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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第五章 英雄ディノス編

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第百四十一話 英雄として7

少し時間がかかってしまいました、投稿遅れてすみません!

「なんだ!?何がどうなっている!」

「分かりません!突然皆うなされ始めて……!」


 目の前でうなされている男は苦悶の表情を浮かべ始め、悲鳴を上げると突然身体にかかっていたSheetに血が滲み出した。

 すぐさま剥ぎ取ってみると、脇腹のところにナイフなどで刺されたような傷が出来ており、そこから出血している。


「すぐに治癒術士を呼べ!おい!起きろ!!」

「止めてくれ、止めてくれ殺さないで!ぎゃぁぁぁ!!」


 今度は腕が変な方向に曲る。何もしていないのに目の前で傷が増え、骨が折れていく。


「どういう事だ!?糞!魔法隊に連絡!攻撃かもしれん!」


 近くに居て何をすれば良いのか分からなくなっているやつに命令すると、すぐさま走っていった。

 入れ替わるように到着した治癒師が傷を癒やしていく。


「何が起きているのですかディノス様!先程から兵達が突然苦しみ始めて傷を負っています!我々だけでは手が足りません!」

「分からん、だが何らかの魔法による攻撃だと思っている。自傷でない以上、そう考えたほうがしっくり来る」

「な、なるほど、ああっ!また傷が……!不味い首まで!ディノス様、首の傷を抑えてください!死んでしまいます!」

「なっ……糞……!早く治せ!」


 兵の首から溢れ出る血を止めて圧迫する。

 その間に治癒師が詠唱をして治癒させているが、これではキリがない。


 しかしそれも唐突に終わった。

 陣地の外側の方で爆発が起き、それを境にうなされていたものたちが目を覚ます。


 これによって数名の死者が出た。

 寝ている間にこんな殺され方をするとは思っても居なかった。

 死んでいなくとも身動きができないくらいに怪我をした者も数多くおり、治癒師などが必死で治療にあたっている。


 とりあえず助かった眼の前の男に色々聞いてみると……。

 夢の中で同じ様に攻撃を受けて、嬲り殺されるところだったという。

 そう言ってシャツをめくりあげると、先程までは見えなかったが痣になり始めている所もあった。

 殴られたり蹴られたりしていたところらしい。


「夢が現実になるだと……なんだ、その魔法は……」

「ディノス様!しかし夢の中でも何故か傷が再生したりしていました!夢が現実にもなりますが、現実も夢に影響するようです。確かに言われた箇所は槍で突かれた場所ですが、しばらくしたら勝手に傷が治っていたんです。首も、ナイフで切られたのですが、すぐに傷口に何かを押し付けて治療されている感覚がありました」

「なるほど。それは良いことを聞いた」


 恐ろしい攻撃だが……これを回避する手段はなんだろうか。

 先程自分も夢を見ていたが、何故か無事だ。

 彼らとの違いは……魔鎧兵に乗っていたことか。

 魔鎧兵へのダメージはそのまま痛みは感じるものの、実際の肉体へのダメージではない。


 考えてみればあの夢の中で全く傷を負っていないのだ。


 ……ではどうやって夢から覚めたか。

 これも途中で起きることが出来た者達の話から大体予想がついた。

 彼らは皆その夢の内容を受け入れなかった。最後まであがき続け、否定した。

 これは現実ではないと直感的に感じた瞬間に夢から覚めたというものもいる。


 俺も……否定していた。

 ということはこの夢を見ても無傷で切り抜けられる可能性もあるということだ。


 しかし……夢は対処できても精神的なものは酷い。

 今回の攻撃によって夢を見て死にかけ、起きてもそれが現実だと分かった皆は相当怯えていた。

 実際に死者も出ていることからかなりの動揺が広がっている。


 原因となる相手は分からないが、干渉するときの魔力は捉えられるという事だったのでそれを信じて次は先手を打てれば良いのだが。

 夢は寝ていたほぼ全員が見ており、仮定として居た自分の説は大体あっているだろうということも確信できた。

 魔鎧兵に乗っている者はやはり似たような夢となり、最後に胸部へとダメージを受けて骨折をした一人以外は無傷で起きることができていたのだ。


 そして治療をしてもらっていた者は、攻撃を受けても傷が塞がったりするのを実際に夢の中で体験している。


 これを受けてまた話し合いを行い、最終的に半々で交代で眠ること。寝ているペアの一人がうなされ始めたら起こし、それでも駄目ならば腕に「起きろ、これは夢だ。現実ではない」という文言をナイフで刻め。

