第百五十五話 アンデッドの群れ
『敵、補足。火竜のアンデッドと確認、交戦開始』
「初戦はアンデッドかよ!腐食性のブレスも吐くらしいから気をつけないとな」
『ショートランス、セット』
「セイカー!そっちは左から、俺は右から貰うぞ」
『了解ワイバーン。目標をロック』
兵装をまだ変えていなかったためランスはあまり積んでいない。
一番数を抱えることが出来るショートランスも全部で12発。
全て当ててもまだ残る数だ。
『1~3、命中。4番はミス』
「次だ次!」
次々と発射されていくショートランス。
それに対応するように散らばってゆく飛竜。
やはり飛竜は小回りが効く分直前で躱されるとランスでは追いつけないようだ。
撃ち尽くして見れば残りは11匹。意外と数が残った。
『ブレスの兆候あり』
「へっ、んなもんに当たるかよ!」
こちらを囲い込むように動いた飛竜達が一斉に炎のブレスを吐き、火弾が向かってくる。
速度はそこまで早くないため避けるのは難しくないが……。
「うぉぁ!?」
『今のが腐食性のブレスというものでしょうか?』
「多分な、雲みたいに広がりやがって……めんどくせぇ」
周りが一瞬明るくなった後に待ち構えている黒い霧のようなもの。空中に漂わせて設置できるらしい。
よく見てみれば周りに薄っすらとそれらしい雲の塊が見えている。
『ブレスと思われる物を着色して表示します』
「助かる!」
セイカーの方も敵の攻撃が分かりやすくなりルートを選びながら機銃で飛竜を叩き落としていた。
流石にコンラッドに鍛えられているだけあってかなり腕がいい。
コリーの方も負けじと速度を上げて飛竜を撃墜していく。
残りあと3匹……というところでやっと後続の飛竜隊が到着したが……こちらの戦闘に入ってくることが出来ずにただ見守るだけだった。
まあ、下手に手出しされて味方の火弾が当たるなどということが無いだけ良いだろう。
『目標掃討完了。セイカー、状況報告を』
『こちらセイカー。ショートランスの残弾無し。被害は軽微』
「こっちも似たようなものだ。地上に降りたら機体を点検しよう、腐食のブレスの影響が知りたい」
『その前に飛竜隊の隊長に報告を』
ゆっくりと帝国の飛竜達の下から近づき、横に並ぶ。
飛竜がその場に留まるようにホバリングしたのでそれに合わせるようにしてワイバーンを止めてコクピットを下げた。
「遅かったじゃねぇか」
「貴様等が早すぎるのだ!で、飛竜は……」
「もう全部落としたよ、火竜のアンデッドだった」
「……やはり……。恐らく、失われた帝国の飛竜達だ。生き残りから聞いた話だがディノスは死霊術を扱うという。先のエフェオデルとの戦いでも実はこうしてアンデッドを利用して勝利を収めたのだとか」
「ほう……。じゃあこの攻撃はディノスってやつからの攻撃だな?誰に喧嘩を売ったのか、教えてやらねばならんだろうな」
「……それにしても……それは何なのだ、空を飛ぶ乗り物など聞いたことが無い。それがいくらアンデッドであるとは言え飛竜を相手にたった2人で……」
ということは航空戦力は今のところ飛竜のみ。
戦闘機は持っていないということだ。
それに飛竜ならばハイランドで何度も落としている。
「俺達はハイランド……飛竜の住まう山々で暮らしている。他の国と違って飛竜の脅威はいつもそこにあったからな」
「ディノスの言っていた空を飛ぶ乗り物と言うのは、これのことだったか……」
「ん?ディノスは俺達の大陸から渡ってきたのか」
「そう聞いている。技術を開発したのは良いが、その恐ろしさに脅威とみなされて殺されかけたと言っていたが……正直、今の状況では別の理由のように思える」
