りなかった、対空攻撃力の強化としてこれを更に作る。

 ペタオサウラでもなんとかなるのは分かったが、他にも帝国の飛竜やあの戦闘機なる乗り物はまだある。

 特に黒く大きなあれは脅威だ。

 全てがあれと同じような力を持っているとすれば、空に対する攻撃方法がないと絶対に凌げない。

 近づけてはならないものなのだ。


「気に入ったぞ!すぐに量産し、予定していた場所へ配置しろ!」


 短く返事を返してレギオンが走っていく。

 空に向けて大量の法弾が花を咲かせる様を想像する。

 飛竜程度ならば楽に落とせるだろう。後はあの戦闘機に対してだが……。こればかりはやってみなければわからない。


 最悪地上に向ければ弾幕を張ることも出来る。

 自分達だけがそれを出来ると思っているとすれば間違いであると教えてやる。



ついに被害が。

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