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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第五章 英雄ディノス編
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第百四十二話 英雄として8

ちょっと遅れました。

 ここ数日の疲れで泥のように眠っていたディノスが叩き起こされたのは、地響きを伴う轟音と衝撃、そして激しい熱さ、人々の悲鳴だった。


 何事かと問うまでもなく状況を把握していく。

 奇襲だ。

 集落が燃え上がっていた。


 魔法隊が必死になって水を掛けて消し止めていたが、この規模では殆ど意味をなしていない。

 慌ただしく無事だった者たちは用意を整えて各自の持ち場へと復帰し、対応を開始する。


「ディノス様!」

「カリスタか!他の皆はどうした!」

「無事です!魔鎧兵の方へと行っていますが……」


 魔鎧兵の方はと目を向ければ、火の海だ。

 早く行かないとまたあれを失う羽目になってしまう。

 ディノスも水をまきながら自分の機体へと向かうと、全員分の魔鎧兵が無事に揃っていた。

 ……多少炙られているようではあるが……。


 すぐさま乗り込み救出と敵への対応に分かれて行動する。

 ディノスのチームは攻撃だ。


『よし、全員揃ってるな?魔鎧兵に何か異常は有るか?』

『『有りません』』

『問題なし』

『異常なし』


 多少焦げた所もあまり痛みなどは気にならない。

 支障はないと考えていいだろう。


 すぐさま周りを見渡すが敵は見つからない。

 が、飛竜達が上を向いて吠えているのがみえた。

 見上げてみると月明かりの中空を飛ぶ一匹の飛竜が見えた。

 あれが元凶らしい。


 次々と飛竜達が飛び立っていき、迎撃に向かう。相手は一匹のようだし恐らく問題あるまい。

 他の敵が来ないか索敵をしつつ、炎がゆっくりと消えていく駐留地を見やる。

 流石にこれでは身動きが取れない。

 恐らく今集落の中では怪我の治療で精一杯のことだろう。


『あの火竜、これを狙っていたか……!』


 安易に接収するべきではなかった。

 思えば家などはかなり密集しており、燃え広がりやすい構造になっていた。

 罠として作ったものにしては年数が経っているので、恐らく本当に棄てられた場所だったのだろうが。

 実際、道は荒れ果てており草が生い茂っている。


 しかし……ここに来るだろうことは進路から予想はつく。

 家を焚き火の薪として火を放ったというところだろう。

 カラカラに乾いた木材は燃えやすく、纏まって建っている建物は炎の広がりを早めて悪化させた。

 結果的にあっというまに燃え広がった集落は、大半の帝国兵を巻き込むこととなってしまったのだ。


 迂闊であったと言わざるをえない。

 ここに来て大量の人的被害が出てしまった。


『くそ、死人が出ていなければ良いのだが』

『ディノス様!空を!!』

『なっ!?』


 見上げた瞬間、すぐ近くに帝国の火竜が降って来た。

 乗っていた竜騎士も後から落ちてきて血の花を咲かせる。

 何があったのかともう一度空を見れば、空の上では激しい空中戦が繰り広げられていた。


『……なんだ、あの飛竜は……!』


 影しか見えないが、どうも帝国の飛竜達を相手取っておきながら、攻撃を避けつつ威力がこちらよりも強いブレスを放っていた。

 墜落した飛竜は瀕死だ。体中に傷を負い、先程の墜落の衝撃で骨が折れているだろう。


 こちらの状況に気がついた治療術師達が慌ててやってきてその惨状に固まっている。


『ぼさっとするな!急ぎ飛竜を治療し代わりの竜騎士を載せろ!そのままあの飛竜は帝国まで戻して現在の状況を知らせるのだ!』


 あの飛竜はおかしい。一回り大きく、こちらの戦力を圧倒する力を持つ飛竜……。