あの野郎、適当なこと言いやがってと思いつつも、知らない顔をして情報を聞いていく。
この飛竜に乗っていた男は、もともとディノス率いるホーマ帝国軍としてエフェオデルに攻め込んだらしい。
その話を詳しく聞くため、ゆっくりと移動しながら彼の話に耳を傾ける。
エフェオデルの都を壊滅させ、長と呼ばれる男はその攻撃に巻き込まれて死亡した。
その後、凱旋をしながら帝都へと向かい、全員が長い戦いがこれで終わったのだと確信し、喜びを分かち合っていたという。
しかし、突然の裏切りによってその攻撃の矛先は自分達へと向かう。
「本当に突然だった。凱旋が終わり、勲章授与を控えた前日の夜……突如として彼の寝ていた場所で大きな爆発があり……。残っていたのは騒ぎを聞きつけて来たであろう兵士の死体と、惨殺された彼の付き人、そして信徒である少女の死体だ。全て焼け焦げていたが」
その状況を見てディノスが力を手にして反乱を起こした、ということで祝いの席を取り消して即座に軍を編成し、そのままエフェオデルの掃討へと向かったようだ。
エフェオデルへ向かったのは炎竜の姿がそちらの方向へと向かったこと、そしてこの国では顔が知られているディノスが逃れられるのは恐らくエフェオデルだけだからだろうと当たりをつけたからだった。
「そこからしばらくは、我々飛竜隊、そして魔鎧兵隊の者達は全員集められて厳しい取り調べを受けた。最も共に出撃して居た為だが……疑いはすぐに晴れた」
それで、ディノスの討伐を命じられてエフェオデルへと出向いた訳だが、そこで予想以上の反撃を食らって脱出してきたという。
「あれはまさに地獄だった。亡者たちが夜な夜な襲ってきて眠ることも出来ず、眠れたと思えば朝になると大きく抉れた地面ごと仲間が少しずつ消えていく……」
撤退してからもそれは続き、クラーテルと呼ばれたクレーターの街はディノスの作ったであろう投下型爆弾と呼ばれた巨大なそれであっという間に壊滅したという。
「分かるか?大きな街が、たった一発で戦力を失ったんだ。駐留していた軍は消滅した!あいつは……かつての仲間をゴミのように殺したのだ。その後のクラーテルは酷いものだったそうだ。なだれ込んできた魔物によって蹂躙され、貴族も、一般人も、男も女も、大人も子供も何の区別もなく食われた。それが……次から次へと脱出していった者達へ襲いかかり、アンデッドを増やしながら他の街も食い尽くしていったのだ」
かつての自国民がそのまま全員敵となる。
アンデッドの恐ろしさはまさにそこにあった。
食い荒らされ、腹の中身が無くなった者や、裸で色々なところの肉が無くなっている者達。
しかしご丁寧にもその頭部だけは無事だったそうだ。
「……虚ろな目をした子供たちや女達がな、押し寄せてくるんだ。倒しても、倒しても。本来ならば守らなければならないはずの人達が襲ってくるんだ。そして俺達は手にかけなければならない。飛竜にまたがり上から攻撃できた俺達はまだ良いほうだ。剣士などはまともに顔を見ながら戦ったんだ、もう、何人も苦しんでいる」
「……そうか。お前たちはあれと戦わなくてもいいぞ。俺達は部外者だからな、そういう弱みはない。……まあ、何も感じさせないようにして逝かせてやろう」
すまない、と言う飛竜隊隊長。
もしかしたら、あの中に自分の妻子も居るのかもしれない。
実際、多くの兵の親しいものたちが居たところから、あのアンデッド達は溢れてきているのだ。
もし自分の子供や妻と目があったら?
殺せるだろうか?