 怪我をし始めた場合には治癒術士が来るまで応急処置として傷を塞いで出血を止める努力をすること。

 治癒術士でなくとも、ある程度治癒が使えるものはすぐに対処することなど。

 これらが通達され、ある程度気が楽になったようで落ち着きを取り戻してきた兵たちは、自分がどういうものを見ていたかなどを周りのものと話をしている。


 次に見た時には返り討ちにしてやると意気込むものも出るなど、意外とタフなやつも多い。

 魔術師に対しては今回の敵の魔力を感知する方法を広めてもらい、自分が起きている時にはそれらしい動きを感じた時点で通達するように言っておいた。


 流石に寝なおしている間には悪夢は見ることはなかった。


 □□□□□□


 翌朝、いつもよりも疲れたような顔の皆が朝食を食べている。

 嫌でもきっちり食べておかないと体力が続かない為、胃が受け付けなくとも無理やり流し込んでいた。

 やはり精神面に相当ダメージが有る攻撃だ。

 寝ている間も安全ではないというのは分かっていても、奇襲などならば起きて準備するくらいは出来る。


 しかしこの夢は防ぎようがないのだ。

 正直厄介な相手だと言える。


 夢と違って無傷の魔鎧兵へ向かう。

 どんなにそれらしくとも、あんな死に方は違う。運が味方してくれる。

 きっと。


『昨日の夢は忘れろ。あれは作り物の夢だ。如何に現実でも傷があろうとも夢で起きていることは現実ではない。そう簡単に我々は倒れない、エフェオデルにこそ相応しい内容だ!奴らが夢想する悪夢を現実のものとしてやるぞ!その時襲っているのは我々帝国だ!』

『オオ!!』


 大丈夫、魔鎧兵隊の士気は高い。

 周りで声が届いていたところでも少しずつ暗い顔が怒りへと変わっていく。

 そのままエフェオデルに怒りを抱き続けると良い。そうすればとりあえずは自分を保つことが出来る。


 ちょいちょい魔物の襲撃はあったもののスワームなどのよく見る魔物だったので恐らく操られたものではないだろう。

 その程度であれば兵器類を使うまでもなく剣と槍で処理できる。

 問題なく昼の休憩場所へとたどり着き、簡易陣地を築きながら2時間ほどの長めの休憩を取った。


 その間に補給の飛竜が帝国側へと向かい、無事に補給物資を持ってくる。


「……大成功だな」

「ええ。これならば弾薬の補充は使い切るようなことがない限りは問題無いでしょう」

「これは新しい補給方法として確立させるべきだろうな」

「部隊を迅速に展開し、補給も短時間で行えると言うのは敵にとっては脅威となります。魔導車も改良して大人数を載せて走れるものを作れば、歩兵たちの移動速度も上がってこれまでにない速さで敵地へと進行できると考えています」