 一吹きするごとに辺りが昼間のように明るくなるほどの炎のブレス。


『あれは……炎竜では……?』

『何だそれは』

『火竜よりも身体が大きく、能力は完全に向こうが上です。火竜を更に強力にした飛竜ですが……まさかあれも操られているのでしょうか?』

『恐らくは。炎竜か……厄介な!』


 1匹の火竜が堕ち、他の火竜たちも善戦しているものの一歩間違えれば確実な死が訪れる。

 しかも相手は格上で話を聞けば飛竜10匹程度ならば楽に相手をすることが出来るらしい。

 今は29対1の状態だが拮抗している。


『飛竜隊を援護する。大砲を使え!狙い撃て!』


 5機の魔鎧兵が次々と重い音を響かせて大砲を放つ。

 それに気づいた飛竜隊も、相手の炎竜が孤立するように動きながらこちらの狙いを正確に誘導していた。


 大砲の弾の目視は目では難しく、特にこのような暗い時には避けるのも一苦労だろう。

 見る間に炎竜は防戦一方となり、忌々しげにこちらを見やる。

 更にこちらの飛竜隊と魔鎧兵隊の攻撃も当たるようになり、何度か反撃をされたものの大きな被害はなく撃退に成功した。


 流石に炎竜が出てくるなど全く想定しておらず、予想外の人的被害を出してしまった。

 これは完全にエフェオデルにしてやられた感じだ。


 □□□□□□


 結局、炎に巻き込まれて死亡者が1000を超えた。

 元の人数からすればさほど多くはないが、問題は怪我人で……全身に大火傷を負って重症となっているものがかなり出た。

 すぐに起きて外に出たために足を怪我した者もいる。

 軽症の者はもう全員が回復しているが、中、重傷者に関してはまだ手当が必要だ。

 治癒術師が足りない。


 半数ほどが何かしらの被害を食い、馬も死んだものはいないが逃げ出してしまったのが数頭。

 物資や移動手段にそれほど被害がなかったのは、人の被害の方に重点が置かれていたのだろう家が特に集まっている所を重点的に焼かれていたせいだ。

 加えて例の夢の対策のために半数が最初から起きていたことで、眠っているものを即座に起こして避難を開始できたことが被害者の低減につながっている。

 下手をしたらこの重傷者は最初から全員死んでいたかも知れなかったのだ。


 お陰で魔鎧兵や馬、魔導車などには被害が殆どなかったのは幸いだった。

 これらが優先的にやられていた場合にはこちらの戦力も移動力も一気に落ちてしまう。


 だが人的被害はある意味でそれよりも厄介かもしれない。

 まずは怪我のために当然痛みを感じる。そうなれば普段通りの動きすらまともに取れないし、治療するにも術士が治せるのは重度のやけどなどの外傷や、骨折などで部位欠損は取れた部分がなければ難しい。

 魔力消費も激しいため魔槽を持っているものが大半だ。

 一応全員を治せる程度の量は持ってきているが補充は時間がかかってしまう。


 現在重傷者を中心に治療を進めているが、大分時間がかかるだろう。


 この日は警戒態勢のまま夜を明かし、ひたすら怪我人が回復するのを待つことにした。

 終わったのは次の日の明け方だ。

 その頃には完全に回復したものと死者しかその場には居ない。

 最終的な死者は2000人程度。ちゃんとした数字は出ていないがかなり痛い。

 彼らを連れて行くことは出来ず、一度この場所へ安置したまま一気に砦を落とすことになるだろう。

 そこを占拠できればその場にいる治療術士や奴隷たちで補充が可能だ。

 かなり微妙な手で有るのは分かっているが、攻撃に対して強い石づくりの建物は安全性はここよりはマシだ。


 依然、囲まれる危険性は有るものの一度内部で立て直しを図り、なんとかそのまま親玉のところまで行ければいい。

 何よりもこちらには隷属化をするための道具と術士が付いてきているのだ。

 奴隷落ちした後のエフェオデル兵は奴隷として矢面に立ってもらう。

 敵を倒しつつも生かしておくことでこちらの戦力は増強される。


(最悪の場合死霊術を使えば……)