接近戦を行う兵士の中には、実際にそうして自分の身内に殺された者も多いという。
相当辛いことだが、その迷いが命を左右する戦場においては致命的だ。
止めてくれと子供に抱きつきながら、その身を喰われていく男がいれば、その手にかけた妻を見て狂いだした者、そこで命を落としたものはそのまま何事もなかったかのように立ち上がり……生き残ったものたちを襲い始める。
悪夢としか言いようがない。
しかし。外から来たコリー達はそういう憂いはない。
これから戻る先で展開されるであろうその状況は恐らく無いだろう。
今はホーマ帝国の兵士達だけではなく、現在最高の装備を整えた3カ国の兵士達もそこにいるのだ。
更に言えばアンデッドに対しては最強の切り札といえる存在が少なくとも2人いる。
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『命なき者は聞け、我は不死者の王である』
ギアズの声が響く。
生者にはあまり意味はないが、アンデッドと化した者達には確実に聞こえるその声は、アンデッドの大軍の歩みを止めるのに十分なものだった。
『死して尚利用される者共よ、本意ではない者は我が声を聞き入れよ。安寧への道を開いてやろう』
ギアズの言葉に呼応したアンデッド達が光り輝き、灰となって消えてゆく。
死んでアンデッドとなっても、その思いは残っているものだ。死にたくなかった、生きていたかった。そういう執着がアンデッドの生者に対する恨みとなる。
しかし、恨みはあれど彼らは無理やり働かされているのだ。それを良しとしないものもいる。
特に自分達を守ろうとしてくれていたはずの兵を、親しいものたちを殺そうとは思っていない。
なぜそのような行動をしているかと言えば、上位の存在に命令されているからである。
それであれば、より上位の存在がその命令を取り消せばいい。
その光景は本当に死霊術のものだろうかと思うほどに神々しいものだった。
大半の人型のアンデッドが消え、残ったのは魔物がほとんどだ。
まだ残っているアンデッドは既に悪意に染まっているか、もともと悪人だったか……。
「美しい……」
誰かがつぶやくのが聞こえ、光の塵となったアンデッドは完全にこの世から消えた。
いつか別な命としてこの世界に戻ってくる日まで。
帝国の兵士達もその光景に涙する。
彼らは元々自国の民である彼らをこの手にかけることを、例えアンデッドといえどしたくはなかったのだ。
特に確実にあの中に身内や仲間が居た者達は。
『さて、貴様等は違うというのだな?では安らぎの中で死ねると思うな。未来永劫彷徨い続けるがいい』
ギアズの言葉によって止まっていた歩みがまた動き出す。
かなりの数のアンデッドが消え去ったはずだが、まだまだその数は多い。
……しかし、ここに残ったアンデッド達は既にギアズの声が届かなかった者達だ。
遠慮する必要は無い。
「斉射、始め!」
合図とともに大砲やライフル、魔導砲など様々な兵器の音が響き渡る。
離れた場所で群れを成していたアンデッド達もこちらの敵意を感じ取ったか、突如として走り始めたがこちらの攻撃が届くのが先だった。
着弾地点に次々と土煙が上がり、魔法弾は大きな炎を巻き上げ、または巨大な氷や岩の棘を生やす。
多くのアンデッド達が巻き込まれ、吹き飛び、串刺しになるが……どうやら操っている者はそれなりに頭は良いようだ。
集団で固まっていると分が悪いと判断したのだろう、ばらばらに散らばり始めた。
「両翼包囲!!」
魔法弾による合図が上がり、ホーマ帝国はこのまま正面に残って他の3カ国は分かれて敵の両翼へ展開していく。
発射レートの低い50mmやレールカノン等は大型の魔物へ向け、散らばった小型から中型の魔物にはある程度の広域をカバーできる魔法や、25mmガトリング砲の制圧射撃が待っている。
『ふははははは!警告はしたからな!死ぬがよい!!』
運転をハイランド兵に任せ、銃座でトリガーハッピーになっているのはギアズだ。
骨を模した黒い鎧に身を包み、高笑いをしながら弾丸の雨を降らせるその姿はまさに死神だ。
『ニール、今マークしたタラスクへレールカノンを』
「了解っ!」
ある意味一番この場に似つかわしくない大型トレーラーであるエキドナだが、そのトレーラー上部にはこの場で最も威力の高い武器が載っている。
レールカノン、以前は移動しながらは難しかったが反動制御を取り入れたことによって反動を最小限に減らしたため、動きながらであっても問題なく打ち込めるようになった。
サイラスが指定したタラスクは速度を上げてホーマ帝国軍へと向かっている。
が、ニールがトリガーを握り込むと同時に巨大な飛翔体が音速を遥かに超える速度で撃ち出された。
