第百五十四話 帝都開放へ
オルトロスにケルベロス、サーヴァント、コットスと錚々たる装備が次々と降ろされていく。
ルーベルやコーブルクの船でもそれぞれに積み込まれていた陸上装備を半分ほど下ろしていた。
陸路を行くメンバーには歩きや馬は無く、全て魔導車に乗って高速移動を主にしている。
そうでなければ魔導騎兵で歩くため、速度に支障はない。
「おー……コーブルクもルーベルも大分形変えてきたね」
「そのようですね。やはりコーブルクは水陸両用にこだわっている感じはありますが……ルーベルは完全に陸上専用に割り切ってます」
「以前私がした忠告はきっちり取り入れているようですね。その代わり関節が弱そうですが……。恐らく自由度はサーヴァント以上ですよあれは」
陸上専用のルーベルの機体。
軽量に作られているのだろう、装甲的に問題のない所を肉抜きしてあり、複雑な形状はあまり無い。
その代わりにメンテナンス性が向上している様だ。
軍用というのがぴったりなくらいに無骨になっている。
「あれはあれでかっこいいね……。ちょっとホワイトフェザーっぽさあるかな?」
「私のホワイトフェザーは前面装甲を厚くしているため、正面からの攻撃にはかなり耐えられるようになっています。恐らく似たようなコンセプトになっているのでしょう」
「反対にコーブルクのは水陸両用か。こだわるな」
「前回の水中戦に味しめたんじゃないですかね?」
あの時は数機だけでかなりの船を沈めていたはずだ。
そして推進装置らしきものが見えているが、明らかにあの船に搭載されていた物を取り付けてある。
水中での動きは期待できそうだった。
形としてはもともと船を作っていたところだけあって、水の抵抗を考えたデザインになっているため曲面が多く複雑だ。
だからと言って陸上での活動が鈍いというわけではない。
頑丈に作ってあるので腕を振り下ろすだけで、その装甲がそのまま鈍器に変わるだろう。
恐らく重量もかなりある。
その代わりに犠牲になったのは柔軟性と器用さだ。
装甲が分厚く、可動範囲が狭まり、オリジナルよりも取り回しが効かない。
更に手を覆うように作り込まれたカバーがあるせいで細かい作業がしにくくなっている。
水中7割、陸上3割程度で考えた感じだろうか。
まあ、コーブルクは海に面している部分が大陸一多いため間違っては居ないが。
「それにしても……ホーマ帝国のはとことんミレスだな」
「ミレスだねぇ……」
「アレに似たやつで私は宵闇の森の中をボロボロになって脱出してきたんですよねぇ、よく生きていたと思いますよ本当に」
魔導車と魔鎧兵のデザインがほぼあの時のままだ。
もちろんホーマ帝国の意匠を凝らしているためある程度は変わっているが、大まかな形というかシルエットは殆ど変わっていない。
ある意味懐かしい物だ。
まだたったの一年ほど前の話のことだが。
「ん?ここに魔鎧兵があるってことは、元になった魔物も居るってこと?」
「ああ、そういうことになりますね。まあ、今となっては自分達で一から作り上げることが出来るようになってしまったのであまり意味はありませんが。どんなやつなのか少し気になりますねぇ」
解剖などもしてみたものの、生き物とは思えないその造形に混乱したものだ。
中には別な魔物が居たということだからどんな共存関係なのか見てみたい。
……まあ、倒したところで筋肉を素材として使うくらいしか使い道がなくなってしまうのだが。
電気信号によって動くのは人間やその他の動物と同じだが、魔力を通じることによってその真価が発揮される強靭な筋肉は、有機物のような見た目にも関わらず腐ることもなく血液を必要としない。
まるで生きているゴムのような感じなのだ。
などとそれぞれの装備をしげしげと見ていた所、逆にこちらの方も色々と観察されていたようだ。
特にエキドナが大人気のようで……。
ホーマ帝国の兵士達がその大きさに驚いている。
大型トレーラー並の大きさだ、魔導騎兵が乗っても違和感がないほどの。
最初は魔鎧兵を入れていると思ったらしいが、そんな使い方はしていない。中身は家そのものなのだ。
『大分注目されているな』
「あ、ギアズお帰り。どうだった?」