 敵が死んでいようが関係ないのだ。これは今のところ将軍の判断が必要なものだが、こちらの被害が大きくなりすぎる前に決断してもらったほうが良いだろう。

 楽なのは死霊術でアンデッドになった者は生前の技量をある程度残していることだ。

 特に死んですぐで筋肉などが残っていると効果は倍増する。

 四肢欠損となると行動できなくとも呪文の詠唱は可能だし、色々と使い勝手は良い。

 何よりも使役できる人数は限られているわけではない。

 アンデッドの中で誰かをリーダーに決めてやれば指揮させることも出来るのだ。

 これは死霊術師が直接リーダーに指揮してそれを全体に広める形なので、軍隊と変わらない。

 自然発生したものなどはこれがないため数が多くともさほど強くはないが、死霊術師がいる場合に厄介なのはこれだ。


 流石に自軍の死者はそういうことは出来ないが。


「休憩は終わりだ!砦を落とすぞ!」


 真正面から隊列を横に広げて進む。

 間延びしていた隊列はすぐに短くなり、飛竜達は前方と後方で警戒をしながら遊撃する。

 魔物が少しでも見えたら即座に攻撃を加えて先に殲滅しながらだ。


 魔鎧兵は5機で隊列の先頭に立って進む。

 戦車隊、魔導車隊も機動力と防御力を盾にして後方の安全を確保している。


 遠くでチラチラと見えていた砦を中心としたあまり大きいわけではないその都市は、恐らくこちらの3倍程度の人数が中にいる程度だろう。


 周りにも魔物気配はない。

 不気味なほど静かだ。

 エフェオデルの大砲が届くかどうかの距離で全軍停止。飛竜によって書簡が投下され……。


 しばらくの後に一斉に大砲とバリスタの攻撃が始まった。


 □□□□□□


「受け入れるわけもないだろうな、そうでなくてはつまらない。……見ろ!奴らの攻撃は届かない!戦力はこちらが上だ!恐れるな!榴弾、撃て!!」


 将軍の号令により、戦車隊と移動大砲からの一斉砲撃が始まる。

 威力、射程ともにエフェオデルの比ではなく、改良していたものを更にディノスの力によって初速と弾薬の威力を上げることに成功した。

 結果的に射程は伸びて着弾後の被害は更に大きくなる。


 その成果が今発揮されていた。


 撃ち込まれた砲弾は初弾でほぼ壁の内側へ到達、壁に阻まれて見えないものの広範囲で爆発が起こっているようだ。

 3回目くらいでは既に黒煙があちらこちらで見られるようになり……壁の上でこちらに狙いを定めている兵士達が慌てているのが見えていた。


 彼らエフェオデルの悪夢は続く。

 エフェオデルは確かにホーマ帝国の戦力を目視し、こちらの装備と人数、そして構成などを知っていた。

 それに合わせて当然ながら襲われる可能性が高かったこの砦では住民たちを別な場所へと移動させて、中には魔物と兵士のみがいる状態にして待ち構えていたのだ。

 大砲等によって近寄らせず、突っ込んできてもある程度数を減らしつつ、近づいてきたら矢とともに魔物を放ち為す術無く相手を蹂躙する……という考えだった。

 攻城兵器を持っていないのは既に確認済み。

 大きな魔物らしき人型も空をとぶことは出来ず、持っている大砲が脅威であることは確認できている。


 先の攻撃である程度人数が減ったかと思ったが効果は芳しくなかったようで、こればかりは失敗だったのだがその他はこちらの思い通りに進んでいたのだ。


 当然、飛竜によって投下されたもの……降伏勧告は燃やして捨てた。


 だが。

 間違いはエフェオデルの性能でホーマ帝国の装備の性能を推し量ったことだ。

 当然、攻略するにあたって大砲を使って壁を壊す。もしくは扉を破るなどが考えられた。

 攻城兵器がない時点で直接壁に上ってくるのはほぼ不可能であり、危険なのは30近くいる火竜だが、これもバリスタの範囲にさえ入れば落とせる……と信じていた。


 実際飛竜を従える時に仲間の飛竜が報復に来ることはよく有り、対空装備は整っている。

 命中率もよく高確率で撃ち落とすか引き返すかさせる事が可能だったのだ。

 近くでブレスを吐かれなければ問題は殆どなかったのだが。


 しかし、予想に反して大砲の弾は大きな弓なりの軌道を描いて中に入ってしまった。

 ここでも、自分達と同じく鉄球によるものと信じていたエフェオデルはあまり気にしていなかった。

 当然だろう、鉄球であれば建物などが少し破壊されるだけで済む。

 それに曲射をしたことで大砲の威力そのものも若干落ちる。

 破壊力があるのは確かだが心配することはなかったはずだったのだが……予想に反してその弾は着弾とともに激しく燃え上がったのだ。


 次々と撃ち込まれる燃える弾丸。

 例え燃えるようなものがあまりなくとも、可燃性のものがばら撒かれているのか次々と燃え広がっていきついには火薬に引火して大爆発を引き起こした。


 テイムされた魔物もパニックを起こして統率が取りにくくなっており、兵の間にも動揺が広がる。

 死人なんて今どれだけ出たのかも分からない。


 そして平然として大砲を撃ち続ける相手を見てふと気づくのだ。

 何かが足りないと。

 今、飛竜達が動き出し、見たこともない機動でバリスタを回避しながら壁の上部を焼いていた。

 あちこちを飛び回り、火弾を撃ち込まれて内部は激しい熱風に焼かれる。

 何かが足りない。


 その何かは混乱しきった壁の中に降り立った。


 例の人型だ。

 何故かあれが空から降ってきた。

 ……いや、飛竜が運んできたのだ。対空装備が使えない状況へと追い込まれ、他の飛竜達に気を取られている時に、後方の空高くから侵入してきた。遠くの空は監視するものの、こうも近くに飛竜がいる状態ではそこまで見ていられない。