「これが終わったら考えるとしよう。まずはエフェオデルをなんとかせねばな」


 少し減っていた大砲の弾も増え、次の戦いでの強敵に備えることが出来た。

 何が出てきてもおかしくないのだ。

 切り札となりえる強敵を持ってこられた時に大砲があるのと無いのとでは全く違う。


 この休憩の間に睡眠をとるものも居て、特に問題なく眠れたようだ。

 正体は今のところ不明で倒したかどうかも分からなかったが、近くには居ないということか。


 しかしこの平和な時間は続かなかった。

 大体分かってはいたものの、流石にこれが出てくるとは思わなかった。


『タラスクだ!魔鎧兵隊は攻撃用意!』


 幸いにもタラスクは一匹だけ。他の魔物達はそこまで強くはないようだ。

 飛竜達が雑魚を一掃し、中型の魔物には歩兵達が群がりあっという間に倒していく。

 タラスクはといえば飛竜のブレスを耐えきり、怒り狂った咆哮を上げる。


『来るぞ!』


 タラスクの脚力は異常だ。だいぶ遠くに居たと思っていたのだが、こちらが近づく間もなく向こうから迫ってきた。

 まずは大砲を一撃……食らわせるが多少よろけただけだ。目に見えるダメージはない。

 まさに化物と言える。

 大砲が効かないなどふざけている。飛竜ですらダメージを与えられるはずの大砲が、いとも簡単に体表で弾かれるのだ。でたらめな固さだ。


『ディノス様!!』

『くっ……!!』


 少し目を外した瞬間に目の前まで迫っていた。

 警告がなければそのまま吹き飛ばされていたかもしれない。

 凄まじい力でとっさにメイスでガードした魔鎧兵の身体が浮き上がる。

 まともに胸部に食らっていたら死んでいたかもしれない。


『囲め!1機で当たるな!』


 しかし暴れるタラスクを押さえ込むのは至難の業だ。

 長い腕と尻尾の攻撃力は下手に喰らえば魔鎧兵が破壊される可能性すらあり、攻撃しても硬い皮膚と甲羅の部分は大抵の攻撃が通らない。


『ああっ!?』

『ヘイデン!!大丈夫か!』

『問題ありません!』


 隙を見て後ろからメイスで殴りかかった副隊長のヘイデンが尻尾の一撃によって20m程も飛ばされた。

 魔鎧兵の巨体をそこまで軽々と吹き飛ばすその力にも驚かされるが、どちらかと言うと中にいるヘイデン本人が気になる。


『生きているなら下がれ!今すぐ下がって魔鎧兵から降りろ!』

『な、なぜです!まだ戦えますディノス様!!』


 言い方が少々まずかったか。

 下ろされると思ったのかヘイデンが食い下がる。

 とは言えタラスクの猛攻を耐えながら指示をだすのはきつい。

 あれ程に吹き飛ばされたのだから、中にいるヘイデン本人にもダメージが有るはずなのだ。

 即席で作ったこの魔鎧兵に衝撃を吸収し切るだけの装備は付いていない。


『怪我をしていないか見てもらってからまた戻ってこい!』

『くっ……分かりました……!』


 まだ戦いたかったようだが、こちらの意図を理解したのか引き下がる。

 ここで魔鎧兵の戦力を失うわけには行かないのだ。

 そして、この場でタラスクの攻略法を見つけておきたい。


『キリがない!』

『なんて速さだっ!』

『こ、んのぉぉぉ!!』


 タラスクの右腕に誰かがしがみついた。

 あれは……チャドか。格闘が得意なチャドはただしがみついただけでなく関節を壊そうとしている。

 さらに魔鎧兵の重さによって片腕をまともに動かせなくなったタラスクを見て、すぐさま同じく格闘が得意なカリスタが反対側を取る。


『いいぞ二人共!そのまま抑えていてくれ!』


 身動きが取りにくくなっている所をメイスを振り下ろして頭に打ち付ける。