狙い通りに胴体へと着弾したその弾丸は、一瞬でタラスクの固い甲羅を破壊しそのまま貫通して地面に大穴を空ける。
『いいね、うまくなったじゃないですか、ニール』
「あまり偏差意識しなくていいから当てるだけなら楽だよ、このレールカノン。そいつにとどめ刺したら次の目標を指示して!」
『ええ、……流石に数が多いですからね、っと……、地竜発見!マーク』
「目標視認、射線クリア。発射!」
ニールが土煙を上げて突進している地竜のアンデッドに向けてレールカノンを打ち込み、サイラスが弱った地竜の頭をパイルバンカーで滅多打ちにする。
次々と強敵と言われる大型の魔物を屠るそのコンビに、周りの者達の士気も上昇していった。
コットスを始めとして、ルーベル、コーブルクの魔導騎兵もそれぞれの武器を手に大きめの敵を狙っていった。
「狙え!……撃て!!」
こちらは本国であるホーマ帝国のライフル兵と長距離魔法師達だ。
ハイランド、コーブルク、ルーベルによって左右を固められ、アンデッド達が前進する先はどんどん狭くなりそこに待ち受けているのはホーマ帝国の兵士達だ。
バラけていたはずの集団はまた一箇所にと集められていき……。
一斉斉射によって次々とその身体を地面に横たえていく。
そこへ魔法隊などの広域火炎魔法などが放たれ、二度と生き返ることのないように燃やされていくのだった。
そうして半分も削ろうかと言うところで、突然敵のアンデッド達が向きを変えて撤退し始めた。
こちらの被害はほぼ無い状態で、追撃も可能ではあったが罠である可能性を考慮して航空戦力が戻ってくるまで待機となる。
もちろん、撤退を続けるアンデッドの群れに対してお土産を撃ち込むのは忘れないが。
「総員、怪我人と装備の確認!」
喜びに湧くホーマ帝国軍を横目にハイランド軍はそれぞれのチェックをしていく。
怪我や死亡はもちろんのこと、戦いに於いて消耗された弾薬の数や、魔法隊であれば保有魔力量の残量チェック。
消費された弾薬は即座にそれぞれの倉庫から直接取り出して補給を開始し、砲身を分解してメンテナンス済みのものと交換していく。
結果としては人的被害は軽症者を出したのみ、オルトロスなどの装甲に凹みとヒビが入った程度だ。
魔導騎兵隊の方も装甲が一部吹き飛んだりなどはしているが、中身の方にダメージはないため装甲の交換のみで事足りた。
大多数を遠距離で近づかれる前に削っていた結果、この様に被害を抑えることが出来た。
もちろん接近戦をしていた魔導騎兵達はダメージはあれど、率先して危険な魔物は射程に入った瞬間にレールカノンやレールガンによって撃ち抜かれ、サーヴァントによって確実に破壊されているという事もあり、脅威らしい脅威が無い中優位を保って立ち回れたのだ。
『こちらワイバーン、間もなくそちらの上空に到達する』
「コリー!そっちは終わったの?」
『ニールか?ああ、ただの火竜のアンデッドだ。俺達の敵じゃねぇ。そっちは?』
「ものすごい大軍だったけど……人型のは殆どギアズが浄化しちゃった。残りはほぼ魔物と、魔物と化した人間たちだけ」
『は?ギアズが浄化?意味わかんねぇ……』
正直今でもウソっぽいけど本当の話だから困る。
囚われた魂を解放するとかなんとか言って語りだしたところで胡散臭さがあったけど、結果は見ての通りだった。
元々善良である人達などは魂レベルでこういうアンデッド化は忌避していると、大分前にギアズが入っていたのを思い出す。ギアズ自身も元々はアンデッドという化物になったことを嘆いていた位だ。
……今は寧ろ割り切ったというか、振り切れたというか……。
まあ、楽しそうだから問題はないだろう。
「降りたら教えるよ。こっちは半数位が撤退しちゃったから下手に追わずに待ってるんだ。今装備のチェックとかをしてるとこ」
などと言っていれば既に上空に2機と飛竜達が居て降りてくるところだった。
特に何かしたわけでもなく、ただ行って帰ってきただけの飛竜隊が2匹また空へと飛び立ち、逃げていったというアンデッドの方向へと向かって偵察に出ていく。
ベッドで横になっていたテンペストも起き出して、戦果報告となった。
「なるほどなぁ、そんなに大量に来ていたなら何発かランサーぶち込んでから行けば良かったか?」
「いや、そこまでする必要もなかったでしょう。実際あれで凌げていましたからね。ルーベルとコーブルクの魔導騎兵の戦い方が見れたのも面白かったですし」
「コーブルクの力任せな感じと、ルーベルの動きと技を使った動き、うまい具合に両極端になってたね」
見た目の通りの動きをしていたのは確かだが、それぞれに会った動きをすることで効果は存分に発揮されていた。