 完全に死角を付かれてしまった。


 援軍を要請したくとも、既にその設備は破壊されて使い物にならず、黒煙を見て援軍が動くにしても到着時間はまだ先の話だ。


 兵と熱に苦しむ魔物を蹴散らし、巨人が砦へと取り付く。

 それを塀の上で指揮を取っていた者は呆然として見つめるしか無かった。


 □□□□□□


「初弾命中。装填後速やかに次弾発射」

「敵に動きなし。偵察から報告、都市内部には魔物と兵士を確認。一般人は不明、着弾点から更に奥へ100mから500mのところへ布陣している模様」

「対空設備はこちら側を向いているのが10基。反対側は手薄」

「次弾装填完了、角度修正……撃て!」

「ライフル隊、狙撃開始。塀の上に立っている者を倒せ」

『魔鎧兵隊!大砲構え!対空装備を潰せ、撃て!』


 次々と号令がかかり都市内部で火の手が上がり始めると、否が応でもこちらの戦意は上がっていく。

 周辺の哨戒をしている飛竜隊からはまだ援軍はない事も知らされている。

 つまり、今は孤立無援の状態で塀に囲まれて蒸し焼きになりかけている状態だ。


「対空装備が半壊したぞ!飛竜隊を行かせろ!」

「砲撃止め!飛竜隊が飛ぶぞ!」

「全軍、前進用意!城門が開いたら一気に突入するぞ!」


 今か今かとその時を待っている歩兵や騎士たち。

 そして最後の戦力が投下された。


「魔鎧兵隊、ディノスチームが降下開始……完了しました!」


 □□□□□□


 飛竜に肩を掴まれる形で魔鎧兵が空を飛ぶ。

 空を飛ぶ、と言うよりはただぶら下がって運ばれているだけなので、どちらかと言うと飛竜に目をつけられてしまった哀れな食糧の気分だ。

 下を見ると薄っすらと雲がかかった景色が見える。

 ここからでは下の様子がどうなっているかがよく見えないが、それこそがこの作戦の肝だった。

 丁度良く晴れと言うよりは曇りよりの天気で雲が低い。

 つまり、空の見通しは悪いのだ。

 しかしこちらは大体の場所は分かっている。


 後はそこに向かって急降下し、上昇が始まった所で魔鎧兵を投下してもらうだけだ。

 もし、急降下そのままの速度で投下されると流石に死んでしまうだろう。


『本陣から指示が来た。降下開始する』

『よし、やれ!』


 気持ちの悪い浮遊感が身体を襲う。

 飛竜達が一直線に真下に向かって降下しているのだ。

 自由落下よりも加速が付いている分早いが、まだ雲の中だ。視界が真っ白に染まる。

 と、唐突に歪な円形をした都市が見える。黒煙がもうもうと上がり、本陣が展開しているところから中央にかけての部分は既に火の海だ。

 中では慌てて動いている魔物たちの姿が段々はっきりと見えてくる。


 ゆっくりと近づいてくるその景色は、ある点を堺に急激に目前に迫ってくるように感じられ、同時に恐怖感が襲ってくる。


『ぐおぉぉぉ……!』


 他の者達も悲鳴を上げている。

 正直自分も叫びを上げてしまいたい位だ。

 地面が目前に迫りもうだめだと思った瞬間、今度は浮遊感とは逆に真下に引っ張られるかのような感覚を感じて、また浮遊感が襲う。

 飛竜が魔鎧兵を投下したのだ。


 いい具合に砦に取り付ける位置に落としてくれたらしく、砦の見張り台を掠めて屋根に着地する。