『すぐにでも出発したいようだ。もともとの予定ではもう少し早く発つつもりだったようだが。儂らが来たせいで遅れたのだろう』
「まあ、僕らは良いけどね」
「いつでも準備は出来ています。もはやホーマ帝国に対して隠す兵器は有りません、サーヴァントもマギア・ワイバーンもいつでも出せるようにしてありますので」
『儂の乗るケルベロスも出番が待ち遠しいようだ。敵が出たら少しは残して置いて欲しいものだな?』
ギアズはあの戦闘の時にも楽しそうにしていたし、恐らくケルベロスの攻撃にハマったのだろう。
50mm機関砲は火薬と魔晶石の粉により高威力の砲弾を発射することができる。
通常の弾頭であっても威力は相当なものだ。
そんなものを約1秒に付き1発程度の発射レートでぶっ放される上に、その合間には25mmガトリング砲の雨が降る。
相手としては堪ったものではない。
とりあえず、ハイランド側は既に用意が完了しており、セイカーも近くに着陸して待機している。
最初は上空待機にしようと思っていたが、飛竜達が敵と誤認する可能性があるということだったので降りて待機し、一緒に上がることになった。
その時はマギア・ワイバーンも共に上がる。
テンペストは自分の身体に居るままで簡単なサポートのみをして、大半の制御をコリーに任せる。
敵が出たときのみワイバーンへ移って対処に当たることとした。
コリーに取ってもいい経験になるだろう。
□□□□□□
『これから30分後に出発する。海路組はもう少し遅れてから行くようだ。荷物の積み込みに手間取っている。目的は帝都の奪還……だが、まだ連中はあの惨状を見ていない様だな、奪還したら再編成して一気に攻撃に移りたいと言っていた』
「まともに人が残ってるとは思えないけどね……。でも地下に隠れたりくらいはしてるかも?」
「テンペストが念入りに調べては見ていたが……まあ、何かそういったものを阻害するものが無いわけではないし、腐っても帝都だからな。逃げ道くらいは確保してるだろう」
奪い返したところで、まともに機能しない都をどうするつもりなのかは知らないが、やはり象徴的なその場所を取り返すというその意味はあるのだろう。
攻めてきたはずの敵軍……エフェオデルという国らしいが、そこにディノスは寝返ったという。
一度はホーマ帝国の敵として退けて置きながら、なぜ突然向こうに寝返ったのか分からないと帝国の兵士達は困惑している様だ。
しかし敵としてディノスの名前が挙がっている以上、こちらとしても好都合な事には代わりはない。
もちろんただ楽観視する訳にはいかないが。
不完全とはいえロケット弾までは開発できていたのだ。ミサイル開発が出来ないという保証は全く無い。
遠距離からの攻撃……その精度がいいか悪いかは置いておいても、大体の場所に着弾させることが出来るのであればその時点で脅威だろう。
なにせ防空装備などは音速を超えて飛来する物体に対応するものなど一つもない。
何かがあったらマギア・ワイバーンで対応するしか無い。
「帝都を取り戻せ!!」
ホーマ帝国軍で大きな声が挙がる。
士気はまだ高いようで指揮官らしい綺羅びやかな鎧をつけた男の声に呼応するように雄叫びを上げていた。
「そろそろ出発かな?」
「竜騎士が飛竜に乗って準備している、そろそろだろう。テンペスト、ワイバーンを出してくれ。俺たちも用意するぞ」
エキドナの隣にマギア・ワイバーンが姿を現す。
既にスタンバイ状態になっており、コクピットも地面に降りていた。
コリーを収容して離陸準備へと移行すると同時に飛竜達が飛び立ち始めた。
「やべ、ちょっと出遅れかけてるな。上がるぞテンペスト」
『レビテーション開始。では私は必要最小限のサポートのみを地上から行います。処理する情報は増えますが飛ばして索敵するだけなら特に問題はありません』
「了解っと……うぉ……毎度のことならがすげぇ量だなこれ」
索敵用のレーダーから光学機器、IRセンサーなどの情報や火器管制、出力モードなど様々な項目が目の前に表示されていく。
これまでテンペストが必要に応じて処理していた様々な物を、コリーが一人で処理しなければならない。
一応今までもある程度はマニュアル操作の練習などをしたことはあったが、必要な情報に目を通すだけでも大変だった。