 頭頂部に直撃して火花が散った。

 見ればメイスのスパイクが幾つか破損している。なんという固さなのか……。

 しかし衝撃はしっかり伝わったようだ。

 少しふらつきながら咆哮している。


 そこに装填済みの大砲に持ち替えて、暴れるタラスクの口の中へと差し込んだ。


『喰らえ!』


 トリガーを引くと腹に響く発射音と衝撃が伝わる。

 いくら外側が固くとも中は柔らかいはず……そう思っての一か八かの行動だったが……どうやら正解だったらしい。


 喉の奥まで差し込まれた大砲を直接体内へと発射され、行き場を失った爆発は全てタラスクの体内へと体積を膨張させながら充満する。

 これによって内臓が破壊され、爆発の圧力によって一瞬で肺や心臓が止まったことだろう。

 同時に発射された弾は身体の中心部を恐ろしい勢いで突き進み、柔らかい腹の中身をずたずたに切り裂いていた。


 最終的に一直線に肛門辺りから大砲から発射された鉄球は出ていき……。

 大量の血液を体内から流しながらタラスクは絶命した。


 魔晶石などの回収をしている間、魔鎧兵から降りて対策を魔鎧兵隊でタラスクの倒し方を確認していく。


「やはりあの強さと固さは脅威ですね」

「ああ、だが足止めは可能だ。チャド、カリスタ、よくやった。腕を抑えれば如何にタラスクと言えど対処は可能であることが分かった」

「チャドがしがみついたのを見て体重をかけて居ましたが……場所によってはタラスクの頭が届きます。あまりいい手ではないかもしれません」

「しかし、そうして動きを止めねばあれの口の中には大砲を打ち込めないぞ?」


 ある意味で偶然ではあったが、お陰で口に大砲を咥えさせることに成功した。

 恐らく狙って口の中に撃ち込むことは不可能だ。

 頭に当たって弾かれるのが関の山だろう。


「……タラスクには3機1組となって当たることにする。一度に2体までしか相手にできないが安全を考えればそれが良いだろう。残った2機は他の標的やそれぞれの補助をするといいだろう」

「では私は補助でやらせて欲しい。接近戦は少々苦手だ」

「あたしも。少し離れて大砲で牽制してあげる」

「決まりだな。バートランドは私のチームを。ローズはヘイデンのチームを補助しろ」


 組分け自体はカリスタとチャドをそれぞれ振り分けて機体番号の若い方がディノス、その他がヘイデンとなる。

 必ずというわけではないのでその時の状況次第で変わるだろうが。


 対処の仕方はわかったものの、即座に倒すことが出来なければ多数出てきた場合に対処しきれずに後続に被害が出るだろう。

 更に凶悪なものが待っている可能性だってまだある。

 油断はしていないつもりだが、もっと最悪のことも考えておいたほうが良いかもしれない。


 話し合いを終えて戻ると魔石の回収も終わっていた。

 あと少しでエフェオデルの集落が有るはずだが……エフェオデルではたまにその集落の場所が変わるし、お互いの襲撃によって破壊されるなど、ころころとその地図が変わってしまうためさっぱり分からないのだ。


 しかも確認したのは数十年前に飛竜で上空から簡単に確認した時のみ。

 最近では特に動きもなかったので放置されていたくらいだ、役に立たないと思っていいだろう。

 ただ、此処から先は完全にエフェオデルの人が住む集落などが増えてくる。

 好戦的な彼らのことだ、例えこちらの動きを知らなくとも出逢えば交戦が始まるだろう。


 斥候で前に出ていた飛竜からの報告により、中規模程度の村を発見したものの人の気配はないという情報があった。

 恐らく以前の地図にあった所だろう、今は誰も居なくなったということか……?