飛び道具に関しては両国とも今回は使わずに、接近戦を行っていた訳だが……これ自体はまあ仕方ないところがある。
密集していてくれない所に撃ち込んでもあまり効果がないからだ。
となれば魔導騎兵の仕事としては生身では相手にしきれないような相手を倒す、もしくは足止めすることとなる。
オーガの様な魔導騎兵よりも少し小さいくらいの敵でも、生身ではまともにぶつかることは危険だし、魔物と戦い続けているハンターと違って兵士達は基本的に対人の訓練を行っているからだ。
コーブルクの水陸両用機はその分厚い装甲をフルに活かし、突進してくる魔物に対して正面から体当たりを食らわせ、拳が隠れるほどのガードを生かして力任せに叩きつける。
装備の重量と硬さもだが、魔導騎兵の魔力筋を力に振り切った機体は出力が違う。
一撃殴るだけでタラスクでも軽く後ずさりするほどだ。
動きは若干鈍いものの、当たれば火力は強い。
ルーベルは身軽さを生かし、魔導騎兵用のナタの様な……分厚く叩き切ることに特化した武器を手に急所を攻撃するか、手足を落として行動不能にしていた。
サイラスのサーヴァントとまでは行かないものの、コットスと同じような運用を目的として居るだけあって相手を翻弄しつつ確実に削っていった。
「帝国のはどうだ?」
「固定砲台だね。そもそも数も減らされて居たらしくて、あまり損耗したくないんじゃないかな?積極的に接近戦は仕掛けてなかったよ」
「まあ、こちらの方と同じような動きは期待できませんからね。寧ろ集まった所に砲弾を撃ち込むと言うのは周りも巻き込めるのでそちらのほうが数を減らすには良かったでしょう」
何処かで素材になる魔物が確保できれば良いが、出来なければ魔鎧兵の補充はできない。
「コリー達はどうだったの?」
「ただの火竜のアンデッドだった。腐食のブレスが心配だったが……まあそこまでの脅威ではないな。例のブレスを吐く奴は混じってなかったようだ」
『だがまあ……魂を解放してやった奴らを除いた内の半数は逃げてしまったからな。またこちらを攻撃するときには何か対処してくる可能性もある。気をつけたほうが良かろうな』
「ああ、それだよそれ解放とか浄化とかどういう事なんだ?」
逃げ出したアンデッド達はまだ何かしらの統制下にあるのは確かだ。
それが撤退させたということならば、次にまた何かしらの方法でこちらに攻撃を仕掛けてくる可能性は非常に高い。
魂の解放に関してはギアズが直接コリーに教えていたが、まあ要するに死にたがっているやつの魂をアンデッドの縛りから解き放っただけだ。
限界を超えて居た身体は一気に朽ちて、その魂はマナへと還る。
『何にせよ、アンデッド側の親玉が誰かは知らんが、儂よりは格下だという事ははっきりしている。どうせ生まれたてのひよっ子だろう』
「そりゃギアズから見たらこの世の大半そうだと思うけどね?」
ニールからのツッコミにそれもそうだ!と笑い飛ばすギアズ。
本当に何年こうして地上に君臨しているのか分からないが、千はとっくに過ぎていると言うのはほぼ確定しているのだ。これを超えるようなアンデッドはまずなかなか居ないだろう。
自称不死者の王と言っているが、限りなくそれに近い存在であることは間違いない。
『それに儂でなくともテンペストが居れば問題なかろう。強制的に繋がりを断ち切られるのだからな……。防ぎようがない』
「まあ、それもそうだね」
その代わり、装備品も全て一時的に使えなくなってしまう為、失敗した時のリスクも大きいが。
特にマギア・ワイバーンに乗っている時などは危険すぎる。
ホワイトフェザーの時に強制的な切断でテンペスト自身にも相当な負荷がかかったこともあるのだ。
「とりあえず、今日はどの辺で休むかだね……」
「そればかりはホーマ帝国に聞いてみないと分かりませんね」
「流石にアンデッドの残骸が散らばるこの場所では野営などはしたくありませんね。魔晶石の回収は出来ましたか?」
「テンペストならそう言うだろうと思って、タラスクとかの大きめのやつだけは集めておきましたよ。やはりアンデッド化すると元々の魔晶石が黒く濁るのでしょうね」
そう言ってサイラスが取り出したのはタラスクの大きな黒い魔晶石だった。
テンペストが胸に下げているものよりも大きく、また密度が高いように感じられる。
「今のところお守りのように使われているだけですが、他にも何か使いみちが見いだせれば良いのですが……」
「今回これ以外にも拾っているので研究はできるでしょう。帰ったらいろいろ試してみますよ」
まだまだわからないことは沢山ある。
それを明らかにしていきたいと願うサイラスだった。
ギアズ意外と大活躍