「……ま、いつも通りにやるしか無いわな」
ゆっくりと飛竜達に近づいていき、その編隊にセイカーと共に混ざる。
こちらを向いて何かを言っているようだが、中には全く聞こえていない。
『「あまり近付かないでくれ」だそうです』
「ああ、なるほどな。少し距離を取ろう。いや寧ろこのままワイバーンとセイカーは散開して自由行動した方がいいか?」
『では進行方向に敵が居ないか探ってきて下さい。IRセンサーと気配感知をONにして茂みや森の中などに注意を』
「了解だ。セイカー、俺に続け」
『了解ワイバーン』
□□□□□□
「あれ?コリー達は先に行かせたの?」
「はい。先行して途中で待ち伏せなどをされていないかを偵察してきてもらいます」
「先行は良いけど、僕ら追いつくのにどれくらい掛かるんだろうね……」
コリーの付き人ウルにエキドナを運転させて、テンペストとニールはくつろいでいた。
一応ニールは銃座についているが。
グリグリと外部の映像を動かしてはズームしたりと遊んで見てるが特に何の発見もない。
そもそも魔導車など乗り物しか無い割に物凄く遅いのだ。
ホーマ帝国の速度に合わせているので当然といえば当然だが、はっきり言って邪魔だ。
「これ、次から僕達の方で荷台引っ張ったほうが早いんじゃないの?」
「……そうですね、次の休憩時にギアズに提案させておきましょう」
普通に行けばもっと早く到着できるというのに、こんなところでだらだらと動いてはいられない。
暫くしてコリーから報告があった。
『テンペスト、こちらワイバーン。進路上はクリア。途中でキャラバンが襲われていたので適当に掃討しておいたぞ』
「分かりました。こちらは進軍速度が遅いためそちらの現在地まで今日中に着けるか怪しくなっていますが。休憩時に帝国側と交渉して、私達3カ国の方で荷台を引っ張っていく事を考えています」
『そうか、ならあまり遠くへ行っても仕方ないか。一旦コースを変えてそちらに戻る』
商隊が襲われていたようだ。
通常の魔物によって襲われていただけらしく、人に当てないように気をつけながらレーザーによって1匹ずつ焼いていったようだ。
いい判断だろう、ガトリング砲の弾は近くを通っただけでも危険なものだ。
その他は特に何事もなく警戒を終えて2機が戻ってきたところで丁度休憩になった。
その間に速度に耐えかねたこちら側の要望によって、荷台を少し補強しつつオルトロスなどで牽引することになる。
そこからの進軍速度は倍ほど変わった。
引っ張られている馬車の荷台に乗っている兵士達は死ぬ思いをし、こちらの速度に着いていくのがやっとなホーマ帝国の魔導車に乗っている人達も相当消耗していた。
反対にコーブルク、ルーベル、ハイランドの面々はといえば思う存分に飛ばすことが出来たために晴れやかな顔をしている。
この広い平原を走ることに関して言えば、ハイランドの兵達などは普段狭い道を爆走しているだけあってまだまだ足りないようだったが。
ちなみに魔導兵の方は若干遅れてしまい、遅れて追い付いていく予定だ。
全体止まれの合図が上がりゆっくりと速度を下げていけば、商隊が襲われていたという場所にたどり着いた。
商隊……ではなく実際は避難民のようだが。
物資が散らばっていたのでそう思ったのだろう。
帝国の兵士達が何やら動き出して行くのを見ながら小休止だ。
見ていると馬車を簡単に修理してポートキャスへ向かうように指示しているらしい。
確かに今のところ最も安全なのはあそこだろう。
既に出発から5時間ほど経っている訳だが、大分距離は稼げたはずだ。
このまま途中で運転手を交代しながら夜通しというのも考えたが、そうなると魔導騎兵が邪魔になる。
一度魔導騎兵だけ格納庫へと送り、乗員を無理矢理にでもオルトロスに詰め込んで更に速度を上げることにした。
魔鎧兵に関しては数が少ないので途中で合流した飛竜が運ぶ。
「あの運び方は考えてなかったなぁ」
「飛竜ならでは、ですね。考えては居ましたが、一度に複数機運ぶことを考えていたのでレビテーションを使った大型の輸送機を想定していました。1機ずつだと効率が悪いので」
「まあ確かにその通りかな。……ウル、荷馬車の方は大丈夫?」