 □□□□□□


「全ての家をくまなく調べろ!」

「周辺の安全を確保し、土塁を築け!もたもたするな急げ!」


 たどり着いたところは木製の家が建てられた中規模の村と言った程度の集落だ。

 エフェオデルでは血縁関係で固まる事が多い事から、ここは大きめの所だったのだろう。

 ホーマ帝国に来てからエフェオデルとの確執に関して調べたことを思い出す。


 誰も居なくなっているということは他の集落の人間、もしくは魔物などによって襲撃を受けて壊滅する場合と、住処を移した場合とが有る。

 家などは破壊のあとはなく、綺麗に中の食器など生活に必要なものなどはなくなっているため恐らく後者だ。

 放置されて大分立つのか、水分が失われてからからになり反り返った壁や屋根の板がなんとも寂れた空気を感じさせる。


 全員とまでは行かずとも、屋根のある所でゆっくりと体を伸ばして休めるのは精神的にも相当良い。

 荷物をおろして今日はここで休むことになる。


「この家、かなりしっかりとした建付けですね。田舎の家とは思えないほどだ……」

「どれくらい放置されていたか分かりませんが、埃と所々に空いた穴などを除けばこのまま住めそうですよ!ちょっとした手入れだけで完全に住める位です」

「集落にはこういう少し周りよりも大きく立派な建物と、一回り小さいもの、更に小さいもの……と有るようだな。家がそのまま身分を表していたのだろう」

「では将軍が行ったあれは一番大きいからここの領主ということですかね」


 木製ということもあって、あまり期待していなかったが意外と中は快適だ。

 埃っぽいので皆で中の空気を一気に外へと飛ばしたらかなり綺麗になった。襲撃があったとしても少しの間は盾になるだろう。

 何よりも頼りない布よりも、多少は硬い木のほうが安心感が有る。


「……よく眠れそうと思ったけど、またあれが来たらと思うとちょっと怖いですね」

「魔法隊が見張っている。それに対処法も有るだろう?安心して寝ろ」


 死に至る悪夢。これによってトラウマになっている者は多いが、人は眠らなければ動けない。

 眠りたくなくても、行軍と戦闘による疲弊は眠気を誘うのだ。


 食事を取り明日のことを話し合う。

 明日、ついにエフェオデルの首都へと到達する。

 エフェオデルの中心部にあるそれは、数十年前の調査では簡易な石積みの防壁で所々を囲っただけではあるが……厄介なのは首都を中心として小さな都市が設けられており、それら全てが防衛と攻撃に適した場所に作られている。


 つまり、侵攻するこちらとしてはその間を突こうとしても、エフェオデルの想定する道に沿って移動する事になり挟撃を受けやすくなる。

 さらに道はわざと狭められているので当然ながら隊列は間延びする。

 この状況で左右から囲まれたらこちらに勝ち目は無くなる。


 見通しが悪く狭い道と、見晴らしがよく広い道だが都市へと向かう道。

 どちらを取ってもあまりいい状況とは言えないだろう。


 結局、ここから一番近い都市を攻めて落とすことが決定した。

 援軍が来るのは1日とかからない。立て籠もったら周りを取り囲まれることは必至だ。

 此処から先は休むことは出来ないのだ。


 できれば他の都市の機能も奪っておきたいが、どれくらいの戦力があるのかもわからない。

 今、夜の偵察隊が付近の状況を広範囲で調べてくることになっているのでその情報次第で色々変わることだろう。

 向こうが情報を持っているのだから、こちらの動きは既に知られている前提だが、まだ知られていない事もある。

 上手く行けば付近の都市を無力化しつつ首都へと一気に進んでいける可能性もある。


 □□□□□□


「長、予定通り帝国は例の集落へと駐留したのを確認しました」

「放棄された場所だったが、なかなかにいいところが都合のいい場所にあったものだ。今夜仕掛けよ」


 長からの命を受けた将軍、ヴィゴはテイマーを含め各地の副将たちへと通達する。

 明日には直接の戦闘が始まる。

 既にこちらへ来ていることは知っているのだ、準備はもう整っている。

 恐らく敵はこのまま一番近い砦を落とそうとするだろう、まずはそれを食い止める。

 兵はすぐに駆けつけられる所で待機中、テイマーにより全部で500の魔物もいる。


 ある程度の戦力を有する魔物を使っているのであまり数を出せなかったが、混乱させるには十分だろう。

 オークやオーガを含め、一人で対峙するには荷が重い魔物ばかりだ。

 数で押すことが出来ない分、個々の力を必要とする。


 そしてついにエフェオデルの飛竜が投入された。

 炎竜。火竜の上位の個体だ。数は1頭だけだが火竜を相手にするには問題のない強力な個体。

 テイマーであっても操るには一度に1頭のみの制限がかかるほどの相手を帝国に向けて放つ。上位の飛竜が出てくるとは思っていないだろう、パニックになって炎に包まれる帝国の兵が思い浮かぶ。


 ヴィゴは簡素だが頑丈な作りの小屋へと向かう。

 見張りの兵が槍を掲げて敬礼しドアを開けると、中は暗く中央で焚き火がゆらゆらと周りを照らしていた。

 奥には一人の女性が裸に近い衣装で足を組んでじっと目をつぶっている。


「……時間だ。炎竜を放て」


 ヴィゴのその言葉を聞いてテイマーは頷きを返すと、また目をつぶって集中する。

 遠くで恐ろしい咆哮が上がったのはその直後だった。



猿夢ってあったよね……。怖い話のやつでそれを読んでしまって、しばらく本気で寝るのが怖かった時期がありましたw

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