 凄まじい衝撃を感じるが魔鎧兵の足は物ともせずに屋根を破壊しながら内部へと突入した。


「なんだ!何事だ!!」


 パニックに陥る城内の兵士達を見て、着地の衝撃で一瞬意識が飛びかけるのを堪えた。


『全員無事か!?』

『なんとか!』

『うわぁぁぁぁ!!ぐ、……ふう。こちらルーサー、問題ありません』

『問題ない。皆何処に降りた?』

『こ、怖かったです!!』


 カリスタの声が震えていたが無事だったようだ。

 全員の無事を確認し、ディノス、ルーサーは砦の内部へ、そしてバートランド、カリスタは中庭に着地したらしい。ウォルトは正面玄関のど真ん前だ。


『全機、砦もろとも破壊しろ!』


 号令をかけると共に大砲を構えるとトリガーを引き発射する。

 部屋の中という密閉された空間で大砲を放つとどうなるか……。発射された弾が壁をぶち破って貫通していくのは当然として、圧縮された空気が砲身から放たれ、それが突然閉鎖空間に解き放たれるのだ。

 つまり、閉所で爆発が起きたときと同じことが起きる。


 即死に至らずとも鼓膜は破壊され平衡感覚を失い、聴力も無くなる。

 生まれた衝撃波によって壁に叩きつけられ、衝撃を受けて脆くなった石壁は崩れ始めた。

 外からも壁に向かって撃ち込まれ、窓を突き破って榴弾が炸裂する。

 あっという間にボロボロになっていく砦はパニック状態だ。


 ディノス達は一度外へと出て次々に榴弾を撃ち込む。

 大体火の手が回った所でもう一度突入し、メイスで壁を破壊しながら目当ての人物を探し当てた。


『ここの頭目だな?』

「貴様ら……一体何なんだ……!」

『報復に来た。さて、来てもらうぞ』

「やめろ!来るな!!」


 伸ばした手に斬りかかるが鎧に阻まれて攻撃は通らない。

 そのまま鷲掴みにして外へ出る。


『制圧完了しました』

『魔物や生き残りの兵達はお任せください』

『こちらも捕まえた。カリスタ、ウォルト、門を開けてこい』

『了解!』

『わかりました!』


 内部は想像以上に酷かった。

 建物ともかく、周囲は未だに燃えている魔物の死体があちこちに転がっているし、人の死体も大量にある。

 目につく限りは鎧をつけているのでエフェオデル兵で間違いないだろう。

 軽装なのは奴隷だったものだろうか。


 砦を挟んで反対側は逆に綺麗に街が残っている。

 こちら側を接収して焼けている方は更地にすれば良いだろう。

 反撃は弱々しく、魔法も大砲もまばらだ。

 剣で突っ込んでくる者は足を動かすだけで即死する。


 それでも戦意を失わずにこちらへと対抗するべく集まってくるエフェオデル兵も、混乱した魔物に後ろから襲われたりと落ち着かないようだ。

 そんな状況のところに俺は右腕を掲げる。


『全員よく聞け。既に砦は落ちた。この手の中にいるのが誰かが分からないわけではあるまい!』


 全ての音が止み、静寂がその場に訪れた。

多大な怪我人を出しつつも、目標としていた小都市を制圧。

相手の作戦をいい感じに潰したおかげで被害を出さずに終了しました。


援軍到着まであと少し。

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