「ええ、ホーマ帝国のサスペンションは意外と優秀ですよ。多少の起伏などは無視しても問題ないほどです。流石にあまり凸凹しているとこの速度だと吹き飛びますが……」
「車輪にあまり負担かからない所選んでね。踏み固めた道とは言えあまり質は良くないし……」
「はい。……あ、休憩の合図です。そろそろ交代の時間ですね」
運転手を交代し、ウルは仮眠をとる。
今度はサイラスが乗り込んできてハンドルを握った。
途中ずっと寝ていたそうで体力は余っているらしい。
「ギアズは……」
「彼は疲れを知りませんよ、アンデッドなんですから。それにあの身体を手に入れておいて疲れるなどありえませんね」
「ああ、うん。確かに」
無駄に強化された身体はスケルトンである本体を守っている。
力比べとなればまず人族には勝ち目がない。
食事は車内で食べながらだ。
恐らくこのエキドナに居るメンバーだけがとてもゆったりとした食事を楽しんでいるだろう。
流石に火を使ったりすることはなかったが、温かいスープと美味しいごはんが食べられるのは強みだ。
モーターホームとしての機能を盛り込んだだけはある。
そしてついに帝都まであと僅かというところまで来ることが出来たのだった。
ほぼ2日程度で近くまでこれたことに関しては、ホーマ帝国の兵士達も驚いていたが……大分体力を消耗している。
死ぬ思いで必死になって馬車にしがみつき、まともに寝ることも出来ず、初めて出す速度に恐怖の連続だったのだから仕方のないところだが。
普通の速度でも30分程度の距離で止まり、ここでテントを張って休むことになった。
「ふう……設定すれば自動で直線を飛んでくれるのは楽でいいぜ……あの速度に合わせてちゃ辛すぎるからな」
「コリー寝てたんだ?ずっと起きてるのかと思ってたよ」
「流石にアレに乗って貫徹なんてしたくねぇぞ……。セイカーのラルフと交代で休みながら飛んでたんだよ」
高度さえ取れていれば障害物がないからこそ出来る事だ。
魔導車の速度に合わせる程度であれば、レビテーションで対応できる範囲内なので等速で指定した時間か地点まで飛ばすことが出来る。
セイカーの竜騎士であるラルフと共に交代で見張りをしながら飛んでいたというわけだ。
ただ流石にずっと乗りっぱなしというのは疲れるし、そもそもあの中では満足に体を動かすことが出来ない。
たまにある休憩時間で急いで用を済ましてまた飛び上がるという過酷な状況だったため、こうしてテントの中でゆっくりと眠れるのは有り難い。
「ふう……帝国製のテントまじで買っといてよかったぜ……メッチャクチャ寝心地いい」
「確かにこれはかなり良いものですね。次の出発は12時間後。十分休むことが可能ですからまずはコリーとラルフは睡眠と食事を取って下さい」
「すまない、ライナー殿。シートは良いから乗り心地は良いとはいえ、あの長時間では流石に堪える……ああ……美味い」
「舌を火傷しないで下さい。もともとあの乗り物は長時間乗るものではないですからね、今はとにかく体を休めることです」
ラルフは70歳程のハーフエルフだ。
寿命も長く、獣人の血が混じっているため身体も丈夫なのが特徴だ。年は大体青年期といったところだろう。
と言ってもエルフなどはこの期間が特に長いわけだが。
肩まである赤毛を後ろで縛っている。
貴族の息子だが驕ったところがなく誰からも悪い噂を聞かない好青年だそうだ。
「はは、そう言われると……照れますが。両親の教育の賜物でしょう、今の生活は領民あってこそであり、自分の力で築き上げたものとは思うな。領民を疎かにした者は必ず破滅する。良くしたことは巡り巡って自分へ返ってくる、悪いこともまた同じである……などなど。その通りだと思って続けて居るだけです」
「それが出来るから凄いんだよね……。領民を大切にっていうのは凄く分かるよ。税金とか治めてくれるのは領民だからね、おろそかにすると人が居なくなって結局は自分が苦しむ羽目になるし……。これが悪い事って感じかな?」
「ええ、その通りですニール殿。成り上がってなおその謙虚な姿勢は見習いたいものだ」
何かしら功績を残して授爵したものは、特に突然大金と地位が手に入ったことによって下の者達を見下す傾向が強い。
テンペスト、サイラス、ニール等は特にそういった面で警戒されていたのだった。
しかしなってみれば、国が手を貸すことが多く疎まれている面はあるものの、出しゃばることもなく有益な情報を次々と開示していくという、今までにないタイプの者達だったこと事もあって見直されている。
『ホーマ帝国の兵士達は強制的に眠らせておいたぞ。仮眠させようにも寝付けないようだったからな』
眠くても疲れていても、一歩間違えたら死ぬという状況でまる二日だったのだ。
軽いトラウマになっているようで目をつぶると震えだすものが居たりとそれなりに酷いことになっていた。
あまりにも酷いようならということで、ギアズには死霊術によって眠らせる事を頼んでおいたのだ。
「それにしても死霊術で眠らせることが出来るってどういう事なの?悪夢見そうなんだけど」
『ああ、死霊術と言っても根本にあるのは対象の魂への接触、もしくは仮初めの魂を植え付けるというものだ。今回は生きている者に対してなので魂への接触だな。干渉できるようになれば相手に幻覚を見せたり、今のように眠らせるということも可能だというわけだ』
「……便利だね……」
『耐性が高いと効かんが、今のように消耗しきっていると面白い具合に掛かる。ニールも必要か?』
「遠慮します。それに僕達はあまり疲れてるわけじゃないしね。居心地いいエキドナに居たから」
フカフカのベッドやソファ、メイ達に頼めばお茶が出てくるし、冷たく冷えたアイスなんかも出てくるのだ。全く緊張感の欠片すらない。
『……む?テンペスト、何か感じるか?』
「……特には……いえ、感知しました。2時の方角、数は不明。反応の薄さから恐らくアンデッドです」
『アンデッドに関しては儂の方が分かるか。こちらを取り囲もうと動き始めている。あまり騒がないようにしながら警戒させてくるぞ』
「お願いします。『……ハイランドの兵に伝達。敵襲。敵襲。アンデッドの群れが接近中、察知されないように警戒態勢に入って下さい』」
それぞれ隊長各に渡してある通信機からテンペストの声が聞こえてくる。
すぐに状況を察した隊長達は自分達の隊にそれとなく警戒を伝え、全員がいつでも行動に移れるようにしていた。
「ハイランドは全員配置についてる。ギアズも来たから帝国の方も大丈夫かな?」
「大丈夫でしょう。全車両シャッターを下ろしてフリアー起動」
「……見えないね?」
「体温がありませんからね。ただ、これに気配感知の情報を重ねると……」
「おお……!多くない?」
望遠で見ているためまだまだ距離はあるのだが、ゆっくりと迫ってくるアンデッドの群れは……多かった。
かつて人であったもの、魔物、動物何でもありだ。
それらが音を立てずにゆっくりと近づいてきている。
その光景は異常なものだった。
「警告、3時の方向より高速の飛行物体を感知。反応は弱いですが飛竜などの魔物と思われます」
「まだ見えない!」
『飛竜のアンデッドだ。間違いない、数は……およそ30……多いぞ!』
かなりの数だ。もしかしたらあの中に例の攻撃をしたものも混じっているかもしれない。
ブレスには気をつけなければ危険だ。
「くそ、出るぞラルフ!」
「ああ、もう!休めると思ったのに……!」
「その怒りは相手にぶつけようぜ、マギア・ワイバーン、セイカー、緊急離陸する!」
コリーとラルフが愚痴りながら機体に乗り込み、レビテーションと魔導エンジンを併用しながらあっという間に空に消える。
それに遅れること少しして帝国側の飛竜達も空に上っていった。
「ニール、それでは私もコリーをサポートしに行きます」
「うん、こっちは任せて。絶対傷つけたりしないから」
「では」
テンペストの身体から力が抜けてベッドへと倒れ込む。
外ではホーマ帝国の兵士が避難民だと言っているが、他の奴らに黙らされたようだ。明らかに魔物に混じって仲良く進んでくる奴らなど一般人な訳がない。
アンデッドであることが分かっても、帝国の兵士達にとっては少し辛い戦闘になるだろう。
今迫ってきているのは帝国の一般人のアンデッド達なのだ。
遅くなりました。
かつてのミレスっぽい装備をしたホーマ帝国と合流。
逃してくれた礼にとかなんとか言って協力することを認めさせ、ついにエフェオデルとの戦いに介入しましたw